プロローグ
ボロい雑居ビルの一室で、俺は暇を持て余していた。
俺の名前はリトル。
年は25で、霊獣使いなるものをしている。
霊的なものが絡んだ事件の場合、俺の出番なんだが……
依頼なんて滅多に入ってくるもんじゃないし、そろそろ生活していくのもキツい。
「……何か売るか」
テナント料はおろか、携帯の支払いも滞っている。
しかも、通帳残高には1000円くらいしか無かったハズだ。
さて、何を売って商売をしようか、と考えたとき、俺はとある素人の動画配信サイトを思い出した。
「何か、オタグッズを買って喜んでるヤツががいたよな」
しかも、そのグッズは、ちゃちな作りのクセして4000円という高価で売買されていた。
「オタクの間で人気のアニメを調べるか」
結果、ダメ〇リという女性向け恋愛シミュレーションゲームに俺は目を付けた。
「このゲームのナ〇クってキャラが人気らしいな」
赤髪でナルシストっぽい風貌で、俺様キャラらしい。
「こういうSっぽいヤツが腐女子には人気なのか」
勉強になるぜ、とつぶやきながら、ナ〇クの制作に取りかかる。
しばらくして、ナ〇クが完成間近、という所で事務所のベルが鳴った。
「……ちっ、待ってろ、あと少しだ」
「ふぅ……」
どうにかデフォルメされたナ〇クの縫いぐるみが完成した。
気づいたら事項は6時。
思ったより時間がかかっちまった。
「あとはこいつを写メして、メル〇リに商品登録すりゃいい」
これがうまく売れたら、ナ〇クを量産してぼろ儲けだ。
作業に集中していたため、腹が空いた。
何か食べようと思い、リビングに向かうと、いきなり声をかけられた。
「あのぉ……」
「どわあああああーーっ!」
な、何で人んちの玄関に仁王立ちしてやがる!
見てくれは中年くらいのおっさんで、少しやつれた感じだ。
「あんた、声くらいかけてくれないか!?」
「いや、何度もベルを鳴らしたのですが……」
……!
そうだった。