第52話:機構都市テックアーツ
「ここが機構都市テックアーツ……ですか。かなり大きな都市のようですね」
リープは目の前に聳え立つ壁を見上げてぽつりと言葉を落とす。
俺は見上げているだけで首が痛くなりそうな街の外壁を見つめながら腕を組んだ。
「この辺りじゃ一番の街だからな。モンスターを街に入れないためのこの外壁も立派なもんだ。まあランハーの世界には無かったもんだがな」
ランハーの世界のテックアーツは自動化された機械都市ではあったものの、こんな外壁は存在していなかった。これも魔王の誕生によってモンスターが発生したせいだろう。テックアーツの技術力を考えればこれくらいの外壁を作るのは容易に想像できるし自然なことだ。自然なことだが……
「くそっ。どんどん元のランハーの世界から遠ざかっていきやがる!」
俺は地面に四つん這いになりながら拳で土の地面を殴る。シ―プレスで情報を集めたところ魔王城はかなり近くにあるらしく、モンスターも強力になっているらしい。そりゃテックアーツだって防衛線を張るだろうってのはわかるが、元々は現代風のちょっとお洒落な街だったんだがな……これじゃ要塞と同じだぜ。
「まあまあ。とにかく街の中に入ろうよ。この外壁の中にはミッチーの愛したランハーの世界が広がってるかもよ?」
「一番最初に世界観をぶっ壊した女神に言われてもな」
「ぐうの音もでねぇ」
ぐへぇーと言いながら苦笑いを浮かべるリア。俺は笑いながら立ち上がると膝に付いた土を払った。
「まあ、確かにリアの言う通りだな。入ってみないと始まらねえし、魔王城の詳しい場所も知りたい」
シ―プレスでは「魔王城らしきものを見た」程度の情報しか得られなかったからな。この街でも情報収集をする必要があるだろう。
「で、街に入るにはどうするんだい? 壁よじ登る?」
「落ちたら死ぬよ!? 何メートルあると思ってんだ!」
リアは口をωの形にしながら能天気に質問する。いやいや。ちょっとした高層ビルより高いんだぞこの外壁。どういう発想してんだこいつは。
「なるほど。では落ちないようにするにはどうするか考えなければいかんな」
「入り口を探すことを考えなきゃいかんのじゃない!?」
腕を組んでうんうんと頷きながら素っ頓狂な事を言い出すティーナ。こいつら発想がおかしいよ。まあ見た目からして普通のパーティではないんだけど。
「マスター。入り口らしき門があちらにあります。そこに行けば良いのではないでしょうか」
リープは視界から右側に見える門を指差して俺に提案する。言われてみれば確かに馬鹿でかい門があるな。番兵もいて物々しい雰囲気だが、ここは通してもらう他ないだろう。俺は強面の番兵に恐る恐る話しかけた。




