4話:ハゲは皆を狂わせる
双子コンビこと、翔と翼。
個人的第一印象、『ウザい』
「マジで記憶喪失なんだー」
「花音って神経図太そうなのにねー」
ああ。現実だと更にウザい気が……
そして問題がもう一つ。
今まであまり人と関わってこなかった自分にとってこの2人はラスボスに近い存在。
そう思えるくらい、こいつらのコミュ力が高い…っ!(1人だったら何とかなっただろう…)
「そんな~花音ちゃんに~!」
「楽しくなるプッレゼント~!!」
2人は俺にプレゼントを渡してきた。
ウザくなかったですね、すいませんっ!!
双子からプレゼントを受け取ると、綺麗な小包を開く。
そっと開けると何だか嫌な気配を感じ、すぐさまその何かを投げ飛ばした。
「ちょっと?翔く~ん?翼く~ん??これなに?」
その隙間から見えたものは確実に動いてた…!つい先日みた気がするぞ??
れ、冷静になるんだ、俺!!
「なにってねぇー」
「楽しくなるプレゼントだよ?」
「まあ、俺たちが、だけど」
普通の女子(男子も)これもらって投げ飛ばさない奴はそうそういないだろう。
まさかこれ買ってきたの?
そこら辺にもいるけどこいつら売ってるんだよな………
「女の子になんて物渡すのっ!酷いっ!」
あまりの酷さに俺はその場に泣き崩れた。
………もちろん演技だがなっ!!
考えてみれば、今の俺は中身はともかく、見た目は美少女なのだ。
普通そんな可愛い子が泣いたらさすがのあいつらでも……
「そういう顔っていーよな」
「今日も作戦成功だね、翔!」
え~?こいつら効かないの?
このウルトラスーパー美少女の泣き顔をみて、良心は痛まないの!?
「……現実の俺よりサラサラヘアーなんかしやがって………
ハゲちまえ!!すだれにでもなってろっ!!」
そんなことを言った時にはすでに遅し。
目の前にいたのは2人のサラサラヘアーをした双子ではなかった。
そう。
目の前にいたのは後退しかけ、ヅラという噂を持つ(実際にヅラ)、桂先生。通称、ヅラ先生。
…………ちなみに超怖い。
先生と目が合う。
ニコッとすると返してきてくれたが目は笑っていない。
というか恐怖しか見えない。
「橘、お前……」
「すいませんでしたぁぁぁ!!!」
先生の言いかけた言葉は聞かず、そう叫び俺はすぐさま逃げ出した。
このままいれば、“花音”のサラサラの黒髪をむしり取られ、確実に殺られる。
確かに謝罪で頭を丸める芸能人(女)がいたり、病気で仕方なくというのはある。
病気の子には俺の髪の毛でいいならあげたいぐらいだ。
でも、事情もなしにむしられて坊主なんていうのは女の子が可哀想だっ!
これでも俺は“花音”の身体を預かっている身である。
だからこそ、守らなければいけない…っ!!
……そんな俺は今までで一番早く動いた気がした
「橘ぁ!廊下を走るなぁぁぁぁ!!」
鬼婆のごとく追ってくる、ヅラ先生。
すいません!俺、女の子の身体を預かってる身なんです!なんて事は口が裂けても言えない(信じてもらえないし)
チラッと後ろを振り返る。
時々頭の上でキラリと光るものが見えますが!!
あれは絶対金具ですね、髪の毛を止めるための。
「先生ぇぇぇ!!私これでも歩いてますよぉぉぉ!!!」
走っているのではない。
高速で早歩きをしているのだ!!
「橘!お前も将来ハゲるからな!!ここにいる奴ら、あと60年も経てば立派なハゲ仲間だ!!」
「ハゲ子フレンズなんていらん!!」
そんなことを言いながら後ろ向きで早歩きをしていたため、お決まりの展開。
ボスっという鈍い音とともに誰かにぶつかり転がる。
「す、すいません!
………って、え??」
「君はハゲをいじるのが得意なフレンズなんだね」
国民的アニメに登場する、波◯のようなカツラを被ったあの先輩が俺の下にいた。
「早乙女先輩ー!!」
早乙女先輩がクッションになったため、全く痛くはなかった。
どうやら屍にはなっていなかったらしい。
ていうか今セリフパクった??
「俺らもお揃いだぜ~」
「翔とだけお揃いが良かったんだけどな…」
双子までもが同じカツラをかぶってやってくる。
「もうこの学校どうなってんだ!!」
そんな俺の叫び声はその場にいた全員を黙らせたのだった______