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第61話:同室戦争

「それにしても物々しい雰囲気だな。みんな殺気立ってるし」

「まあ変態がうろついていれば仕方ないだろう」

「それお前が言うの?」


 悪びれる様子もなく言い放ったティーナに対してツッコミを入れる俺。これこそお前が言うな案件だろ。


「何を言う。私は変態じゃないぞ、露出アーティストだ」

「新しい称号を創るんじゃねえ! それを変態って言うんだよ!」


 しかもお前の露出は目が潰れるからある意味普通の露出より危険なんだよ。この街の霧でも一発で晴れるような気がするぞあの光は。


「それよりもマスター。宿に到着したようですが。こちらになさいますか?」


 リープは宿屋の料金表の前に立ち、手をかざして俺に案内する。リープの差した先には確かに宿屋の料金表が乗っていた。ふむ……料金は妥当だな。


「ま、ここでいいんじゃねえの。今は一刻も早く室内に入りたいし」

「早く服を脱ぎたいですもんね」

「そうだけどそうじゃねえよ!? 部屋着に着替えてゆっくりしたいだけだから! 露出したいわけじゃねえから!」


 誤解を招くティーナの言い方に即座に言葉を突き刺す俺。マリーは呆れた様子で胸の下で腕を組んだ。


「あなたのツッコミが一番目立ってますわ」

「あ……」


 気付けば通行人の皆さんの視線が痛い。しまったついいつもの調子でツッコんでしまった。大声で露出とか言ったらそりゃ怪しいわな。


「馬鹿だなーミッチー。怪しまれるような行動は控えなきゃごくごく」

「酒飲みながら言うなよ! 言っとくけど俺以外のメンバーも十分怪しいからな!?」


 なんか俺ばっかり言われてるが、お前らだって十分おかしいじゃねえか。ていうかなんで俺ばかり言われてるのこれ納得いかない。


「マスター。とりあえず宿に入りましょう。本格的に人が離れてきました」

「そ、そうだな。警備隊もいるし、通報される前に行くか」


 俺はリープのあまりに堅実な提案に勢いよく頷く。今は一刻も早く室内に入ることが賢明だろう。


「よし。じゃあ私とミッチーが同室だな」

「よしじゃねえよ! 普通に男子と女子分けだから!」

「ミッチーだけ部屋が広くてずるいじゃないか」

「ぐっ……」


 こいつ。ティーナのくせに微妙に痛いとこ突きやがる。いやしかし年頃の娘が男と同室ってのはどうよ。そりゃ何もせんけどさ。


「まあまあ。じゃあくじ引きで決めようぜ! 当たり引いた人がミッチーと同室ね!」

「勝手に決めんなよ! 俺の人権は!?」

「そんなものドブに捨てましたわ」

「ひどくね!?」


 マリーのあんまりな一言にツッコミを入れる俺。しかしもはや誰も俺の話は聞いておらず、皆リアの右手に握られたくじ引きに夢中だ。……ていうか妙に殺気立ってません?


「ではわたくしから行きますわ! どりゃあああああああ!」

「くじ引きってそんな気合い入れるもんだったっけ!?」


 濃い顔になりながら気合い十分でくじを引くマリー。しかし引いた紙の先は真っ白だった。これはハズレじゃねーのか?


「はずれー。じゃあ次リープっち」


リープが当たりますように。リープが当たりますように……。そう心の中で呟き続ける俺。正直リープ以外のメンバーと同室とか頭痛のしすぎで死ぬかもしれんからな。


「残念。ハズレのようです」

「くっそがー! 嫌な二択だなもう!」


 露出狂と酒豪か……どっちにしても地獄しか見えねえ。いや、酒飲ませとけばいいんだからリアの方がまだマシ―――


「お、当たったな」

「ちえー。じゃあ同室はティーナっちだぬぇ」

「ちくしょうめが!」


 俺は運命を呪い、四つん這いになって石畳の地面を叩く。街の人々はそんな俺からさらに距離を置き。気付いた俺はすぐに皆を連れて逃げるように宿屋に入るのだった。


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