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第51話:テックアーツへの道、心の在処

「マスター。次は一体どんな街なのですか?」


 シ―プレスを出た街道の途中で隣を歩くリープは首を傾げながら俺に尋ねる。俺は街道の先を見つめながらその質問に答えた。


「次は機構都市テックアーツだな。魔術機構の研究が盛んな街で、街の中のほとんどが自動化されてるまあメカメカしい街だ。無機質なデザインはランハーの世界観に合わないって意見もあるが、俺は結構好きな街だぜ」


 基本的に牧歌的というかのんびりとしたランハーの世界にあってテックアーツは少しだけ特殊な街だ。街のほとんどが自動化されているということは人が少ないということでもあり、街全体の機械的なデザインも発売当時は批判の対象になったりもした。

 俺はランハーの世界に魔術機構があるのは自然なことだと思うし、そんなに批判する気にはならなかったけどな。


「機械的な都市なのですね。……で、美味しいものはあるのですかじゅるり」

「うん。質問しながら涎垂らすのはやめような?」


 俺は取り出したハンカチでリープの口を拭う。リープはその純粋な眼で俺を見返した。


「それでマスター。その街の食のレベルはいかほどでしょうか」

「まあ、普通なんじゃねえか? 自動化されてるからシンプルな料理は多いけど、まずくはないと思うぜ」

「そう、ですか」


 普通という評価に明らかにがっかりとしているリープ。まあシ―プレスの食事が美味しすぎたからな。そうそうあれを越えることはできないさ。

 それにしても―――


「リープ。お前随分と感情豊かになったよな」


 生まれた直後は機械的な対応ばかりで……それは今もそうだが、なんとなく心というか、感情というものの芽生えを感じる。相変わらず無表情なのに不思議なもんだな。


「感情豊か……ですか。それはどういった評価なのでしょうか?」


 リープは純粋で透き通った瞳で真っ直ぐに俺を見つめる。俺はうっと言葉に詰まった。

 どういった評価と言われてもな……人の心の説明なんかできんぞ。俺は学者じゃねえんだ。


「なんというか……そう! 人間っぽいっていうか、とにかく話してて楽しくなるような感じになったというか、そんな感じだ」

「ミッチー説明下手だね」

「うるせっ! だったらリアが説明してみろよ!」


 口をωの形にしながら俺に言葉のナイフを刺すリアに反論する俺。リアはしょうがないにゃあといった様子でリープへと近づいた。


「リープっち。つまりリープっちは今良い感じってことさ!」

「お前も説明できてねーじゃねえか! 何一つ情報が増えてねえよ!」


 ドヤ顔でリープへと解説したリアにツッコミを入れる俺。こいつほんと人のこと言えねえじゃねえか。


「良い感じ、ですか。それはどういった感じですか?」

「うっ」

「そらそうなるわな」


 リープからの質問に困った様子で後ずさるリアを冷めた視線で射抜く俺。ていうかこのリープの質問に答えなんかあるのか? 少なくとも俺は知らんぞ。


「まあとにかく、次の街に行こうぜリープ。人の心は複雑だ。ちょっとずつわかっていけばいいんだよ」


 俺は頭をボリボリと掻きながらリープへと言葉を送る。回答にはなってないと思うが、今言ってやれるのはこれが限界だ。


「心……私に、心はあるのでしょうか」

「…………」


 リープは胸元に手を当てながら少しだけ俯く。俺はその問いにすぐ答えることができず口を噤んだ。


「それよりお腹が空きましたわ! さっさと次の街に向かいますわよ!」

「そうだね。人がいないと露出もできないし」

「ちょ、お前ら勝手に行くなって! あと露出は諦めろ!」


 先にずんずんと歩いていってしまったマリーとティーナを追いかけ、俺とリアとリープは街道を駆け出す。

 こうして機構都市テックアーツへの旅路は少し早足で進んでいった。


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