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第57話:涙

 リアに襲い掛かる死神の鎌。咄嗟にリープはリアと死神の間に割って入った。


「リア様!」

「リープっち!?」


 リアを庇うように両手を左右に広げて死神に立ちふさがるリープ。死神は一度その鎌を引くと今度はリープに狙いを定めて再び横薙ぎに振る。しかしその鎌がリープの首をとらえようというその刹那、お掃除ロボットがリープの体を突き出した。


『オソウジシマ、ス……』

「お掃除ロボットさん!?」


 突き出される形になったリープは倒れ、お掃除ロボットの首が飛ぶ。俺は即座にハリセンを振りかぶって死神に叩きつけた。


「急にガチな命の取り合いしてんじゃねーよ!」

『ギアアアアアア!?』


 俺のツッコミを受けた死神は影から引きずり出され、近くの山に墓標のごとく突き刺さる。あいつが改心してどうなるのか想像もつかないが、それより今は―――


「お掃除ロボットさん……」


 リープは切れてしまったお掃除ロボットの頭を抱え、眉を顰める。その瞳は相変わらず純粋に輝き、その奥にある感情まで俺の中に流れてくるようだ。

 リープはその胸にお掃除ロボットの頭を抱くと、俺へと顔を向けた。


「マスター。もうこのお掃除ロボットさんは話しません。動きません。今私の中に正体不明の感情が渦巻いています。マスター、この感情はなんですか?」

「それは―――そのほっぺに流れてるもんが答えだろ」


 俺はリープの頬に流れる涙を見つめ、奥歯を噛みしめながら答えを返す。くそ。何が勇者だ。結局被害者を出しちまったじゃねーか。


「マスター。お掃除ロボットさんに感情は本当になかったのでしょうか。私を助けたのも、ただの偶然なのでしょうか?」


 リープは涙を溜めながら俺を見上げる。純粋すぎるその瞳から逃げるように目を背けた俺は、慎重に言葉を選んだ。


「確かに、掃除のために移動した先にたまたまリープがいて押し出されたってとらえることもできるだろ。でも……リープはそうは思わねえんだよな?」

「はい。やはりお掃除ロボットさんには、意思があったように思えます」

「なら、そう思ってやればいいんだ。その上で悲しんでやればいい。俺も今すげぇ悲しいし悔しいよ。きっとこの感情が答えなんだろうな」

「マスター……」


 切ない表情で俺を見上げるリープ。次の瞬間聞き慣れた機械音が響いた。


『オソウジシマス!』

「ひぁっ!?」


 びっくりしてお掃除ロボットの頭部を放り投げるリープ。お掃除ロボットはその頭部を自分でキャッチすると、何事もなかったかのように自分の首に取り付けた。


『オソウジシマス。オソウジシマス……』

「お掃除ロボットさん! 無事だったんですね!」


 リープは満面の笑顔で涙を散らしながらお掃除ロボットに抱き着く。お掃除ロボットは少し動きずらそうにしながらも、そんなに嫌がってはいないように思えた。


『オソウジシマス』

「はい! 沢山お掃除しましょう!」


 うんうんと頷きながらお掃除ロボットに抱き着いているリープ。俺はボリボリと頭を掻きながらリープへと話しかけた。


「よかったなリープ。まさか頭部が着脱可能だったとは」

「はい! 本当によかったです!」

「―――っ」


 俺に向けられたリープの初めての笑顔に、一瞬思考が停止する。こいつ、こんな表情できたんだな……


「うおらっ!」

「いでぇ!?」


 突然俺の後頭部に鋭い痛みが走る。どうやらリアが飛び蹴りを入れてきたらしい。


「いきなり何すんの君は!?」

「ラブコメの波長を感じた」

「理由が斬新!」


 こうしていつも通りリアにツッコミを入れる俺。リープはいつまでも嬉しそうにお掃除ロボットに引っ付いていた。


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