プロローグ:長い嵐の前の静けさ
隼人:「むにゃむにゃ………」
6月某日、天気は快晴、朝の喧騒が大きくなってきたころ、俺はまだ布団の中にいた。
昨日、夜遅くまで白熱していたオンラインゲームの罪は重い。
さながらさなぎの様に布団にくるまり、身動き一つしない俺ではあったが、階下からでもはっきりと聞こえる声で、まず俺の耳が起きた。
母:「隼人~起きないと遅刻するわよ~」
そう言い放つと、階下の声の主はドタバタと音を立てながら、玄関から出かけていったようだ。
隼人:(………遅刻?)
隼人:「やばい!」
「遅刻」というキーワードを聞き、身体の全機能も起き出した俺は、身を翻し枕元に置いてある時計を覗いた。
隼人:「やばっ…急がないと遅刻しちまう!」
そう思い立つと、部屋のクローゼットから洋服を取り出し、制服を急いで着けると、部屋から飛び出した。
階段を降りると、すぐさまダイニングルームが見えてくるが、そこには妹がすでに朝食を食べ終わらんとしていた。
隼人:「おいおい、そろそろ家でないとやばいんじゃないか?」
妹:「あたしは準備終わってから食べてるので大丈夫です~、それよりも危ないのはお兄ちゃんの方じゃない?」
隼人:「俺はもう朝飯食えないな……」
妹:「え?お母さんはお兄ちゃんの分作ってないよ?昨日遅くまでゲームしてたの知ってたみたいだし!」
隼人:「ぐっ…何も言い返せないな、仕方ないダッシュで行けば、コンビニ寄る時間くらいは作れるだろう」
そういって早々と会話を終わらせ、準備もほどほどに俺は家を出た。これなら何とか間に合いそうだ。
学校は、歩くと20分くらいの距離があるが、走れば15分ほどで着くことができる。この5分差を利用して、コンビニでパンでも買っていこうという腹積もりだ。
隼人:「遅刻遅刻ぅ~」
そういいながら、軽快に通学路を進んでいる中、筋道の交差点で漫画のようにばったり圭太と鉢合わせた。というよりもぶつかったのである。
圭太:「いてぇ…」
隼人:「あいたたた……って圭太じゃん、お前も遅刻か?理由は言わなくてもわかるけどな」
圭太:「おぉ……隼人か、てっきり美少女と鉢合わせたかと思ったぜ、やっぱ昨日のゲームは遅くまでやりすぎたな」
隼人:「あぁ…、確かにやりすぎたなぁ、おかげで朝ごはん食べられなかったよ」
圭太:「お前んちのかーちゃんは飯がうまいからなぁ、そりゃあ後悔するわな」
圭太とは、小さいころからの友達で、昔から何かと遊んでいた。そのせいか、お互い家族ぐるみの付き合いがある。といっても、圭太の両親は、仕事の関係で海外にいることが多いため、実質1人暮らしのようなもんでもある。
隼人:「おっと、こんなことしている場合じゃなかった」
そうやって、俺は思い出したように言い放ち、圭太も誘ってコンビニまでダッシュすることにした。
多少のアクシデントがあったものの、無事にコンビニまで寄ることができ、俺は教室までたどり着くことができた。
窓際にある、自分の席に着くと、「ふう」とため息をついて、通学途中で買ったパンを、ボケーっと空を眺めながら、HRが始まるまで食べていた。
空は青く、透き通っており、なんだかほのぼのしてしまいそうな気持になっていたが———この日を境に、俺はあるスーパーめんどくさい頼みごとに、巻き込まれることとなったのである。