【第24小節】 澱(おり)
中二の秋、
ホームセンターへ行く途中で
トンボが止まっているかのように並んで飛んでいた
俺のローファーはかかとがつぶれてサンダル履きになりながら
だらだら学校へ行った
ガラガラ教室に入る
誰もがまた俺を見る
ザワザワ・・・
デコが俺によって来た
デコは笑いもせず真剣な顔で聞いてきた
「はっちゃん、会った?」
「誰に?」
嫌な予感がした、葬式みたいに聞いてきた
会ったか?って最後に会ったのかって。
俺はそれが誰か、誰をさすのかなんて考えたくもなかった
「え?」
俺は聞き返した
この前の公園のことだろうか?
でもいまさら何を?
「と、と、となりのクラスにいるんだよ」
「・・・え?」
俺は教室からとなりのクラスを見に行く、
朝のチャイムがなって隣のクラスの廊下から
教室の前を通るかのように横目で中を見た
わからない
俺は教室に戻って自分の椅子に座った
「見た?」デコがわくわくしたような顔で俺を見た
「いや、見てない」
「・・・・ん、なーんだよっ!」
机をバンとたたき舌打ちされた
「なんなんだよ」俺は言い返した
俺はそわそわしていたかもしれない
次のチャイムで
隣のクラスへデコを連れていく
まるでそれはあの夢のデジャブが起こってるかのような
切り取った風景だった
彼女が俺をみる
目が合う
彼女は俺の数十センチ近くにいるかのように
手を伸ばせば手が届く距離にきた
同じくらいの背だったのに俺より背が低くなっていて
俺をさらにまん丸した目で俺を見た
俺の心臓の鼓動は収まらない一刻
俺と彼女は何もしゃべらず見合ったまま
次のチャイムが鳴った
「な、なんで?」
「帰ってきちゃった」
「・・・おう。」
俺は返事をした
教室に戻らなくちゃいけないのに
俺はすこし彼女とのその場所にいてから
沈黙のまま教室に戻った
彼女も焦って自分の席に座る
誰もが俺と彼女の関係なんて忘れていたかのように
ひとごとかのように
時が立っていた
デコもあまり興味を示さないしデコ女も深く聞いてこない
ただ彼女は戻ってきて日常に追加された現実があった
でも俺と彼女だけはその刻はそのままだった
俺はそうだった
止まったままだった
あの時から動くような気がして
俺は部活を休んで放課後追いかけた
一緒に並んで帰りたい
走り慣れないローファーの靴音を鳴らして俺は走った
呼吸もあがっていたのだろうか俺の脳裏に住み着いて
離れることのなかった彼女の薄い色の手の腕をを後ろから
バトンを渡すように握った
はっと驚いた顔をして振り返るはっちゃんは
一度俺を見て下を向いて後ろに後ずさって
逃げようとした
だけれど俺はそのつかんだ手の腕を離しはしなかった
「いや?」
俺は真剣な顔をして彼女に聞いた
下を向きながら上目づかいで首を横に振る彼女
俺は腕から手を握って彼女の前に立って軽く引っ張って
手をつないで彼女の家まで送った
とても強い夕日の炎の向こうで俺と彼女をやけに照らして
俺たちを陰にした
【補足】
澱・・・1 液体の底に沈んだかす。おどみ。
2 すっきりと吐き出されないで、かすのようにして積もりたまるもの。
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