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9、魔族……怖い

「……疲れた」

「ぱぱ、大丈夫?」

「すまないねぇ……ギルドマスターはあとでちゃんと脅しとくから勘弁しとくれ」

「それはそれで怖いな……まぁ、ローズさんには感謝してるよ。フランの面倒見てくれてありがとう」


 レインは応接室で一時間ほどバートの性癖を聞き続けてウンザリしていた。そこでマジホの録音アプリを起動し、バートのロリコン発言を録音した。

 一通り録音した後でバートの目の前で録音した音声を大音量で流して「帰っていい?」とレインが聞いた結果、バートの顔が青ざめていき、三秒後には「どうぞ」と言ったのだ。


「それで俺のギルドカードは?」

「あいよ、持ってきな」


 冒険者登録を済ませ、レインはローズからギルドカードを受け取ると空間魔法で収納し冒険者ギルドを出ようとする。


「ありがとう、フラン、そろそろ行こうか」

「うんっ!」



「空間倉庫に食料は数年分あるからこのまま行っちゃうか」

「私も行くー!」

「大丈夫だよ、置いていかないから」


 ギルドを出て、レインは手持ちの食料を確認しとある場所に向かうことを決意する。空間倉庫は中の時間を操作することも可能だ。なので時間を止めておけば食料は腐ることなく新鮮な状態を保っている。


「ぱぱ、どうやって行くの? 魔族領って凄く遠いよ?」


 魔族領、それは魔族と呼ばれる種族が住んでいる領土のことである。

 魔族は一言で表すならば――――人族の敵だ。普段は人間の姿をしているが身体のどこかには必ず魔族としての特徴があり、興奮状態になると魔族の真の正体を現すことになるのだ。


 そして魔族領には魔王がいる。魔王とは人族でいう王族のような存在であり、親から子へと魔王の力は引き継がれるのだ。

 二十年前に魔族が人族の聖女を誘拐したことで戦争があり、一度勇者の手によって魔王は死んだ。しかし魔王には子供がおり、今はその子供が魔王なのだという話である。


「俺の世界じゃ魔族かどうかなんて気にしてないのにな……そんなに悪い奴もいないし」


 レインは昔のことを思い出す。それは怖そうな魔族に声を掛けられた時だ。

――――おいお前! 金貸せ

――――あぁ!? 金を持ってない!?

――――嘘だったら乳首切り落とすぞ!?


 その十分後、痛みに耐えながらレインは魔法で乳首を再生させることに成功し、新魔法〈再生〉を生み出した人物として世界に名を馳せることになったのだ。その時の記事のタイトルは【切り落とされた乳首を再生した男】である。


「うん、やっぱり魔族は滅ぼすべきだな」


 一瞬にして自分の言葉を捻じ曲げたレインであった。そして悲しさを紛らわすように魔法を使う……転移魔法だ。


「フラン、掴まれ」

「わかった!」


 フランはレインの身体に抱き着くと、頬擦りを始める。


「……何してるんだ」

「掴まってる、それと私の匂い付けてる」

「今やる必要があるか謎だが……まぁいいか」


 そして二人は魔法陣の光に包まれ消える。



 目を開けるとそこは魔族領であり、遠くには巨大な城のようなものが見える。魔族領と言っても風景は人族の領土とはあまり変わらず、青い空にどこまでも広がっている荒野、人族の領土でも見れそうな景色ばかりである。


「あれが魔王の居城かな? さて、早速……ん?」

「ぱぱ、何か襲われてるよ?」

「ほんとだね」


 少し目を凝らすと、一人の魔族が馬に乗って逃げているのを複数の魔族が追っているのが見える。早さからしてこのまま時間が経てば逃げている魔族は追い付かれる、とすぐに分かったレインはどうするか考える。


「助けてもいいけど……どうしようかな」


 とりあえず、どうするかをメモアプリに書いていくレイン。


【メモアプリ】

・助けた場合→魔族に会うことになる→金を奪われる→乳首を斬られる。

・助けなかった場合→魔族は死ぬ→こちらには被害が無い→魔王討伐に行ける。


「よし、放置するか」


 まず乳首を斬られる可能性は無いに等しいのだが、レインにはトラウマがあったためどうしても頭に浮かんだのだ。


「ぱぱ、助けないの?」

「いや、助けるメリットが無いし……」


 フランは助けてほしそうだが、レインは正直あまり乗り気ではない。そしてフランはレインの『メリット』という言葉に着眼し、ある提案をする。


「じゃあ、助けたら私がご褒美あげるよ!」

「えっと……どんな?」

「いい子いい子する!」

「……」


 幼い女の子にいい子いい子されるのは正直『罰ゲーム』をしか考えられない、とレインは考え、どう対応すればいいか悩み黙り込む。

 しかしそれを見たフランは『いい子いい子だけでは足りないのでは?』と全く正反対の発想に辿り着いていた。


「じゃあ、膝枕しながら!」

「……(増えた!?)」


 罰ゲームが増えたことにより、更に困惑してしまうレイン。そしてフランは『これでも足りないか……』と考え次はどうしようか、と考える。


「じゃあ……他には」

「分かった分かった。助けるからそれ以上増やさないでくれ……」

「本当!? ぱぱありがとう!」

「あ、ああ……(なんかとんでもないこと言われそうだったし……)」


 そしてとりあえず、追っている魔族に向って魔法を放ち、逃げている魔族を助けに向かうレインだった……

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