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第58話:自問自答

 結局あれから数日間テックアーツには滞在し、魔王城は次の街の近くにあることが判明した。複数人に確認も取れたし確かな情報だ。


「リープ。お掃除ロボットとの別れは済んだのか?」


 宿屋の入り口でリープへと尋ねる俺。随分仲良しだったみたいだしな。別れはさぞつらいだろう。


「お別れは言いません。何故なら私はいつかこの街に戻ってくるからです。彼女も掃除をして待っていると答えてくれました」

「……そうか」


 今はもう、リープの言葉を強く否定はしない。俺は気付いてしまった。

 心は生まれた赤ん坊にだけ宿るもんじゃない。何にだって心は宿ることがあるんだ。あのお掃除ロボットのように。

 そして―――


『ランハーにとって異物でありバグであるこいつらも、同じ? なら、俺のやろうとしていることは―――』


 そこまで考えて、俺は頭を横に振る。バカな、何考えてんだ。俺の目的はモンスターのいない、優しかったランハーの世界を取り戻してハッピーエンドを迎えることだろう?

そう、だよな。

 繰り返される自問自答。そんな俺の視界にあいつらの姿が飛び込んできた。


「ねえねえティーナっち。酒って鼻から飲んだ方が美味かったりするかな」

「そうだな。裸も後ろから見るのと前から見るのでは趣がまるで違うからな」

「そもそも鼻で飲む意味あるんですの? どうせなら耳から飲みなさいな」

「あ、頭痛くなってきた」


 あいつらこんな時に頭痛のするような会話しやがって。

 いいや。なんかアホらしくなってきた。真面目に考えるのやーめた。今はとにかく先に進もう。


「とにかく行くぞ。さっさと魔王を倒してその頭痛のする会話を止めさせてやる」

「そうだよね。ミッチーはケツ穴から飲む派だもんね」

「勝手に人の属性にごついの足さないでくれる!? そんなこと一度もしたことないんですけど!?」


 慈愛に満ちた目で俺を見るリア。やめろその顔腹立つ。こんな時だけ女神っぽい表情してんじゃねえ。

 俺は頭をボリボリと掻くとさっさと宿屋の前を出発した。こいつらに付き合ってたら日が暮れちまう。


「とにかく行くぞ。次の街は魔王城の近くだ。気を抜かないようにな」

「そうだね。抜くのはナニだけでいいもんね」

「ナニって何かな!? いかがわしいやつじゃないよね!?」


 突然素っ頓狂な事を言い出したティーナにツッコミを入れる俺。ティーナは頭に疑問符を浮かべて首を傾げた。


「もちろんハリセンのことだが?」

「あ、ああ、そう。ならいいんだ」


 なんだよもう。下ネタかと思ったの俺だけかよ。なんか惨めになってきた。


「あれれ~? ミッチー何を想像しちゃったのかにゃ? えっち」


 ニヤニヤしているリアは後でチョップをかますとして、とにかく今は次の街に急ごう。一刻も早くこの世界を正常な、俺の愛したランハーの世界に戻すんだ。

 でないと俺の精神がもたない。

 俺はあいつらを置いていくくらいの勢いですたすたと先を急ぎ、「ちょ!? おいてかないでよぉ!」というリアの涙声を背中に受けながら次の街へと向かって足を進めた。

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