霊獣ポワロ
「了解した。 早速今から学校に行って調査するぜ。 料金は出張費と技術料で3万だ」
校長はうなずいた。
「はい、お願いします」
向かったのは私立四獣学園。
校長の乗って来た車に乗り込み、20分後、到着した。
時刻は夜の8時。
この時刻の学校は不気味な雰囲気を醸し出している。
俺たちは正門を通過し、失踪した生徒のいた2年C組という教室に向かった。
「生徒はこの教室から出て、戻ってこなかったんだよな?」
「その通りです」
まず、失踪事件に四獣が絡んでいるのかどうか、という切り分けをする必要がある。
もし本当に四獣が現れて、超常的な力で生徒をどこかに連れ去ったのだとしたら、俺の能力で察知できる。
何を隠そう、俺は犬の霊獣使いだ。
左手薬指にはまっている、霊獣の指輪をこすった。
すると、俺にしか見えない犬のポワロが現れた。
「ポワロ、部屋を一周して匂いを探ってくれ」
「了解です!」
校長が不思議そうな目で俺を見て来た。
「あの、誰と話して……」
「……ん? ああ、愛犬のポワロだよ。 あんたにゃ見えないぜ」
ポワロが部屋を一周した後、ワンと吠えた。
「バクの匂いがしますね!」
バク?
四獣は関係ないのか……
確か、バクは霊獣図鑑にこう書かれている。
人間を催眠状態にして行動を操る、と。
「事件当初、教室に霊獣使いがいたかも知れねえ。 生徒を催眠術で操って退席させたのち、どこかに移動させたんだ」
「し、しかし、それでは生徒はどこへ?」
そこが問題だ。
何の目的で生徒を催眠術にかけたのか。
まさか……
「……推測だが、バクの霊獣使いは生贄を捧げるために行動を起こしたんじゃねーか? あんた、言ってただろ? 四獣を鎮めるのに、生贄が必要だって」
要するに、生贄を捧げないから神隠しが起こった訳ではなくて、生贄を捧げるために、神隠しが起こったっていう推理だ。
「で、では、生徒は祠に……」
「ああ、今から向かうぞ!」
俺と校長は学校から出て、すぐ向かいにある山に入っていった。
懐中電灯で足元を照らし、舗装された階段を上っていく。
「祠はもうすぐです」
登り始めてほんの15分ほどで、その祠に到着した。
ライトで照らし、中に入る。
「……お、おい! あれって……」
祠の中心に、何かが横たわっている。
恐る恐る近づくと、そこにいたのは失踪した女子生徒だった。
俺は駆け寄って、生徒の安否を確認した。
「……ふう、まだ生きてるぜ」
弱々しいが、脈はある。
耳元で呼びかけたが、生徒は深い催眠状態に陥っており、すぐに病院に運ぶことになった。