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第17話:マジシャンズとの別れ

「はぁ。もうマジシャンズともお別れかぁ……」


 俺は街の正門の下に立ちながらぼーっと街の中心に伸びる噴水を見上げる。もう一生ここに住みたいくらいなんだが。


「まあここに魔王はいないっぽいしねー。目的達成のためには仕方ないさ」

「はぁ。そりゃそうなんだけどな」


 魔王を倒さない限りこのバグった世界は元の平和な世界には戻らない。モンスターによる被害を食い止めるためにも、魔王討伐は急務と言えるだろう。しかし―――


「旅立ちたくないでござる」

「勇者にあるまじき発言だな。さすがみっちゃん」


 ぐっと親指を立てるティーナ。何がさすがなのかわからんが、微妙に馬鹿にされているような気がする。


「そういえばマリーの姿がないな。見送りくらい来てくれると思ってたんだが」


 結局あの騒動以降マリーとはあまり顔を合わせていない。俺たちは魔王の居場所の聞き込みをして少なくともこの周辺にはいないことがわかり出発することになったわけだが……まあ短い付き合いだったしな、マリーも忙しいんだろう。


「彼女も今頃は魔法の研究に精を出しているのかもしれんな」

「頑張ってほしいねぇ」

「……だな」


 これからもあいつに対する風当たりは強く、陰口が止むことはないだろう。しかし大丈夫。あいつにはもうパニック魔法という武器があるのだから。

 ぶっちゃけ戦闘を回避するという意味では最強の魔法なんじゃないだろうか。いや魔法のことなんてわからんけども。


「考えてみたんだけどさー。もしかしたらマリーっちは魔力量が多すぎて制御できてないのかもねぇ」

「なるほど。それで治癒魔法が魔法書通りに発動しなかったのか」


 ありえそうな話だ。子どもが鉄の大剣を自由に振り回せないのと同じように、マリーの中にある魔力はあいつにとって巨大な大剣だったのだろう。

 まあそれ故に振り回した時の威力は絶大なわけだが。


「なんにせよ、もう心配はいらないだろう。別れ際の彼女はさっぱりした顔をしていた」


 ティーナは胸の下で腕を組みながら柔らかに微笑む。こいつ、こんな顔もできたんだな。


「そう、だな。まああいつなら大丈夫だろう」

「よぉし! じゃ、出発しよっか!」


 おーっと手を突き上げるリア。俺は少し恥ずかしいながらもおーと片手を上げた。

 こうして俺たちはマジシャンズを後にして、街道へと歩みを進める。俺はぐーっと体を伸ばしながら空を見上げ―――

 視界に入ってきた白いパンツに驚愕した。


「お待ちなさい! このわたくしを置いていくつもりですの!?」


 マリーは小高い丘の上に立ち、相変わらずパンツが見えた状態で腰に両手を当てて偉そうにしている。

 そんなマリーの言葉を聞いたリアは嬉しそうに瞳を輝かせた。


「ええっ!? マリーっち付いてきてくれるの!? やったー!」

「ち、ちょっと、いきなりくっつくのはお止めなさい!」


 感極まってほっぺをくっつけるリア。ティーナはその後ろで「良いパンティだった……」と頷いている。同じ感極まるでもこんなに違うんだなひでぇ。


「でも、よかったのか? 魔法の研究とかあるんだろ?」


 俺は頭に疑問符を浮かべ、マリーへと質問する。マリーは何故か俺から目を逸らした。


「も、問題ありませんわ。パニック魔法の習得には実戦が一番。ならば旅立つのも悪くないと判断したまでです」


 マリーは何故か少し恥ずかしそうに理由を説明する。しかしまあなるほどな。それなら納得。


「ま、いいか。これからよろしく頼むぜ先生」

「―――っうるさい!」

「いでふ!? 何このチョップ重っ」


 握手を求めた俺の頭にチョップを叩きこむマリー。なにすんだ畜生頭割れるかと思ったぞ。


「わたくしのことはマリーと呼ぶように言ったはずですわ! 二度も言わせないでくださいます!?」

「あ、ああ、悪かったよ。……マリー」

「ああああああ!」

「ひでふっ!? 何このボディ重っ」


 名前を呼ぶと何故かマリーは顔を真っ赤にして俺にボディブローを突き刺してくる。何すんだこの野郎。朝食全部出ちゃうとこだっただろうが。


「世界を狙えるボディだな」

「褒めてる場合かよ! 俺吐きそうなんですけど!?」

「それはそれでイイな」

「イイの!?」


 ティーナの意味不明すぎる嗜好について話していると、リアは全員を集めるように抱きしめた。


「とーにーかーく! これから皆で旅立ちだね! 楽しくなってきたぁ!」

「は、ははは……不安しかねぇけどな」

「ふん」


 何故か不機嫌そうに顔を背け、赤くなった耳を見せるマリー。俺はメンバーを冷静に考え、この先の旅路を真剣に心配した。

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