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第66話:エロ本

「いよいよ魔王城、か。なんかここまで妙に長く感じたな」

「なんでだろうにぇ。移動距離はそんなでもないのに」

「みっちゃんがこの世界大好きのド変態だからだろう」

「間違いなくお前らが騒動を起こしてきたせいなんですけど!? あとド変態言うな!」


 確かに多少自覚はあるが、ド変態は言いすぎだろ。ていうかティーナにだけは言われたくないんだが。


「ご安心なさい。魔王などこのわたくしが一撃で粉砕玉砕して差し上げますわ」

「その自信がどこからくるのかわからんが、やりかねないのが恐ろしいな」


 おーっほっほと高笑いを響かせながらビッグマウスを解き放つマリーをジト目で見つめる俺。こいつの場合やりかねないからな……ていうかうちのパーティの連中はリープ以外マジで何をやらかすかわかったもんじゃないんだが。

 とはいえ―――正直言って、少しだけ怖い。

 相手はこの世界のバグの中心ともいえる存在だ。いわばモンスターたちの親玉。一体どんなのが飛び出してくるのかわかったもんじゃない。俺は少しだけ震える右腕を押さえた。


「やりかねないという意味ではマスターの力も十分脅威です。魔王の戦闘データは不明ですが、間違いなく通用するレベルの力であると推察します」


 リープは震えを押さえる俺の様子を察したのか、俺を見上げながら声をかけてくる。その言葉には確かな温かみがあって、俺はぽんぽんとリープの頭を撫でた。


「ん、ありがとなリープ」

「……いえ。あくまで客観的な意見です」


 頭を撫でられながらほんの少しだけ頬を染めてそっぽを向くリープ。こいつも随分と感情豊かになったよな。なんかすげー嬉しいぜ。

 とにかく今は、このメンツでなんとかするしかねえ。それができなきゃ……


「みっちゃんエロ本見つけた! これでリープちゃんの情操教育が捗る―――」

「うぉら!」

「そばみそ!」


 エロ本片手に嬉しそうに走ってきたティーナにハリセンの柄でボディブローを入れる俺。

 ティーナは変な断末魔と共にその場に倒れた。


「な、何をするみっちゃん。わりと痛いぞ」

「こっちのセリフだ馬鹿! 変なもんリープに読ますんじゃねえ!」


 ていうか何でこんなとこにエロ本落ちてんだよ。いや、まだ街道だから落ちてても不思議じゃないけどこいつが拾っちまったのが最悪だ。


「とにかくだ。リープにだけは絶対にその本見られないように―――」

「マスター。何故この女性は裸なのですか?」

「うぉああああああ!? せりゃあ!」


 いつのまにか手に取って思い切りエロ本を読んでいたリープ。俺は光の速さで距離を詰めると森の彼方までエロ本をぶん投げた。


「あああああ!? もったいない! 気は確かかみっちゃん!」

「ティーナにだけは言われたくねえんだけど!? ていうか決戦前に余計な体力使わせんな!」


 この後は魔王との闘いが待ってるってのに、なんでこんなことで疲れなきゃならんのだ。


「マスター。あの本は一体……」

「それについては私が教えてあげよう。いいかい? 男の子は女の子の秘密の花園とおっぱいという名の楽園に夢を―――」

「うぉら!」

「チョップが重い!」


 リープに余計な事を教えようとするティーナに思い切りチョップを入れる俺。やばい。とにかくここは誤魔化そう。


「あーほら、夏場暑いと服を脱ぐだろ? あの本の女の人もきっと暑かったのさ」

「なるほど。しかし衣服全てを脱ぐというのは文明を捨てるに等しい行為です。それに女性は室内にいて気温は適温だったように思えます。その状況で何故服を?」


 リープは純粋な瞳で俺を見上げて痛いところを突いてくる。ちくしょう泣きそうだよ。なんで俺こんなとこでエロ本の説明してんの?


「それはそのー……ほら! 蒸し暑い! 蒸し暑い日だったんだよ! それにその、魔力で動くクーラーも壊れてたんじゃねーかな!? そりゃ裸にもなるって!」

「なるほど。了解しました」


 く、苦しい。我ながら苦しい言い訳だったがどうにか納得してもらえたぞ。百パーセント納得しているわけじゃなかろうが、とりあえずこの場は乗り切った。


「そんなこと言ってー。実はミッチーもあの本読んでみたかったんじゃないのぉ?」

「ぐっ!? そ、そそそそそんなことねーし! 異世界のエロ本とかマジ興味ねえし!」

「ミッチーってほーんとわかりやすいよねぇ」

「ぐっ……」


 リアの“お姉さんは全部わかってるんだからね?”という目がむかつく。しかし何もしてないのにチョップを入れることもできず、俺はただ奥歯を噛みしめた。


「それより、魔王城へ行くのでしょう? もう目の前なのですからさっさと行くべきですわ」

「お、おお、そーな。確かにその通りだ」


 確かにマリーの言う通り、さっさと行かないと日が暮れちまう。この辺りは灯りもないし、明るいうちに魔王城に行かないとな。

 こうして俺たちはいつも通りのやり取りを繰り広げながら、ゆっくりと魔王城へと近づいていくのだった。


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