奪取
突然、男の口調が変わった。
「てやんでぃ! 俺っちをどうしようってんだ、べらぼうめぃ!」
男がでかい声でまくし立てるため、俺はたじろいたが、どうやら四獣と中身が入れ替わったらしい。
「声が届いていたかは知らねーが、今お前は不利な状況だ。 だが、お前の宿主はお前を庇っている。 仲間の居場所を教えろ。 そしたら見逃してやる」
「……兄ちゃん、俺っちのどこが不利だって?」
俺は舌を出すと、それを歯で挟みギリギリやり始めた。
こいつ……!
「や、やめろっ!」
「分かったか! 俺っちは、今人質を取ってるのと同じなんだバカ野郎! もしこいつを助けたいんなら、指輪出しやがれっ!」
指輪を交換条件にするつもりか。
「へっ、やれるもんならやってみい」
黒髪が後ろからそう言った。
余計なことを……
「早まるんじゃねーぞ! 今、指輪を渡す」
俺は指輪を外し、男に向かって放り投げた。
馬乗りになっていたポワロが消え、男が床に落ちた指輪を拾う。
「チビ、お前もだ」
「はっ!? な、何でやねん!」
男がペロ、と舌を出したので、慌てて命令する。
「いいから渡せっ」
黒髪は渋々指輪を外し、男に渡した。
「……分かればいいんだ馬鹿野郎。 俺っちも男だ。 こいつのことは助けてやるぜ」
男が踵を返して俺たちの元を去ろうとした。
「ま、まて、他の四獣の居場所は?」
「仲間を売る訳にゃあ、いかねーぜ」
男は振り返りもせず、そのまま姿をくらました。
「最低だ……」
俺は道端にたたずむことしか出来なかった。
指輪を取られた上に、情報すらない。
「ほんま、アホや! バクも取られてもうたし、どないすんねん!」
……とにかく、考えるしかない。
四獣の狙いは指輪か?
確か、さっきの四獣はうどん職人って話だ。
生まれつき霊力が高く、無理やり霊獣使いに霊獣にさせられたってんなら、指輪を回収して霊獣使いを無力化、それで復讐を果たそうとしているのかも知れない。
「……四獣の狙いは、おはらい連盟の霊獣使いかも知れねえ。 今みたいに、人質を取って指輪を回収する気かもな」
「……たった4人の人質で、連盟が動くわけないやろ」
その点は俺もそう思う。
だから、もっとたくさん人質がいる。
そして、手っ取り早く人質が集められる場所といえば……
「やつらは、学校にいる!」




