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第11話:研究所へいこう

「またか。またヒロインがバグってるパターンかコラ。人の思い出を汚すのもいい加減にしろ!」

「なんか怒られた!? よくわからないけど失礼ですわ!」


 マリーはキーっとしながらびしっと俺を指差す。いやまあ、確かに失礼なんだけどね? 大好きなキャラクターが別キャラになってる俺の悲しみも少しはわかってくれないだろうか。


「まあいいじゃんミッチー。お嬢様はお嬢様だよ」


 リアは珍しく慈愛に満ちた笑顔で優しく俺の肩を叩く。今はその優しさが一番痛い。


「お嬢様っていうか傲慢の塊みたいなんですけど!? 元々お淑やかな子だったのに!」


 優しさの権化みたいな子で誰も下に見ることなく接するやつだったのに、なにこれ。俺下に見られてるっていうかいきなり助手扱いなんだけど。


「と・に・か・く! 光栄に思いなさい! 貴方はこのわたくしの助手に選ばれたのだから!」

「いやそんな威張りながら言われてもなぁ」


 正直何が名誉なんだかさっぱりわからん。ハリセン勇者というこの上ない不名誉ならすでに被ってますけどねハハハ。泣きたい。


「それはそうとマリー。パンティください」

「ティーナはいきなり何言ってんの!? ご乱心にもほどがあるだろ!」


 右手を突き出しながら酷い要求をするティーナに俺のツッコミが突き刺さる。ティーナは悪びれる様子もない。


「私は乱心などしていない。いたって正常に要求しているのだが?」

「余計たちが悪いよ! 目を覚まして更に目を覚ませ!」


 俺はティーナの肩を掴んで前後にガクガクと揺さぶる。ティーナは「はっは揺れる揺れる」と楽しそうに笑顔を浮かべていた。


「な、なんだか変わった人達ですわね。人選を誤ったかしら……」


 マリーは眉間に皺を寄せてむむむと考え込む。そんなマリーの隣にいつのまにか近づいていたリアは首を傾げた。


「それよりさぁ、マリーっちの助手って何するん? 魔法の実験とか?」

「おお! あなた良い推理ですわ! 確かに大大大魔法使いのわたくしには実験が付きものです!」

「付きものなんだ……」


 正直聞いたことはないが、まあ要するに魔法の練習がしたいんだろう。で、それを俺に手伝えと。いきなりすぎるだろなんだそれ。


「まあ、とりあえず自己紹介といくか。俺は高瀬光輝。見た通り―――」

「変態だ」

「学生だよ! 見りゃわかんだろ!?」


 ティーナからの思わぬ横槍にツッコミを入れる。するとティーナは真っ直ぐに俺の目を見据えた。


「普通の学生は腰元にハリセンを持たない」

「ぐっ。痛いところを……ていうかお前にだけは変態とか言われたくないんだが?」

「私は変態じゃない。露出すると興奮するだけだ」

「それを世間では変態って呼ぶんですけど!?」


 俺は何故かですけど口調になりながらティーナにツッコミを入れる。事態が収拾しないと感じたのか、リアは俺たちとマリーの間に割って入った。


「まあまあ。とにかくこっちのコート着た子がティーナで、アタシが女神のリアね! マリーっちは魔法使いってことでいいん?」

「大大大大魔法使いよ! 私の右に出る魔法使いはこの世に存在しないわ」

「何気に大が一個増えてやがる……」


 俺はどうでもいいことを気にしながら、それ以上張れないんじゃないかってくらい胸を張っているマリーを見つめる。

 一応だけど拒否権を確認してみるか。


「あのー、マリー? その助手ってやつ拒否権は……」

「当然ありませんわ。あとわたくしの事は先生とお呼びなさい」

「アッハイ先生。すんません」

「速攻で折れた!? どうしたのミッチー具合悪いの!?」


 リアは心配そうな表情で俺を見つめてくる。いや、具合が悪いっていうか都合が悪い。


「いいか? マリーの家はこの街で実質王様レベルの権力を持ってんだ。下手に機嫌を損ねると今夜の宿すら失うぞ」


 俺はリアとティーナを集めると耳打ちする形で警告する。リアはぷるぷる震えると口をωの形にした。


「ふぁー。耳元で囁かれるとドキドキするねぇ」

「全然関係ないねそれ!? とにかく、マリーの機嫌を損ねるような事はするなよ。特にこの街ではな!」


 俺は重ねて二人に対して警告する。特にティーナは要注意だな。さっきみたいな要求をしないように見張らなければ。


「よしわかった。じゃあとりあえず脱ごうか」

「話聞いてた!? 無礼千万だろうがそんなもん!」

「私の裸を献上するだけなのだが?」

「目が潰れるのでやめてください!」


 こんな街に近い位置でこいつの光が発せられたら街が大騒ぎになるわ。ていうかマリーの一族に消されるわ。


「お話は終わりましたの? とにかくわたくしの研究所に行きますわよ」

「あ、はいはい。じゃあとりあえず行くか」


 俺は頭をボリボリと掻きながら歩き出したマリーの後を付いていく。リアは楽しそうに「わぁい研究所だー♪」と両手を広げて走り、ティーナは「パンティあるかな……」と不吉なことを呟いている。

 こうして俺たちは予期せぬ形で魔法の街マジシャンズへと入ることになるのだった。


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