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第48話:お姫様抱っこ

「これでラストだ! 海賊船のくせに妙に小奇麗すぎんだよ!」


 轟音と共にシャボン玉に包まれた最後の海賊船が吹き飛ばされ、遠くの山に突き刺さる。あの海賊船に乗っている海賊たちも明日の朝には改心していることだろう。


「いやー。見事なツッコミ……いやいちゃもんだったねぇ」

「人の頑張りを“いちゃもん”とか言わないでくれる!? これでも倒れそうなんですけど!?」


 正直言ってもう一生分ツッコミを入れた気分だ。リープのサポートがあったとはいえ万単位の軍勢を吹き飛ばすのはさすがに疲れたぜ。

 いや、それよりも今はマリーが心配だな。


「マリー! 大丈夫か!? 腹減ってないか!?」

「最初に言う言葉がそれですの? 全く、無粋な男ですわ」


 マリーは不満そうな顔で俺を見つめる。ええと、俺何か間違ったかな。


「えっと、すまん。……ありがとう?」

「惜しい。でも違いますわ」


 やばい。段々マリーのほっぺが膨らんできてる。なんだかわからんがお嬢様はお怒りらしい。考えろ、考え―――あっ。


「そっか。そうだよな。さすがだよ……先生」

「ふふっ。当然ですわ、勇者様」


 マリーは珍しく優しい笑顔を浮かべ、俺を真っ直ぐに見つめる。吸い込まれそうなその瞳と笑顔に俺は一瞬呼吸を忘れた。


「マスター。敵の殲滅が完了した以上、ここはメンバーの休養を優先すべきと思われますが」

「おっおお、そうだな。この街特産の海産物でも食ってくか」


 話しかけてきたリープに返事を返しながら、俺は海の方に視線を向ける。

 幸い戦闘のほとんどはハリセンでカタがついたから海の汚染などは心配なさそうだ。これならすぐ元の街の姿に戻れるだろう。


「ではみっちゃん。今回最大の功労者を労うべきじゃないのかね?」


 ティーナは胸の下で腕を組んで俺に向かって提案してくる。最大の功労者はマリーだろうが、労うってどうすんだよ。


「わからないかい? もちろんお姫様抱っこさ」

「なんで!? 普通におんぶでいいだろ!」


 確かに休める場所まで移動する必要はあるが、運び方は自由だろ。体の負担を考えればタンカの方がいいくらいだ。


「わかってないなぁみっちゃん。お姫様抱っこはロマンなんだよ? 露出と同じくらい尊い」

「尺度がよくわかんねーよ! マリーだって嫌だろ!?」

「わ、わたくしは別に。どうしてもと言うならやらせてあげないこともないですわ」

「ええええ……」


 強く否定しないよこの子。どういうことなの。お姫様抱っこ流行ってんの?


「ほらほら! 早くしなよミッチー! 次あたしね!」

「その次は当然私だ」

「私もよろしいでしょうかマスター」

「どゆこと!? なんで立候補制になってんだよ!」


 最大の功労者を労うんじゃなかったでしたっけ!? もうぼく意味がわからないんですけど!


「本当は全員同時にしてほしいところだが、ここは譲歩しよう。感謝したまえ」

「こんな傲慢な譲歩聞いたことねえよ! ―――ああもう、仕方ねえ!」

「きゃっ!?」


 俺はもう半分やけくそになりながらマリーをお姫様抱っこする。重さはそれほどでもないが、疲れた体にはだいぶきついぞこれ。


「よし、このまま急いで―――」

「だめですわ。ゆっくり行きなさい」

「何故に!? 疲れるから早く行きたいんだけど!?」


 マリーの意味不明な言葉にツッコミを入れる俺。マリーはそっぽを向いて耳を赤くしながら呟いた。


「理由は……秘密ですわ。とにかくゆっくり行きなさい」

「えええ……わかったよ、もう。これくらいでいいか?」

「よいですわ」


 まあ、今回一番頑張ったのはマリーだし、ここは言う事を聞いておこう。

 こうして俺はマリーを抱えた状態で街の宿屋へと歩いていく。

 マリーは何故かずっとそっぽを向いた状態でしっかりと俺の服を掴み、その耳を赤く染めていた。


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