【第20小節】 梅花ほのかにかをるまでに
「な、なに?!」
次に電話がかかってきたのは脳裏に焼き付いて離れない
彼女だった
彼女のそのもののの声が鮮明に蘇った
俺はサッカー部のあいつのように返事をする前に
電話が切れないか焦った
彼女はゆっくり話した
「近くの公園にいるんだけど」
なんだろうか彼女も緊張しているのかなと思った
「?近く?」
近くがどこの近くかわからない
彼女は遠くへ引っ越したはずなんだが
「どこの?」俺は慎重に聞いた
電話を切られては困るから
ゆっくり聞いた
どうやら俺の家の近くの公園にいるらしい
「7時に待ってる」
花火を以前した場所
午後7時まであと15分くらいで彼女に会える約束をした
その日はただ寒い日だった
俺は厚手のコートを着て
外に出た
咳が出るからマスクをした
普段なら絶対断ってるけれど彼女の声を聴いていかないわけがない
公園へ向かった
すると雪がパラツキ始めた
「傘・・・」
と思ったけれど
取りに行ってる暇はなかった
雪がしんしんと降り始めた
その雪の量は豪雨の如く勢いを増した
いきなりこんなに降るのかよっていうぐらい降ってきた
もう彼女いないかなとおもったけれど
公園につくと彼女がいた
彼女も傘を差さずに木の下にいた
はっちゃんだった
俺は
雪が当たらない
公園の屋根があるような場所を探して手で合図した呼んだ
はっちゃんに積もる雪をふりはらう俺
「・・・ありがと」
「・・・久しぶり」
何をしゃべっていいかわからず
俺らは公園にずっと居た
帰ったら次いつ会えるかわからないとか
もう絶対会えなくなるってすごく強く思った
ふとみると梅の実が雪に埋もれていた
重くのしかかる雪雪
しばらくして俺たちは寒い寒いいいながら
ポツポツ会話をしだした
新しい学校はどうだとか
クラスがどうなってるだとか、
この前カラオケに行ったことも話したが
告白されたことは言わなかった
「一緒に遊ばない?」って言いかけたけれど
明日にはまた引っ越した先に帰るらしくて
できない話をしてもなあと思ってやめた
それから1時間くらいしただろうか
彼女が両腕で自分の二の腕をさすりだした
彼女も寒いんだろうなとか思ったけれど
俺は帰したくなかったし帰りたくもなかった
俺も咳がなんども出そうで咳込そうになった
無理していたら、彼女から
「風邪ひいてるの?」って聞かれた
「・・・うんまあ」
俺はそれでも居たかったけれど
寒いしなと思った
彼女の冷たそうな白い顔の皮膚をみると
まだ居たいという気持ちも薄れた
「今日はもう帰ろ」俺は言った
「・・・うん」
「送る」
俺は言った
「いいよ、風邪ひいてるし」
「・・・わかった」
俺は彼女に公園からの分かれ道で次いつ見れるかわからない
彼女の頭にかるく積もった雪を
ふりはらうかのように頭をなでて走って逃げた
重い雪もなにもかもを振り払うかのように
それから家に帰って風呂に入って湯船につかる
手つなげばよかったとか付き合ってくれとかいえばよかったとか
後悔して布団にもぐった
次の日俺は風邪をぶり返した
でも身体の状態は最悪だったが気分は最高によかった
正月がやってきた
梅の花の木が伸びて開花しそうだった
俺の風邪もすっかりなおって
神社でお参りをした
小銭を賽銭箱に投げ入れる
パンッ!手を合わせて
「また会えますように」
1月
俺はサッカー部じゃなくて陸上部に声をかけられて入った
雪解けと同時に
しずくが地面に垂れるたびに
梅の花が光を浴びながら煌めき揺れていた
【補足】
梅花・・・梅の花のこと
煌めき・・・きらきら光り輝く
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