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1、ステータス鑑定をした結果

「うぅ……あんまりだぁ……」

ガンッ! ガンッ!

「なんでこんなにレベルが低いんだよォ……」

ガンッ! ガンッ!

「はぁ……なんでこんなところにいるんだろ」


 レインは現在、草原から少し離れた森の奥地でうずくまっていた。もしかしたらワイバーンが弱いだけなのかもしれない、そう現実逃避にも近い考えていたレインだが、その考えも打ち砕かれた、何故なら―――


「それで、いつになったらダメージ入るんだろうな」

「グガアアアアア!」

ガンッ! ガンッ!


 レインをかれこれ一時間、牙で攻撃し続けている蒼い毛皮を身に纏った狼がいるからだ。結果は全く痛くも痒くもない、という状況だ。


「あ、SRキャラ来た」


 逆に暇過ぎて、レインはマジックフォン、略してマジホのアプリゲームをしていた。マジホは魔力を注入すればいつでもどこでも使えるという優れもの、地図から電話、他にも様々な機能が搭載されている。


 異世界だろうと、魔力があれば使えるのだ。電話は使えないが地図は随時更新されており近くにいる生物も分かるのだ。


「グガアアア!」

「あ、このアプリ懐かしー、昔はどれくらい強くなったかこまめにチェックしたな―」


 そう言ってレインが見ていたのは『ステータスチェッカー』、カメラに写した生物のステータスを計るものだ。

 それでレインは自分の身体を映す。


【解析完了】


 そんな文字が出ると、さっそく確認するレイン。


【名前】レイン

【種族】人族

【レベル】1104

【スキルポイント】11040

【スキル】なし

【魔法適性】全魔法適性

【魔法】火魔法・極、水属性・極、風魔法・極、土魔法・極、光魔法・極、闇魔法・極、無魔法・極

【アドバイス】

あのさ……いい加減、スキルポイント使おうよ。


「相変わらず、ステータスには変わりないな、じゃあ次は……」


 カメラで熊を映す、そしてすぐに解析が完了しその数値をレインは見た。


【名前】なし

【種族】氷狼族

【レベル】なし

【スキルポイント】なし

【スキル】なし

【魔法適性】無魔法適性、水魔法適性

【魔法】無魔法・レベル5、水魔法・レベル7

【アドバイス】

レベルという概念がないから、スキルポイントも無いしスキルも無いんだよね~これが。


「……は?」


 レインは何度もマジホの画面を見る、そこには確かに『レベルの概念がない』と書いてあった。そして言葉の意味を必死に理解しようとしていた。


「え? レベルの概念がない? え? は? ちょ、何?」


 完全にパニック状態になっていた。


「え? お前レベル無いの?」

「グガ?」

「嘘だろ?」

「グル?」

「よし、じゃあこうしよう。 イエスはグガ、ノーはグル、オーケー?」

「グガ!」


 そして何故か狼と対話していた。言葉の壁、そんなことは考えられなくなるぐらいにパニック状態なのだ。


「レベルってなんだか分かる?」

「グル」

「スキルポイントって知ってる?」

「グル」

「……魔法は?」

「グガ!」

「魔法は知ってるのか……メモアプリに書いとこう」


 次々に質問していき、少しずつ世界について理解し始めるレイン、そしてまとめた結果がこれだ。



【レベルについて】

・どんなに魔物を倒してもレベルが無いからレベルアップしない。つまり永遠にレベル一と同じ状態。

・レベルが上がると魔法のレベルも上がるが、それも出来ない。


【スキルについて】

・スキルポイントも無いからスキルを覚えない


【魔法について】

・魔法は元の世界と違いは無く、レベルを100まで上げると極になる。しかし極めたものは存在しない。いたとしても大昔の英雄ぐらい。



「はい、ワタクシ、レインは言いたいことがあります」

「グガ」

「……………………異世界、来るんじゃなかった」

「グガ……」


 その場で四つん這いになり落ち込むが、狼が器用に肩をポンっと叩く。


「うぅ……慰めてくれるか……お前いい奴だな」


 レインは狼の頭を虚ろな目をしながら撫でる。


「そういえばお前、氷狼族だよな。 群れじゃないのか?」


 レインの記憶が正しければ氷狼族は集団意識が高く、仲間想いだったのだ。その上、個々の力が強く倒すのにはかなり精神力を使うのだ。一体倒せば報復に何体も襲い掛かってくるから相当のレベル差が無ければ大変なのだ。


「グ……」

「ん?何か理由があるのか?」

「グガ……」

「うーん、追い出された」

「グル」

「じゃあ、出てきた」

「グル」

「これも無いとすると、群れが襲撃を受けた……とか?」

「グガ……」


 グガ、それは肯定の意味を表すサイン。つまり群れが襲撃を受けて潰されたのだ。


「なるほど……じゃあ、お前は一人なんだな……いや、一匹か」

「グガ……」

「うーん、じゃあ俺もボッチだし一緒に来いよ」

「?」

「ほら、旅は一人より一人と一匹の方がいいだろ? な?」


 ここまでくれば物語の主人公のようなセリフだろう。まるで旅で出会った敵を仲間に誘うイケメン主人公のセリフ……だが。


(これで今夜は寒い思いしなくて済みそうだ)


 レインはフサフサそうな毛皮を見てそう思った。完全に毛布の代わりなのは言うまでもない。


「グガ!」

「よし、決まりな! じゃ、名前を付けてやるよ」

「グガ♪」

「よし、お前の名前はブランケット」

「…………」

「……じゃ、ダメですかね?」

「グガ」

「じゃあ、少し文字って『フラン』」

「グガ♪」


 どうやら気に入ってもらえたようで、名前はフランに決定したのであった。

フランの名前の由来

ブランケット(毛布)

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