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第36話:さらば学園都市

「やっぱ寂しいっスよー。もうちょっとだけ残って欲しいっス」

「んだぁぁ。引っ付くなクリス! 俺たちは大事な旅をしてるんだよ!」


スクレスニアを出発する朝。俺は腰にしがみついてくるクリスを懸命に振り払う。そりゃ我ながら短すぎる滞在時間だとは思うが仕方ないだろう。魔王討伐が最優先だ。


「そうだぞ。私たちは世界中の人々に露出してまわるという大事な旅をしてるんだ」

「いつそんな野望を!? ちげーよ魔王討伐が目的だろが!」


腕を組みながら堂々と嘘をつくティーナにツッコミを入れる俺。いや、こいつの場合嘘というより本気で考えてそうで嫌だな。何人の目ぇ潰す気だよ。


「そうだねー。次の街ではどんな酒のつまみに出会えるかなぁ」

「話聞いてたかなぁ!? 魔王倒すんだって言ってるよね!?」


リアまでおかしなことを言い出しやがったじゃねえか。いや。リアがおかしいのはいつものことか。


「そうですわね。世界中の人々にわたくしの偉大さをわからせるには魔王討伐が手っ取り早いですわ」

「合ってるけど微妙に違う! この世界を元に戻すために倒すんだよ! 目的バラバラか! 」


ふむむと曲げた指を顎に当てながら難しい顔でふざけたことを言うマリーに言葉をぶつける。まともな奴はいねぇのかまともな奴は。


「マスター。魔王討伐の命令了解しました。全力で任務に当たります」

「あ、うん。ありがとなリープ。焼きそば食いながらじゃなかったら俺も喜んでたよ」


どうやら相当気に入ったのか、リープはどこからか調達してきた焼きそばを食べながら決意表明する。飛んでる飛んでる。食べながら喋るから焼きそばが飛んでるよ。口の周りソースすげぇし。


「あーもうほら、口の周りちゃんと拭きな」

「むぐ」


俺はハンカチを取り出してリープの口を拭う。まさか異世界に来て初めて人の口を拭くことになるとは思わなかったぜ。


「なんか光輝さんオカンみたいっスね」

「誰がオカンだ! ハリセン勇者だ!」

「オカンの方がマシな感じするけどにぇ」


リアは口をωの形にしながら俺とクリスのやりとりにコメントする。いやまあ確かにハリセン勇者ってオカンより意味わからんけどさ。そこまでハッキリ言うことなくない? 泣くぞ。


「マスター。日暮れまでの時間を計算しますと、そろそろ出発すべきかと思われます」


くいくいと袖を引っ張る感覚。その方角に視線を向けるとリープが相変わらず眠そうな眼で進言してくる。しかし確かに言う通りだ。モタモタしてたら日が暮れてここでもう一拍になっちまう。


「はっ。これは無駄話をすればもう一拍してくれる流れっスか!?」

「そうだぞクリス。がんばれ」

「なに応援してんのぉ!? 早く出発するんだっつの!」


ぐっと親指を立ててクリスを応援するティーナにツッコミを入れる俺。ダメだ。無理矢理でも出発しないといつまでもここ動けねえぞ。


「じゃあ私が半ケツ状態でプールの半分くらいの距離まで潜水するはめになった話をしていいっスか?」

「なにその話超聞きたい! でも行く!」

「ああん。いけずっスよぉー」


クリスは口を3の形にして抗議してくるが、もうこうなったらしょうがねえ。強硬手段だ。俺は腰にへばりついているクリスを無理矢理引き剥がして歩き始めた。


「じゃあな、クリス! 短い間だったけど楽しかったぜ!」

「ばいばーい!」

「さよならですわ!」

「ちゃんとパンティ履くのよー!」

「クリス様。ありがとうございました」


それぞれの挨拶(?)を済ませ、俺たちはスクレスニアを後にする。

クリスは右手を伸ばし声を張り上げた。


「魔王倒して時間ができたら絶対戻って来てくださいよ!? 約束っスからねー!」

「おう! クリスも元気でな!」


俺は手を伸ばしてくるクリスに応えるように手を振り、スクレスニアから離れていく。

新たな旅路には青空が広がり、これから起こる波乱など微塵も感じさせなかった。



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