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第22話:学園都市への道

「いやー遊園地楽しかったなぁみっちゃん」

「ソッスネ。地獄みたいで素敵だったね」


 俺は未だ脳内に残っている空飛ぶ変態の映像とラリったマリーの姿を思い出しながら、瞳の中の光を失う。

 その時背中に柔らかな感触が押し付けられた。


「楽しかったじゃーん! また行こうねミッチー!」

「のわっ!? だ、だから乗っかるなっつの!」


 突然後ろから抱き着かれた俺は動揺しながら注意する。なんか前より過剰に反応するようになった気がするな。


「だいたい―――痛ってぇ!?」


 突然ケツに走る破裂するような痛み。後ろを見るとマリーがぷくーっと頬を膨らませていた。


「なんか面白くありませんわ」

「人のケツ蹴っといてそれ!? 理不尽すぎるんですけど!」


 マリーのあまりに理不尽な理由にショックを隠せない俺。そんな俺の隣でティーナは腕を組みながらうんうんと頷いた。


「愛だな」

「愛じゃねえよ!? 痛えよ!?」


 こいつらの言っていることが何一つわからん。わからんが、ケツの痛みだけははっきり残ってるぞこの野郎。後でハリセンの刑だ。


「それよりミッチー。次の目的地はどこだい?」


 口をωの形にしながら訊ねてくるリア。なんでもいいから背中から降りろコラ。


「次の目的地は学園都市と言われる“スクレスニア”だな。魔法の研究が盛んで、魔法や剣術、一般教養など幅広い分野を学ぶことができる街だ」

「まあっ! 魔法の研究ですって!? それは黙ってられませんわね!」


 ぱぁぁと笑顔になるマリー。俺はジト目でその笑顔を見つめた。


「いや。すまんが黙っててくれ」

「何故ですのっ!?」


 ガーンという効果音を背負って驚愕するマリー。いや何故って、お前の魔法ってパニック魔法じゃん。そんなん学生に見せたら悪い影響がありそうだわ。マネできるとも思えんが。


「学生さんの街かぁー。じゃあ皆で学生服に着替えないとね!」

「なんで!? 別に普通でいいだろ!」

「だめだおー。郷に入っては郷に従えって言うっしょ?」

「俺たちはそもそも学生じゃねえから! それただのコスプレだから!」


 ほっぺをぷくーっと膨らませているリアにツッコミを入れる俺。いやまあ俺は元から学生服だが、いくらなんでもスクレスニアの学生服を揃える必要はないだろう。路銀の無駄だ。


「そうだな。私も学園には興味があるし、ここはひとつ皆で入学するとしようか」

「…………は?」


 ティーナさん今なんて? ちょっと何言ってるかわからないんですが。


「それいいねティーナっち採用! じゃあさっそくアタシ入学手続きしてくるねー!」

「待てぇぇぇぇい! 魔王討伐忘れんな!?」


 街道を走り出すリアに向かって手を伸ばすが、その手がリアを掴むことはない。

 ティーナはそんな俺の肩をぽんっと叩いた。


「まあ落ち着けみっちゃん。我々は魔王討伐のために入学するのさ」

「全然繋がらないんですけど!? ハリセンあれば倒せるだろ魔王!」

「わからんぞ? むしろ魔王がハリセンかもしれん」

「何その魔王!? 生命ですらねえし斬新すぎるわ!」


 ティーナの謎理論に振り回され、声を荒げる俺。いやすでにリアは米粒くらいのサイズになってるし止められないかもしれんが、納得できんぞ。俺はさっさと魔王を倒してハッピーエンドを迎えたいんだ。


「学園に入学できるなんて最高ですわ。夢のよう……」

「あ、駄目だ。約一名すでにトリップしていらっしゃる」


 マリーはうっとりと中空を見つめ、キラキラとした瞳をしている。これで入学しないなんて言ったらケツが三つに割れるまで蹴られるだろう。


「ああ、もう、マジかよ。どうなることやら……」


 俺はボリボリと頭を掻きながら街道を歩いていく。遠目には学園都市の高い壁が見え、やがてその手前で手を振っているリアに「おそいよー!」と怒られることになるのだった。

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