【第15小節】 100%運動会
体操服を着て運動靴の靴ひもを結ぶ
ちょっと緊張している自分がいた
心臓に手を当てて気持ちを落ち着かせた
ヨーイ ドン!! パンッ 銃声の音が聞こえた
クラスごとに代表数名がバトンを渡し競い合う学年別対抗リレー
俺とサッカー部のあいつのリレー勝負がはじまった
俺はサッカー部のあいつに勝ちたい
いつも練習して走っているスポーツ部のやつに
帰宅部という圧倒的に不利の俺が
勝ちたい
勝って彼女にかっこいいところを見せたい!
ー運動会前ー
俺はクラスの代表数名を集めて
毎日朝練をすることにした
周りの奴は帰宅部がなにやってんだとか笑っていたけれど
1年だし、そんなに差はないと思ってた
走り方から走り込みから けっこう本格的に練習したつもりだった
それから乗りに乗って夕方の音楽祭が終わってからも
早朝は自分だけ家の周りで練習した
「何部?」とか知らないおじさんに声をかけられて
「いや体育祭で」とか言ったら
朝まだ暗い時間に出勤する
サラリーマンという大人は俺に言った「いいね、青春だね!」と
青春という言葉はよくわからないけれどおじさんはご機嫌に
会社へ向かっていった
ヨーイ ドン!! パンッ 銃声の音が聞こえてから
俺のクラスのリレー走者が次々とバトンを渡して
俺まで回ってくる
俺はじりじりをその時を待った
サッカー部のあいつは最終走だった
俺も最終走
となりにならぶ
周りからは今は知っているやつに対する歓声が響いて
誰も俺たちをまだ見ていない
サッカー部のあいつは
あまり精神的に良い状態ではないのが
長袖のジャージを見てわかる
「なあ」
俺は話しかけた
嫌いなあいつに
あいつは周りが自分がひがまれているのも知っているし
俺が嫌いなのも知っていた
だから余計に無視すればよかったなんて気持ちはなかった
「俺が勝つから勝負しようぜ」
俺は明るく言った 無理やり明るく言った
不調のやつに追い打ちをかけることはしたくなかった
なにもまるでなんでもなくても
勝てなくても勝ってやると思った
だがしかし、しょせん帰宅部、俺の走者は遅かった
ハンデがある中 バトンを持って走った
運動会の全員がそのリレーの結末をみるために
熱気をだす
俺は声援のなか心の底から走った
地面を踏みつけ 腕をふり
周りなんて見えない
あのサッカー部のあいつの背中を追いかけて
走り込み肉体が肉体を抜かして
前がいなくなることに空気の圧を感じて
前がすっきりした瞬間
ゴールした
俺はギリギリで勝った!!
ワァァァァァ!!!と歓声が聞こえて
その声に身震いした。
銃声が パンパン聞こえた
勝ったかのかと思ったら引き分けだった
くっそ。
と思ったが
チームのみんなは負けリレーだと思っていたようで
抱きついてきた
「おおっ」
俺も答える
クラスの女子から「甘さんかっこいー!!」という声援
俺はリレー仲間に抱き着かれながらガッツポーズ
もちろん彼女にもガッツポーズ。
みたか!?っていう
それからサッカー部のあいつが俺によってきて
俺と拳を合わせる
意気投合した
魂を燃やしたような運動会だった
今日は俺の最高の日
彼女と俺の思い出の日。
じゃなかった、彼女と俺とみんなの最高の思い出の日。
俺は今日のあのみんなの歓喜を芽に焼き付けた
今日は焼肉
先生のおごりと数人のクラスメイトの親の大人たちとクラスのみんなで焼肉パーティー
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