13、勇者の補佐だったらしい。
「魔王城破壊してきた」
レインはその日、ギルドでバートに報告をしに来ていた。もちろんフランはロビーで待機している。アリアはフランと一緒にロビーにいるため、再び迷子になる……ということは無いだろう。
「…………」
「…………」
バートはレインの話を聞いて腕を組みながら、悩ましそうに唸る。そして――――
「えーっと、あなた様の種族は人族であってますでしょうか?」
「なんで敬語になってんだよ」
「はぁ……あのな、儂は魔王討伐に参加しろとは言ったけど……それはあくまで補佐って意味じゃから……マジで」
「補佐?」
バート自身、先に伝えなかった責任もあるが、それ以前にレインと合って間もないため、その行動力を知らなかったことも考えると責めることは出来ないだろう。
「うむ……ここ、自由都市フローライには冒険者が集まるからな。なんでも近々、魔王討伐のために【王都・デウス】で異世界から【勇者】を召喚するからその補佐をしてほしいんじゃよ」
「異世界から勇者……?」
勇者とは神に『人族の窮地を救うべき存在』なのだ。そのため、勇者とは『人類が窮地にならないと現れない』のだ。
なので人為的に異世界から【勇者】を召喚するといってもレインは実感が持てなかった。果たしてそれは本当に【勇者】なのか……?と心の中でそっと呟く。
「魔王がいるのに勇者がいつまで経っても現れないから、古代の魔術で呼び出そう、という話になっているんじゃ」
「古代の魔術か……(勇者と戦ってみたいな……多分、勇者だから強いんだろうし)」
「一か月後に召喚を行うらしくてな。しかし人間なのか分からないような奴を推薦してトラブルを起こされたら儂の首が危ないしのう……」
バートは自分の保身のため、レインを推薦するかどうかを悩み始める。勇者相手にトラブルを起こしたら、世界の命運とバートの命運が大変なことになるからだ。
「やっぱりこの話は無かっ――――」
ポチッ
『フランちゃんの頭を撫でたいんじゃぁぁぁぁ!! そして膝の上に座ってもらいたい!! どうかご慈悲をぉぉぉ!!』
「そうですか……推薦してもらえないんですか……残念です。」
「ちょ、ま――――」
ポチッ
『フランちゃんの頭を撫でたいんじゃぁぁぁぁ!! そして膝の上に座ってもらいたい!! どうかご慈悲をぉぉぉ!!』
「でも、ギルドマスターが言うなら仕方ないですね……今回は諦めようかと思います」
「とりあえず大音量で流すのを――――」
ポチッ
『フランちゃんの頭を撫でたいんじゃぁぁぁぁ!! そして膝の上に座ってもらいたい!! どうかご慈悲をぉぉぉ!!』
「はぁ……断られたショックで、これをロビーで流してしまいそうだ……」
「脅しって良くないとおもうよ! うん! そういうの、儂は良くないとおも――――」
ポチッ
『フランちゃんの頭を撫でたいんじゃぁぁぁぁ!! そして膝の上に座ってもらいたい!! どうかご慈悲をぉぉぉ!!』
幾度となくバートの音声データが流される。そして――――
「よーし、儂、レイン君を推薦しようかな~」
「えぇ!? 本当ですか? ワーウレシイナー」
「ハハハー、クタバレこの野郎」
そしてレインはバートの協力を得て、王都へ向かうことになった――――
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