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リトルの過去

 バクはのそのそと歩き出し、眠っている生徒の方へと向かった。


「って見てる場合じゃねえ! 先生、一緒に教室に行くぞ」


 俺は校長を伴い、中央の階段を駆け上がって2階の廊下に出た。

その時、ガラリ、と誰かが2年C組の教室から出てきた。


「……」


 女子生徒だ。

その生徒は、俺の方には目もくれず、いきなり非常階段の方へと走り出した。


「ポワロ!」


 俺はすぐさまポワロを呼び出し、生徒を捕獲するよう命じた。

生徒のダッシュよりも、ポワロのスピードが勝り、背中から飛びついて転倒させた。

ドサッ、と音がする。

俺は駆け寄って、生徒の催眠状態を解除した。


「あれっ、私、何して……」


 霊獣は普通の人には見えないため、本人も何が起こったのか分からない。

女子生徒は不思議そうに教室に戻って行った。


「ふう、間一髪だったな」


 すると、入れ違いで別な生徒が校長に連れられて出てきた。

身長は俺よりも低い、黒髪を立たせた男子生徒、黒髪刃。

バク使いだ。


「……お前やったんか、若草牛男(わかくさうしお)


「……!」


 こいつ、何で……


「立ち話もあれやろ。 校長室で話そうや」


 校長は俺と黒髪の顔を見比べて、首を傾げている。

俺はこいつのことは知らないが、どうやら向こうは知っているらしい。





 


 俺たち3人が校長室に戻ってくると、黒髪は俺の方に向き直り、口を開いた。


「まさか、同業者のお前に妨害されるとは思わんかったわ。 霊獣が野放しになったらマズい。 若草家の長男のクセして、そんなことも分からんか?」


「……その名前で呼ぶんじゃねえ」


 若草牛男。

それは、元々の俺の本名だ。

俺は、「霊獣殺し」を生業にして来た由緒ある家系の長男だった。

野放しにされている霊獣や、悪事を働く霊獣使いの霊獣を、霊剣と呼ばれる剣で斬り殺すのがその仕事だ。

俺の家は関西圏で有名で、その筋で知らない者はいない。


「俺はもう若草家の人間じゃねえ。 22の時に縁を切ってこっちに上京して来たんだ。 今はリトルだ」


「……どうでもええわ。 それより、結界が弱まってきとる。 早いとこ生贄捧げんと、ほんまに手遅れになるで。 霊獣が悪人の手に渡ったらどうなるか、想像つくやろ? 下手したら、大量に人死ぬで」


 だからって、一人の命を差し出す訳には行かない。


「……霊獣は、俺が何とかする」


 


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