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第37話:賞金稼ぎの街ハンターシフト

「ねーねーミッチー。次はどんな街なの?」


 リアは街道のど真ん中でいきなり背中に乗っかってくる。

 俺はもう振り払うのも面倒になってそのまま大きくため息を落とした。


「次の街は賞金稼ぎの街“ハンターシフト”だな。良く言えば活気ある街だが、悪く言えば荒くれ者が多い街でもある。あんまり目立たないようにな」


 治安が悪いってほどでもないんだが、賞金稼ぎってのは頭に血が上りやすい奴が多いからな。トラブルを避けるためにも目立たないに越したことはないだろう。


「ふぇー。活気ある街かぁ。楽しみだにぇ」


 それに、先のスラスターとの闘いで気付いたことがある。

 リアは酒を自由に出すことが出来るし、リープのサポートがあればその水圧で十分武器になるが、逆に言えばリープがいなければ戦うための武器を持たないという事だ。

 旅をしている以上危険はつきもの。ましてモンスターがいるこの世界では致命的と言ってもいい。

 基本は平和な世界だから大丈夫だとは思うが、まあモンスターや対人トラブルに気をつけた方がいいのは確かだな。


「あー。活気ある街ならおつまみも良いのがありそうだなぁ。早くお酒のみたい」

「……いや。余計な心配だったか」


 口をωの形にしながらぐでーっとしているリアの横顔を見ていると、真剣に心配しているのが馬鹿らしくなってくる。よし、こいつはほっとこう。女神だしどうにかなるだろ。


「……はぁ」


 とは言いつつも、なんとなく不安を抱えている自分がいる。俺は微妙に心配性な自身の性格を呪いながら街道を歩く。

 一方のリアは能天気な笑顔を浮かべながら、楽しそうに俺に乗っかっていた。





 街道の先に見えてきたのは砂に埋もれるように存在している砂漠の街だった。行き交う人々は皆強面の男や怪しい魔術師の女など物騒な顔ぶればかりだ。

 俺は周囲を眺めながら皆へ警告した。


「さっきも言ったがここの連中は気性が荒い。下手な行動はすんなよ」

「わかった。暑いからとりあえず脱いでいいか?」

「お前その下全裸だよね!? 脱いでいいわけないよね!」


 ティーナのまさかすぎる発言にツッコミを入れる俺。こんなところで発光したらモンスターと間違われてタコ殴りにされるわ。


「わかりましたわ。まあ問題ないでしょう。わたくしの振る舞いには高貴さが漂ってますし」

「いや。今のところ危うさしか漂ってねえな」


 露店に置いてある杖をぶんぶんと振り回しながら店主に睨まれているマリーに言葉を突き刺す。いいからその杖置きなさい。店主怒ってるから。明らかにマジでキレちゃう五秒前だから。


「マスター。あの方のお髭は何故あんなに長いのでしょうか。筆代わり?」

「あ、うん。疑問を持つのはいいことだね。でも人様の髭を引っ張るのはやめような」


 俺は躊躇いなく強面の魔術師の髭を引っ張るリープの手を下げさせてついでに鬼のようなスピードで頭を下げる。同じようにマリーの手から杖を離させ、店主にペコペコと謝罪した。


「頼むから君たち大人しくしてくれる!? ここは荒くれ者が多いって僕言ったよね!?」


 俺は半泣きになりながら三人に向かって懇願する。すると三人は同時に一つの方向を指差した。


「「「じゃああれは大丈夫なのかい?(ですの?/ですか?)」」」

「へっ?」


 三人が指さした方向に視線を向けると、ガッチガチのムッキムキの男に腕を回しているリアが視線に映る。男は明らかに怒っており、リアは能天気に笑っていた。

 わぁ仲良し~ってバカ! 何やってんのあの子!?


「ねえねえ~。この辺で名産の酒のつまみってないの? お姉さん知りたいにぁ」

「ああん!? なんだいきなり! てめえ見ねえ顔だな!」


 相手の男は丸太のような腕に血管を浮き上がらせながらリアを睨みつける。リアは相変わらず楽しそうに笑った。


「そりゃそうだよ~。今この街に着いたばっかだもん。で、つまみどこ?」


 ぱたぱたと手を振りながら「やだね~もう」と近所のおばちゃんのような気さくさで話すリア。俺は眩暈を感じてフラフラした。


「へぇ、旅人ってわけかい。じゃあこの街の掟の通り、歓迎の儀式を受けてもらおうか」

「歓迎の儀式!? なになに、たのしそー!」


 リアは眼をキラキラさせながらぴょんぴょんと飛び跳ねる。男はその巨大な手で腰元に手を伸ばした。まずい。腰元の剣を取り出す気じゃねえのか!? あのままじゃリアがつまみになっちまう!


「ちょっ待っ―――!」


 俺はリアの方向に足を伸ばして駆け出すが、明らかに間に合わない。男は腰元から一本の酒瓶を取り出し、叫んだ。


「こいつで大酒飲み対決だコラァ! 覚悟しろや!」

「……へっ?」


 俺は予想外の男の言葉に呆然とし、思わず駆け出していた足を止める。

 リアは相変わらず楽しそうな笑顔で「おおーっ! いいねぇ!」と立てた親指を男に突き出していた。


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