【第21小節】 歪(ひずみ)
学校の校庭に沈丁花が植えられていた
俺は校庭にいた
陸上部の練習中でストレッチに走り込みの練習をしていた
運動靴の紐がふいにほどけてギュッと結び直す
放課後は陸上部で走り込みの練習をするのが日課だった
走るのは気持ちがいい
走るまでの重力が俺の身体にかかる
そのあと身体が軽くなって一気に風邪を感じた
その走っている空気の圧の感覚が
運動会のリレーの時に彼女をみたときの
あの景色につながる感じを思い出す感じがしたんだ
走りながら
俺は付き合うってなに?って考えてた
俺の頭の中はモヤモヤしていて
何度も繰り返す走っている時間が少し忘れられた
忘れたいような忘れたくない
俺は彼女と付き合いたい
いや、付き合いたいという気持ちはあくまでも
過程でもっとあの時間が
一緒にいた、いる時間が続けばいいと思っていた
でもただ付き合いたいんじゃないんだ
もっとかっこよくなってから
もっと自分に自信がついてから
もっと・・・・
モヤモヤしてイライラする
その走っている時間がそのもやもやを回避させてくれた
彼女から逃げてるといえば逃げてるし
備えて向かっていると言えば向かっている
「13、6秒」
「13、3秒」
「13、7秒」
100mのタイムを部活の女のマネージャーに図ってもらい
記録としてタイムを残して帰りの準備をしていた
「つきあってイチャイチャしたい」
そうそれ、でもその声はサッカー部のあいつ
「・・・なーんだよ」と俺はサッカー部のあいつに言った
「付き合ってイチャイチャしたいのに告白ができないBY甘さんって感じだな」
「・・・俺の気持ちを代弁するなよ」
「なんで告白しないんだよ」
「いや、そういうのじゃないような気が」
「なに」
「告白していままでの友達だったりこう、なんていうか
壊れちゃったりするの嫌なんだよ」
「引っ越したんだから壊れるも壊れないもないだろ」
「・・・・」
サッカー部のあいつは俺にどうしてそんなに
彼女を推してくるのかわからない
「付き合って、ドキドキしなくなったり終わりがやってきたら
嫌だろ」
俺は言った
そうしたらあいつは言った
「帰宅部のままだっていったのに、陸上にはいったじゃないか」
「・・・そ、それは。・・・わかーったよ、悪かったな、帰れ」
「あのさぁ、甘さん・・・」
「なに?ていうか、なんでそんなに推してくるんだよ、
おまえなんで」
「俺はなんていうか、はっちゃんと甘さんがつきあっててほしいっていうか」
「・・・お、俺はおまえのご希望の人間じゃないんだよ」
そういいつつ、俺の顔はにやけていたかもしれない
「そういえばおまえ彼女いないの?」俺はちょっとサッカー部のあいつに
興味が湧いて聞いた
「お、俺?」
サッカー部のあいつは彼女がいるんだろうか
「甘さんだけにいうけれど・・・」
「言うけれど?」
え?まさか、まさか
こいつ・・・このやろう・・・
「いる」
ガーン
負けた 俺は負けた 負けました
競っているわけではないけれど
先をすでにこされていました
敗北した感じがした
相手は誰だ?!
誰なんだ?
「だ、誰?」明らかに動揺していた
「一個上の先輩」
「名前は」
「言えない」
「どこまでいったんだ?」
「そ、それはちょっと」
それはちょっとだぁ???!!!
俺は下を向いた
俺は上から心配されていたのだ・・・・
「つ、付き合うっていいよ」サッカー部のあいつが
何か思い出しながら嬉しそうにいった
「そ、そそそうか・・・」なぜか俺まで恥ずかしくなった
俺のいままでの心配と俺のいままでのやきもちは
取り越し苦労というかなんだったんだろうかと思った
「なんで周りに言わないんだよ」って俺は聞いた
それになんで俺に教えたんだろうか
「甘さんならわかってくれそうだったし」
「・・・そうか」
俺は鞄をふりまわして帰り道を歩き始めた
しょうがないなと
「帰ろうぜ」って誘った
「お、おう」
サッカー部のあいつはいつも一人で下校していたからか
妙にうれしそうな顔をしていた
溜息をつく俺
なんで俺は告白しないんだろうか考えた
好きだって気持ちはたぶん伝わってると思う
でも、だからといって・・・
「騒がれるのが嫌だ・・・かな」
俺はサッカー部のあいつのほうを向いて言った
「?・・・あーたしかに、わかるかもそれは。
俺もみんなに言わないし、言わなきゃいいじゃん」
「・・・そういう問題だけじゃなくて」
問題はいくつも複雑に絡まっている
付き合っても先を考えられない
考えてはいるけれど、
「なんていうか、自分たちのペ―スでゆっくり関係をだな・・・」
「?え、なにそれ」
「よくわからね」
考えるのがめんどくさくなってしまった俺は
言った
「実はこの前はっちゃんと会った」
「え!?」
あまり詳しくはいわなかったけれど
とりあえず「公園であった」
「え、なんで?」
「たまたま」
「え、詳しく・・・」
「・・禁句」
周りから関係を壊されてしまうようん感じがして
俺は言わなかった
誰にも触れてほしくない
誰にも知られてほしくない
きっと誰かが触れてしまったら壊れてしまうような気がして
火のつきかけのように
まだ大事にしておきたい そう思った
「じゃあな」俺はサッカー部のあいつとの帰路の分かれ道にちょうど
たどり着いて走って帰った
俺は家に帰って湯船に目をつぶり頭ごと沈んだ
【補足】
歪・・・.形がいびつなこと。ゆがみ。
沈丁花・・・早春2月に咲く花 まだ寒いのにふわっと花の香りがただよってくる花
http://22182.mitemin.net/i263044/
http://22182.mitemin.net/i263037/





