四獣の正体
俺は塵取りで破片を集めながら、ぼやいた。
「一気にテンション萎えたぜ…… 今日はこれ片して風呂入るか」
剣技の復習をしないといけないが、まだ結界が解けるのには時間があるはずだ。
一応、ポワロにも確認する。
「四獣が復活したら、匂いが街まで流れてくるかと」
……だが、できれば四獣が祠から出て来た瞬間を叩きたい。
正確な復活時期を知っておく必要がある。
素直に教えてくれるとは思えないが、明日黒髪に聞いてみよう。
翌日、学校の正門で黒髪が下校してくるのを待ち伏せた。
向こうから見覚えのあるシルエットがやって来る。
「……なんや」
学生カバンを肩にぶら下げ、ぶっきらぼうに黒髪は答えた。
「ちょっと付き合えよ。 焼きそばパン奢ってやるから」
「……怪しいな、自分。 何が知りたい?」
……当然そう来るよな。
まあ、隠してても仕方ないから、正直に答えた。
「……四獣の件だ。 いつ結界が解けるのかが知りたい」
すると、黒髪は指を2本立ててこう言った。
「焼きそばパンと、イチゴミルク。 それで、手ェ売ったるわ」
帰り道、近くのパン屋「やさぐれブレッド」 で焼きそばパンを購入。
自販機でイチゴミルクを買うと、黒髪に渡した。
「……四獣の件やったな。 霊能者が言うには、ホタルの出る時期、やったかな」
黒髪は、おはらい連盟という組織に加入しており、そこから仕事の依頼を受けてここに来た。
霊能者は四獣が祠から出てくるというビジョンを見たらしく、そこにホタルが映り込んでいたって訳だ。
「ホタルか。 ってことは、6月か?」
「そうちゃう?」
よく知らん、と言いながら、ごっそさん、とパンを俺に渡してきた。
「おま、中身だけか!?」
「パン、そんな好きやないもん。 パッサパサやし」
……くっそ、と思いながら、俺はパンを食べた。
事務所に戻ろうとすると、ちょっと待て、と引き留められた。
「お前、四獣の真実知っとるか?」
「……いや、知らねーけど」
「四獣は、元々、人間やったらしいで」
……!?
どういうこった。
四獣っつったら、鳥みたいなやつとか、虎みたいなやつとか、どう見ても人間じゃない。
「聞いたらブルーになるで。 今から500年前、戦争に勝つために霊力の高い人間が自ら命を神様に捧げて、代わりに霊獣にしてもらったそうや。 でもな、その四獣、あまりにも強いからって、今度は人間の手で葬られたんや。 切ないやろ」
……四獣を葬ったのは、多分俺の祖先だ。
「……ってことは、四獣は俺に恨みがあるってことか?」
「さあな。 お前が死んで成仏してくれたらいいけどな」
そう言って、黒髪は去っていった。