【第6小節】 45分×∞(無限)時間
初夏 教室の窓から木に止まっている蝉が鳴いていた
ミーンミンミンミンミンミーン
ミーンミンミンミンミンミーン・・・
蝉はなぜなくか知っているか?
それは求愛行動
「俺はここだ~!俺の鳴き方を聞いてくれ~!!!!」
この授業時間の一日も昨日も、まるで時間が止まったかのように
45分の授業が
まるで1分目から動いていないかに匹敵していた
ミーンミンミンミンミンミーン
ミーンミンミンミンミンミーン
ミーンミンミンミンミンミーン
ミーンミンミンミンミンミーン
ミーンミンミンミンミンミーン
ミーンミンミンミンミンミーン
ミーンミンミンミンミンミーン
ミーンミンミンミンミンミーン
・・・・・
本当に五月蠅い
クラスは30人で 4クラスあった
その中でもひときわかわいい彼女は
他のクラスの男子からの評判も同じだった
俺の席は一番後ろの窓側の席で
彼女は右斜め前の右隣り
微妙な距離で
会話も聞こえたり聞こえなかったりが
余計にイラつかせる
ミーンミンミンミンミンミーン
ミーンミンミンミンミンミーン
ミーンミンミンミンミンミーン
ミーンミンミンミンミンミーン
ミーンミンミンミンミンミーン
ミーンミンミンミンミンミーン
ミーンミンミンミンミンミーン
ミーンミンミンミンミンミーン
・・・・・
俺はシャーペンをカチカチしながら秒針の針が動くのをまつ
さっきからぜんぜん動かない時計に
お話が楽しそうな彼女と新しい彼女のとなり
地獄か ここは
「消しゴムがないよ
そういえば借りてたな・・・」
じゃないはず、本当は そういうのじゃない
消しゴムぐらい持ってるし
楽しかったのがいないと憂鬱になる
俺のテストや解答用紙のマル付けを誰がやるんだよ? いや、ちがう
俺のとなりにいるときは
しゃべりたくないのに
いないと気持ちがわからなくて
俺が不機嫌になる
いなくたって大丈夫だし
ミーンミンミンミンミンミーン
イライライライライライライラ
ミーンミンミンミンミンミーン
イライライライライライライラ
ミーンミンミンミンミンミーン
イライライライライライライラ
すると俺の新しい席のおとなりさんが
「大統領になったらなにする?」って聞いてきた
俺はそれどころじゃない
「い、いや別に」
大統領になれるわけがないのに空想的会話がアホくさいとも
思った
しかし、となりのやつは
彼女のとなりの男にも話しかけた
「ねえ!大統領になったらなにする?」
彼女と彼女のとなりのやつがこっちを向く、
前のやつも間違えて後ろを振り返る声で
なにやってるんだとか思った
すると彼女と俺は目があう
ひさびさに
ひさびさに目があった
「・・・」
「・・・・」
一瞬空気がさらに止まったが
イライラする感じじゃなかった
ナイスとなりのやつ
俺にはできない尊敬する
終始、俺たちだけの会話のほとんどが
なくなって もう話す機会もなくなるのかと
思っていたら
みんなとの会話になる
俺といないなら・・・
混沌としたものが湧き上げるのがわかる
となりの男をみるたびに
俺のシャーペンの芯が折れまくる
ミーンミンミンミンミンミーン・・・・ミーン
鳴く蝉の横で
木に脱皮した蝉の抜け殻がふと見えた
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