5話:カレーはマニュアル通りに作りましょう
放課後になる。
それと同時に
「橘さん!俺が家まで案内しようか!?」
という男共のお誘いの嵐。
来た道ぐらい覚えとるわっ!
ていうかさ、
………俺、女の子に誘われたい。
だが、 男子から多数の誘いを受ける同性なんて敵なのだろう。
クラス中の女子からは白い目で見られ、誘ってくれた人数0。
結局一人で帰る俺。
もちろん女子から今まで誘われた事がないので、大ダメージを受ける事はなかった。
だが!
こう、女の子同士で放課後ファミレスとかカフェに行って?キャピキャピ(死語)したかった………っ!!
そんなことを考え、普通徒歩10分で着くはずの家路を1時間かけ家に帰る。
別に足が遅い訳ではない。
ただナンパされまくっただけだ。
一人ひとり退治するのに時間がかかっただけ。
たまに変な所に連れて行こうとする奴もいるし、お前ら何なんだよ!
……そのせいで道に迷ったし、10回も!!
「ただいま~」
ようやく家に着くが、家の中はシーンとしている。
誰も居ないのだろうか?
別に今まで学校から帰って出迎えられた事はなかったから気にはならない。
(両親働いていた訳でもない。寂しいな俺)
だが、妹ちゃんは……?
リビングに行ってみると、絶賛お休み中。
「天使だなぁ…」
スヤスヤと眠る妹ちゃんこと、あみちゃんは小さくなってソファーに寝ている。
そっと毛布をかけ、何か夕食を作らないとと思い、自室に荷物を置きに行った。
「何なんだ…あの学校は。
2次元の学校とはあんなにも疲れるものなのだろうか……」
自室に入ると大きなため息とともに呟いた。
2次元キャラも大変ですねぇ…、リア充満喫で問題なんてないと思ってた。
さて!俺はこれから夕食を作らなければならない。
問題点は1つ。
花音は料理が大の苦手。俺自身は今まで料理なんて作った事がない。
問題点は2つか。
だが、意外な所に才能があるっていうし、俺実は料理の才能あるかも!!
そうと考えれば、何か作らねば……!
急いでリビングに戻ると、台所に向かう。
「まー、妥当な所でカレーにするか」
テレッ テッテッテッテ♪
テレレッ テッテッテッテ♪
テレッテッテテ テテテテ テッテッテ♪
かの有名な料理番組の曲が脳内で再生される。
「まずは水を沸かして……人参、じゃがいも、玉ねぎ入れるか…」
と、冷蔵庫を開けてみる。
なにこれ?蜂のハチミツ漬け??
………そっとしておこう
あれ、じゃがいもない。だがポテチはある。
……じゃあ、もうポテチとかでいっか。
ポテチも元は芋だ!!
ざっくり切って野菜をいれ、ポテチをそのまま投入。
……我ながら、シェフっぽいかも!!
「えーっと肉は……あった。牛肉!!それにルーを入れないとな。
それから、とろみの代わりに片栗粉~。
あ、隠し味入れないと」
牛肉をひとパック。それに加え、カレールーを1箱入れてみる。
片栗粉も入れながら混ぜる。
隠し味……
牛乳とか入れるとまろやかになるかなぁ……
あ、でも俺牛乳好きじゃねぇわ。
「ちょーどいいところにイチゴ牛乳とコーヒー牛乳!!」
どっちを入れるべきだ……
牛乳といえば甘くない。
イチゴ牛乳を入れるのは不向きかもしれない。だが、コーヒー牛乳はどうだろう?
……コーヒーといえば苦味がある。両方とも入れたらちょうどいいかもしれない。
とりあえず両方入れることにした。
「カレーと言えば、りんごとハチミツだ!!」
りんごを見つける事は出来たがハチミツはない。
いや、さっき蜂のハチミツ漬け?みたぞ??
てか蜂って美味しいの??
そんな疑問が生まれる。
見た目がアレだが、蜂のことだ。ハチミツのように甘いのかもしれない。
なので!
「よし!俺挑戦するよっ!!」
りんごとハチミツの代わりの蜂を投入。
「あとは一煮立ちすればOK~、俺天才じゃん!」
そんな時だった。
「ふわぁ~……。あれ…?おねぇちゃんおかえりぃ~」
まだ眠そうな妹ちゃん。
とても可愛い。
「あみちゃんただいま!
今夕飯作ってたんだ~」
その言葉を聞いた瞬間、妹ちゃんは顔を硬ばらせる。
「嘘でしょ…??
………なにつくったの?なんか変な匂いする…」
そう言いながら鼻をおさえる妹ちゃん。
言われてみれば…カレーとは言い難い匂いがする。
てっきり2次元のカレーは3次元とは違うのかと……
一度火を消し、蓋を開けてみる。
十分加熱した。食べても問題ないはずだ。
蓋を開けてみる。
カレーとは思えない、変な匂い。しかも色もなんか普通じゃない。しかも蜂がゴロゴロと入ってるカレー……
少しばかりスプーンでとり、唾を飲み込む。
緊張感が漂う中、俺は“カレーだった何か”を口にする。
「な、何だこれっ!!」
思わず、口から出してしまった。
そう、その“カレーだった何か”を口の入れた瞬間、吐き気を催した。
表現し難いほどのマズさ。
しかもブニブニしたの……片栗粉かっ!
その上、口の中に蜂の羽根がくっつく…
オエェェ……
「こ、これでも頑張ったんだよ……っ」
そう言い残し、俺はその場に倒れた___
「おねぇちゃーーーん!!!」
『もう一生料理をしない。』
俺が心に決めた瞬間だった。
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実際にこんなカレー作ったら絶対吐きますよね。
小学校の合宿でもこんなカレーにはならなかった(材料用意されてるから)