若草牛尾
若草牛尾は殺人マシーンだ。
俺が最後に牛尾を呼び出した時、片手には剣が握られている状態だった。
「お見事です、坊ちゃん」
そう言ったのは剣の指南役で、目の前には地面に伏した男と女がいた。
恐らく、それは親子と思われ、どちらかが霊獣に取り憑かれた為、まとめて斬り伏せたと思われた。
牛尾は、霊獣に憑かれてない方も斬って捨てたのか?
俺は、恐ろしくなり、家を飛び出した。
「……牛尾を呼び出すのは気が引けるな」
俺は一人でブツブツとつぶやいた。
学校に四獣が紛れ込む失態を犯したのは自分だし、やりたくないことを牛尾にやらせるのもどうかとは思う。
しかし、他に妙案も思いつかなかった。
「……ウサギを、こっちへ」
「分かったわ」
さっき、アイリスは独立した意識を持つ者は連れていけない、と言っていた。
ということは、向こうに行けるのは、俺か牛尾ということになる。
「……」
俺は、意を決して、牛尾を呼び出した。
気が付くと、俺は自室のベッドに横たわっていた。
時刻は早朝5時。
「……」
久しぶりに呼び出されたかと思ったら、かなり面倒な案件だった。
学校に潜伏している四獣を暴き出せ、か。
やり方は問わないらしい。
「……久しぶりに、暴れられるってわけだ」
武器は何でも持ってこれる、ということで、俺はあるものを準備していた。
マシンガンと手りゅう弾だ。
「生徒を一か所に集めて、四獣どもにこう命じればいい。 出てこなければ、全員殺す、ってな」
俺はマシンガンを肩にかけ、手りゅう弾を学生カバンの中に入れると、事務所の扉を開けた。
「……待てっ」
丁度このフロアにエレベーターが止まっていたため、俺は慌てて駆け出した。
1階を押すと、音もなくエレベーターが動き出す。
チン、と音がすると、扉が開いた。
「……うおっ!?」
ここの住民と思しき男が乗り込んできたが、不信感丸出し、といった目でこちらを見て来る。
ちっ、マシンガンくらいで、オーバーな野郎だ。
学校に向かうには、電車に乗らなければならない。
さすがにこの恰好で乗り込むのはマズいか、と思った時だった。
「あいつだっ! マシンガンを肩に背負った学生服の男!」
……無線で何か言ってやがる。
交番のお巡りだ。
「止まれっ! 動いたら撃つぞっ!」
俺は、どうしようか一瞬迷ったが、ここで足止めを食らったら学校に行けない。
振り向きざまにトリガーを引いて、銃を乱射した。
「……!?」
ダダダダ、と銃声がし、一人を射殺。
ところが、もう一人の警察は素早く地面に伏せ、こちらに一発見舞ってきた。
それが学生カバンに命中する。
「……あっ」
ドオン! という凄まじい音と共に、俺の体は粉々になった。