【第8小節】 俺らだけの夏祭り
ちりんちりん 風鈴が風に揺られながら札が泳ぐ
空上の暗闇の星空のない暗闇から黄色や橙の提灯から漏れる光が淡く朧気に揺れる
太鼓と笛と
「せいっせいっ」と群衆の神輿を勇ましくあげる声が遠くから聞こえた
今日は夏祭り
数年に一度の大きな夏祭り
俺は甚平をきていた黒の甚平で上り龍の藤の柄が入っていた
「決して離れない道ならぬ恋?それともほかに何か意味があるの?」
後ろを振り返ると彼女がいた
一人。
この前は浴衣を着ていたから
紫陽花の浴衣かと思ったら私服だった
甚平と浴衣で合わせようと思っていたけれど
そういうわけにはいかなかった
まあそれは俺のちょっとした希望だし
白のふわふわしたシャツに下がデニム
今度は彼女がマリンコーデ
屋台が並んでて
ともだちのところに集まる予定だったんだけど
ちょっとぐらい遅れてもいいかって
屋台を見渡す
やきそばに
たこやきに
あんず飴
ヨーヨー
「ちょっと射的やんない?」
俺は誘った
「・・・いいよ」
彼女が笑って頷く
それから俺は普段 射的なんてやらないけど
今日は気分ものっていたし
射的をすることにした
射的屋のおじさんに金を払う
彼女は俺が撃つのを見た
いいところをみせたい。それだけのために射的をした
それから5発のコルクの玉をおじさんからもらった
最初の4発はミスをして最後の1発目でお菓子の景品を落とした
若干、焦ったものの 落とせてよかったとホッとする
俺はお菓子をおじさんから受け取って
彼女に「やる」
「・・・ありがと」
そのまま彼女はもらったお菓子を鞄に入れた
二人で屋台の出店のりんご飴やみかん飴を買って食べた
ちらっと集合場所へ向かうクラスのメンバーを見つけたけれど
見なかったふりをして屋台の横に離れて食べた
彼女の浴衣もかわいかったけれど
私服もまあ私服でかわいかった
彼女はみかん飴を食べて
俺はりんご飴を食べた
まわりはざわざわと心が浮世だっている感じ
俺もそんな感じ
食べ終わって彼女が「そろそろみんなのところに行こう?」
って言ったから 俺は無言で
彼女の手首をつかんで人ごみの中を歩いた
慌てる彼女の顔と目が合って
目をそらす彼女
俺は普段なら俺も目をそらしてしまうが周りがいないし
その様子を見てた
夏祭りの会場は神社で待ち合わせの集合場所は
神社の土地の中心部 竹藪に覆われた底なし沼のとなりだった
彼女の腕をつかみながら 人だかりをすり抜けて、ひとだかりの前で立ち止まったとき
彼女がしゃべった
「底なし沼って本当に底がないのかな?」彼女が言って
俺は振り返って
「底に泥がたまって抜け出せないだけだろ」と答える
「でも神社だからなにかあるかもよ」
「何が?」俺は立ち止まって聞き返した
「・・・骨とか」
「骨?」俺は笑いながら答える
「底なし沼だもん」
「それは入って確かめてみたいな」
そういうと
「沈んじゃうよ」
「沈まないだろ」
「沈むよ、泥があるんでしょ?入って確かめるのは不可能だよ」
「・・・竹でつっついてみるとか」
「あ」
彼女が言った 俺の後ろを見て
俺たちが待ち合わせる場所に人だかりができていた
待ち合わせに使っていた人たちは俺たちだけではなかった
学校の先輩や、先輩の先輩とかもいたりした
「誰だよ、こんな場所選んだの」俺はボソッとつぶやいた
祭りにはもめごとも憑き物だった
俺のとなりの席のやつが
先輩に絡まれていた
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