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第34話:地獄絵図

「はぁっはぁっ。これで、ラストぉぉぉぉ! “口くせーんだよ!”」

『ピギャアアアアアアア!?』


 俺は残った最後のスラスターをハリセンで吹っ飛ばし、近隣の山に突き刺す。

 リアは口をωの形にしながらコメントした。


「いやー、相変わらずツッコミというよりいちゃもんだったにぇ」

「しょうがねーだろ。そんなにボキャブラリー豊富じゃねえわ」


 まして相手は数千を超える群勢だぞ。むしろ全員吹っ飛ばした事を称賛してほしいくらいだ。


「わたくしの大活躍によって敵は撃退できましたわね! まったく、相手になりませんでしたわ!」

「そうだね。“相手にならなかった”という点は同意するよ」


 俺は死んだ魚のような目でマリーを見つめる。お前基本敵を回復してただけじゃねーかこの野郎。まあ終盤はリープのサポートも切れて普通にパニック魔法で敵を無力化してたけど。


「それにしても……地獄絵図だな」


 近隣の山は大量のスラスターが突き刺さって墓標のようになっているし、街は酒臭い。溶けたゾンビの残骸はそこかしこにあるしパニック魔法によって綿になったスラスターがそこら中に浮いている。これ後始末どうすんだよ。


「心配ないッスよ。うちの教員は優秀ッスから、一晩あれば元通りッス」

「優秀すぎるだろ! むしろその人たちが戦った方が早かったんでない!?」


 当然すぎるツッコミをする俺。そういえば基本俺達しか戦ってなかったような気がするぞ。


「彼ら本来の仕事は生徒の保護っスからね。そっちを優先したんだと思うッス。まあそれも皆さんの活躍あってこそ。本当にありがとうッス!」


 クリスは深々と俺たちに頭を下げる。俺たちはただ暴れてただけのような気もするが、お礼を言われるのはやっぱ嬉しいな。


「お疲れ様でしたマスター。マスターのお仕事は敵を山に突き刺すことなのですね」

「えっ!? あ、いやー……違うんだけど間違ってもいないというか……うん、まあそれでいいや」

「???」


 煮え切らない俺の答えに首を傾げるリープ。ハリセンは聖剣だとかあれは浄化だとか言っても話が複雑になるだけだしな。まあ今はこの説明でいいだろう。


「それにしてもさー。リープっちって何者なん? ランハーにこんなキャラいた?」


 リアはリープに抱き着きながら俺に向かって質問する。小さいから抱き着きやすいんだろうが止めてやれ。リープ重そうだから。


「いや、ランハーにリープの元になりそうなキャラはいねぇな。そうなると……」

「かんっぜんにバグだにぇ。それを生み出すとはさすがマリーっち」

「あれ? わたくし今ディスられてます?」

「ディスられてナイヨ」

「よかった」


 俺は無表情のままマリーの追及を回避する。まあこいつの膨大すぎる魔力なら生命を生み出すくらい可能……なのか? いや、リープがどこか別の場所から召喚されてきた可能性もあるな。


「リープ。お前一体何者なんだ? どこから来たとか記憶はないのか?」


 俺はリープと視線の高さを合わせて質問した。リープの純粋で綺麗な瞳が俺を射抜く。


「この世界の最低限の一般知識以外の記憶は特にありません。私の中にあったのは“物を頂いた方を主人とすること”“自身にサポート能力があること”という認識のみです」

「まるで機械みてぇだな……いや、すまん。それは言い過ぎか」


 生身の女の子に機械ってのはねぇよな。しかしリープってこう感情が薄いというか表情が薄いからなんとなくアンドロイドっぽい印象を受けるんだよなぁ。案外本当にアンドロイドだったりして。


「にしても……腹減ったな。学食にでも行くか。やってないだろうけど」

「いや? やってるッスよ。あそこのおばちゃんは何があろうと営業を止めないポリシーがあるんで」

「スラスターの大群勢が来てるのに料理してたの!? 根性ありすぎだろ!」


 と、ツッコミつつも正直ありがたい。実は腹が減って死にそうだったんだ。喉も乾いたし、何より疲れた。


「いいねぇごはん! リープっちも一緒に食べよー!」

「食べる……了解しました。初めての経験ですが頑張ります」

「いや、頑張る必要はねえんだけどな?」


 こうして俺たちは倒した群勢を後にして学食へと戻っていく。ハリセンを腰元に収めた俺は、ようやく一息つくことができた。


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