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第49話:海産物大宴会

「さあ! 我が町自慢の海産物盛り合わせだ! 遠慮なく食ってくれ!」

「おお! すげえ量だな!?」


 元漁師のおっさんが両手を広げた奥には大量の刺身やら海鮮鍋やらが並び、俺は思わず感嘆の声を漏らす。シ―プレスの危機を救った俺たちはすぐ街の中央にある宴会場に招かれ、町民達から盛大なもてなしを受けていた。いや、もてなしというかこれはもはや宴会と言った方が良いだろう。


「おおお……っ。マスター。これはとてもおいふぃれふ」

「うん。とりあえず食べながら話すのはやめような?」


 俺は口いっぱいに刺身を詰め込んだ状態で話すリープの頭を撫でながら苦笑いを浮かべる。そして宴会場の中心では当然のようにリアがくるくると回りながら酒を巻き散らかしていた。


「ほーれ飲め飲めー! 勝利の宴じゃあ!」

『ひゅうーっ! やるな姉ちゃん!』

『この酒うまっ!?』

「あ、あはは……盛り上がってらっしゃる」


 “勇者様ご一行バンザイ”と掲げられた横断幕の下で俺は控えめにお茶を飲みながら刺身をちびちびと食べる。いや、しかしマジで美味いぞこれ。赤身とか白身とか色々あるし魚の名前もわかんねーけど、美味い事だけはわかる。さすがに特産品と言われるだけのことはあるな。


「ふむ。ここらで一つ変わった料理を食べてみる気はないかいみっちゃん」

「変わった料理って……ティーナが作るのか?」


 唐突に話しかけてきたティーナに対し、ジト目になりながら返事を返す俺。

 ティーナは胸の下で腕を組みながら何故か煮立っている鍋の前に立っていた。


「ふむ。私が作るというか私自身が食材だな。パンティをしゃぶしゃぶするという新しい料理で―――」

「今すぐハリセンで吹っ飛ばされたくなかったら鍋をしまえ」

「何故!? ブラの方が良いと言うのか!? そっち派だったのかみっちゃん!」

「どっち派でもねえし派閥の存在も知りたくねえよ! いいから大人しくしてろ!」


 人が戦闘で疲れてる時にこいつはもう……ていうかなんでピンピンしてんだ化け物かよ。……いや、まあ宴会場の真ん中でバカ騒ぎしてるあの女神様も大概か。


「ああーっ! この刺身と酒の組み合わせ! これこそ神が与えたもうた最大の恩恵よ!」

「女神がそれを言うとシャレにならないからやめような!? 新しい宗派が出来ちまうだろうが!」


 確かに酒と神様は密接な関係にあるかもしれんが、リアが祀られるなんて考えたくもねえ。嫌だぞ腹出して酒瓶片手に寝てる偶像とか。その偶像を崇拝してる様子も見たくねえ。


「まったく……これじゃ全然休む暇もねえな。まあ楽しいからいいんだけどよ……なあマリー?」

「へぁっ!? あ、ああ、そうですわね。とっても美味しいですわ」

「???」


 隣に座っているマリーは何故かお茶の入ったコップを両手で持った状態で固まっており、そもそも俺との会話も成り立っていない。まさか、どこか具合でも悪いんだろうか。


「おい、大丈夫か? 熱でもあるんじゃねえだろうな」


 俺が手を伸ばしてマリーの額に触れると、マリーは「ひゃい!?」と声を出してさらに硬直する。ていうか熱っ!? こいつの額マジ熱いんですけど!?


「熱あるんじゃねえか!? やばいな、宿にすぐ連絡して―――」

「だっ大丈夫ですわ! これは、その、抱っこの余韻が残っているというかなんというか……とにかく大丈夫ですわ!」

「お、おう。ならいいんだけどよ」


 ぐっと眉間に力を込めて強く否定するマリーに気押され、口を噤む俺。抱っこの余韻って、歩く時そんなに揺らしちまったかな俺。


「マリー……もしかして酔った?」

「はぁっ!? あ、あなたに酔ったとか、よくそんなこと言えましゅわね! 誰があなたなんかに酔うものですか! 身の程をわきまえなさい!」

「いや。運ぶとき揺らしちまったかなって意味なんだけど……」


 俺そこまでナルシストじゃないよ? どういう勘違いだよそれ。


「はぁっ!? わかってますけど!? いい加減にしなさいこの馬鹿勇者!」

「いでえ!? なんでチョップ!?」


 マリーはぷくーっと頬を膨らませながらそっぽを向いてしまい、俺の方に顔を向けることはない。一体何がどうなってんだか、さっぱり意味がわからないよ。


「いやー女心は複雑だねえ兄ちゃん。ま、勇者としてそっちの方も頑張りな」

「はぁ……」


 おっさんはニヤニヤしながらなんか言ってくるし。頑張るって何をよ。誰か説明してくれ。


「ミッチー! ミッチーも一緒に飲もおおおおおお!?」

「うるせっ!? ていうか酒くせえから寄るな!」


 俺は酒まみれになりながら駆け寄ってきたリアを片手で制しながら、横目でマリーの様子を伺う。結局マリーはその日謎の熱が引かなかったのか、ずっと宴会場でもじもじしているばかりだった。

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