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第55話:お掃除ロボット

「―――で、宿屋に向かってたはずなのに何でこうなってるわけ?」


 今俺の隣ではリープが美味そうに巨大なパンをぽろぽろ零しながら食べ歩いている。その後ろからは一台の女性型掃除用ロボットが付いてきていて、リープが食べこぼしたパンを律儀に掃除している。

 いや何この行進。リープなんで掃除用ロボット引き連れてんの?


「マスター。このパンはボリュームが少し多いですが味は確かです。マスターも食されることをおすすめしまふ」

「こぼしてるこぼしてる! いっぱいこぼしてる!」


 リープはパンを食べながら話すもんだから、パンくずがガンガンこぼれている。その度にお掃除ロボットはその手を器用に動かして塵取りとホウキでパンくずを掃除した。


『オソウジシマス。オソウジシマス』

「恐れ入ります。後でお礼をしなければなりませんね」


 リープは掃除してくれているお掃除ロボットに対してぺこりと頭を下げる。俺はボリボリと頭を掻いた。


「その心意気は大事だが、お礼は別にいいんじゃねえかな。そいつにとっちゃ仕事だし、冷たい言い方をするとロボットだからな」

「ロボットにお礼は不要なのでしょうか?」


 リープは不思議そうに首を傾げながら俺に対して質問する。答えに困るが……俺は数秒考えた後口を動かした。


「物を大事にするってのは大事だが、まあお礼ってのは相手に心がある場合にすべきことだからな。このロボットに心とか感情はないし、お礼してもあまり意味はねえよ」


 冷たい言い方だが実際そうなのだから仕方ない。このロボットを大事にするのとお礼をするのは全然別次元の話だからな。リープがお礼をしたいと思うのは良い事だが意味はない。


「それでも、私はお礼をしたいと考えています。それは間違っているのでしょうか?」


 リープはさらに不思議そうに反対側に首を傾げる。ううむ。そこまで強く思ってるなら否定するのもよくねえよな。


「そうだな……お礼というか、後でそいつのボディを掃除してやったらどうだ? 見たところチリや埃だらけみたいだしな」


 お掃除ロボットは自分自身を掃除することはできない、か。なんか皮肉な話だな。しかし今のリープのように誰でも分け隔てなく接しようとする心は大事だよな。俺も肝に銘じておこう。


「名案ですマスター。是非そうします」

「ん。リープは偉いな」


 俺は小さく笑いながらリープの頭を撫でる。リープはこれまた不思議そうに首を傾げた。


「マスター。掃除は偉いのですか?」

「掃除というか、してもらったことに対してきちんと何かを返そうとする気持ちが偉いってことだよ」

「???」


 リープは眉間に皺を寄せて難しそうな顔をしている。こんな顔初めて見たな。なんか最近表情が豊かになってきたような気がする。


「ともかく、私はあなたを掃除します。よろしいですね」

『オソウジシマス。オソウジシマス』

「か、会話が成り立ってねぇ」


 リープは一生懸命お掃除ロボットに話しかけるが、肝心のお掃除ロボットはテンプレートに沿った言葉しか発さない。それはまあ当然なんだがリープが諦めないもんだからだいぶカオスな空間になっちまったな。


「掃除の許可を頂きたいのですが」

『オソウジシマス』

「いえ、あなたではなく私がお掃除します」

『オソウジシマス』

「そうです。私がお掃除します」

「微妙に会話が成り立っている。奇跡かよ」


 こくこくと満足そうに頷くリープ。その顔は相変わらずの無表情だが、心なしか嬉しそうに見えた。

 この二人(?)の関係になんだかほっこりしていると絹を裂くような女性の悲鳴が聞こえてきた。


「ミッチー大変! 街中にモンスターが紛れ込んだって!」

「なにぃ!? あれだけのセキュリティをかいくぐったのか!?」


 リアの言葉に驚きながら返事を返す俺。とにかく俺達とお掃除ロボットは女性の悲鳴が聞こえた方向へと急いで駆け出した。


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