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仮想空間へ

 女はアイリス、と名乗った。


「どうでもいいけど、お金あるの?」


 やけに冷たく尖った声で、アイリスはそう言った。


「金は…… ねえんだ」


「じゃあ帰って。 あなたみたいなゴミ、相手にしてる暇ないから」


 しっし、と手で追い払う素振りをする。

こいつ、こういう女か……

だが、引き下がる訳には行かない。


「……四獣が学校に潜伏してる可能性があるんだ。 捜査に協力してくれっ!」


 俺は、頭を90度に折り曲げ、頼み込んだ。


「……」


 四獣の件について知っていれば、何かアクションがあるに違いない。

すると、狙い通り女の様子が変わった。


「……四獣。 連盟からのメールに書いてあったわね。 ふぅん、あなたが一任されたんだ」


 ……しめた!

俺は事情を説明し、学校をイメージした仮想空間の中に、16才の俺を送り込んでくれと頼んだ。


「……仕方ないわね」


 はぁ、とため息をついた後、女は左手の薬指にはまっている指輪に触れ、霊獣を呼び出した。

指輪のない俺には何も見えねーけど。


「今、あなたの隣には時計を持ったウサギがいる。 それに触れれば、あなたの意識は仮想空間へと(いざな)われるわ」


 アイリスは仮想空間に行く上でのルールを説明し始めた。

向こうの世界を体験できるのは一日のみ。

霊獣は連れて行けない、とのことだ。


「霊獣みたいに、独立して意識を持つようなものは連れて行けない。 ただし、武器なら持って行けるわ」


 ……武器? 


「……何でそんなものがいる?」


 俺が尋ねると、女はクスクスと笑い始めた。


「あなた、どうやって四獣を探すつもりだったの?」


「……」


 正直、その点に関しては深く考えていなかった。


「まあ、こんな例えもどうかと思うけど、あなたが隠してるエッチな本が、友達に暴かれそうになったら、止めに入るわよね? それと同じで、学校の子供たちをあなたが殺して回ったら、四獣はたまらず止めに入ると思わない?」


 ……!

ふざけてんのか?


「……お前、正気か?」


「イメージの中なら、問題ないと思うけど?」


 そんなことが出来るやつは、頭のネジが飛んでいる。

……出来るとしたら、俺の中にいるもう一人の人格、若草牛尾くらいだ。





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