6話:何事にも全力で
1日が終わろうとする。
「そういえば、もう一人の攻略キャラには出会えなかったなぁ……」
あんな風に男に攻められるのは論外だが、全キャラに会ってみたかったというのが本音。
どちらにしろ、それも終わりだ。
今日の出来事は全て夢落ち。
………絶対そうだよね!?
「じゃなかったら製作者訴えるからなっ!!」
この世界もこれで終わるのだろうか?
もし違うならば、これは夢ではない。目の前に見えているもの全てが現実であるという事だ。
そうとなれば、元に戻る方法を探さなければならない。
だが、どうやって________??
そんな事を考えているうちに俺は眠くなり意識を手放した。
気がつくと俺は見たことのない場所に立っていた。
周りには何もなく、とても寂しい感じがする。ただ暖かい光がどこまでも永遠に差し込んでいる。
なんだか天国感のある場所…………
まさか、俺…………死んだ!?
「やあやあ!海くん!いや今は“花音”さんかな??」
後ろから声がする。
俺はとっさに振り返り叫んだ。
「俺、死んだんですかーーーーーっ!?」
「第一声がそれかよ…って安心して。
生きてるから、強いていうなら寝てるだけ」
「じゃあそれはコスプレですか??」
目の前いるのは天使っぽい格好をした男の人。
あ、よく見たら天使の輪と頭の間に棒が見えるわ。
アニメのコスプレとかならその歳でもいるだろう。だが、わざわざ天使のコスプレする人とか……っ!!
その謎の男の格好に俺は思わず吹いてしまった。
「おい。笑ってんじゃねーぞ、青二才
お前にも着せんぞ?
いや、ナースとかの方が似合いそうだな……露出度高いやつ」
「ただの天使のふりしたコスプレエロジジィじゃねーか。」
ていうかこの人一体なんなんだ?
俺なんか拉致られてる?“花音”が可愛いから??
「やめてくれーーー!!
犯さないで!!俺は綺麗なままで居たいんだっ!!」
「俺をなんだと思ってる!?
見た目は女でも男を抱く趣味はねぇぞ。
それよりもだ。昨日はどうだった??楽しかった、花音ちゃん??」
「……は?」
コイツ……全てを知っているのか??
見た目は花音で、中身が俺、つまり柴田海であることを………
まさか……っ!!
はっという俺の顔をみるとその男はバツが悪そうな顔をした。
「……お前をこんな風にしたのは俺じゃねぇよ……。こんなふざけた真似するかよ……。
やったのは……」
そう彼が言いかけた時だった。
突如、周りがどんどん暗くなっていく、俺たちを囲んで。
背筋がゾッとするとともに俺は恐怖を感じた。
「……ちっ、来ちまったか……。
すまねぇ、まだ俺に言えることはねぇ。だが、時が経てば本物の“花音”もやってくる。
………本人としてではない上、“花音”の記憶はないがな」
…………記憶がないのか??
「それじゃ分かるわけねーだろっ!!」
「まあまあ!
それでもお前なら気付くはずだ、野生の勘ってやつでな。」
野生の勘………??
なんか俺、カッケーな………
ワイルドな感じ??
「多分だけど」
多分かよっ!!
だがそんな突っ込みは心に留まらせた。
「こっちも色々大変なんだ。
俺、石川輝だ。それじゃあ、また後で♪」
そういうと男はパチンと自身の両手を叩く。
それと同時に俺は体の力が抜け、意識が段々と遠くなっていく。
俺はまだ聞けてねぇことがあるんだ…っ!
お前まさか……っ!!!
はっと目が覚める。
ピンクの布団に多数の可愛らしいぬいぐるみ。
鏡を覗けば、そこには“花音”が映る。
「やっぱこれが俺にとっての現実世界なのか…」
さっきまで見ていたのも夢ではないのだろう。
確実に協力者である“本人”がやって来る。
だからこそ、夢ではないと分かった今、やるべき事は1つ。
人生は一度きり。
たとえこの世界が夢だったとしても、この1分1秒が大切な俺の時間だ。
二度と戻ることはない時間。
だったら、この先、経験出来ない“2次元”を満喫して“彼女”を待とうじゃないかっ!!
「がんばってやるぞぉぉ!!!」
俺は雲ひとつない空に向かって叫んだ___
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