アームズ・モード
「俺は、テープと剣を取ってくる!」
ターンして事務所に向かおうとした時、黒髪が叫んだ。
「アホかっ! お前が現場離れたら、霊獣消えてまうやろっ!」
そ、そうだ……
霊獣は、雇い主の半径100メートル以内から外に出ることはできない。
くそっ、やっぱり剣を持ってくるべきだった。
「ご主人!」
ポワロが俺の袖を引っ張って来た。
「四獣は元々人間だったんですよね? 霊力の高い者には、そういった術があるってことです。 僕らもやってみましょう」
……ポワロは何を言っている?
やつらが四獣になったみたいに、俺にも四獣になれってのか?
「頭固いな、自分。 これやろ?」
振り向くと、黒髪は片手にはりせんを持っていた。
紫と白の縞々のはりせんだ。
まさか……!
「霊獣使いの奥義、アームズ・モードや。 長なるから、あいつ追っかけながら説明するで!」
四獣に憑りつかれたと思われる男は、駅前のデパートに逃げ込んでいた。
ポワロの鼻を頼りに、男の後を追う。
ちなみに、さっき走りながらアームズ・モードのレクチャーを黒髪から受けた。
アームズ・モードとは、霊力が一定以上ある人間が、霊獣と契約を結んでいた場合のみ使用できるモードらしい。
霊獣に手を触れながら、心の中でアームズ・モード、と唱えれば、決まった形の武器に変化するみたいだ。
「……後でやってみっか」
男はエレベーターに乗ったらしく、そこから先はどこに行ったのか分からない。
「2手に分かれようや。 ワイは屋上から調べるから、お前は地下からや」
「了解」
黒髪がエレベーターに乗り込み、屋上へと上がる。
俺は地下から、匂を頼りに男を追う。
1階、2階、3階とフロアを移動していくと、階段で黒髪と合流した。
「……見つかったか?」
「いや、おらんな」
……すれ違ったのか?
必ず、俺とこいつのどちらかが男を見つけてないとおかしい。
もしかして、憑りついた四獣には、俺たちをまける特殊能力が備わっているのか?
その時だった。
黒髪が、俺が後ろを向いた隙に、腕を絡ませて動きを封じて来た。
「今やっ! 逃げろっ!」
黒髪の声に応じて、男が俺の脇を通過して階段を駆け下りていった。
まさかの黒髪の裏切りに、俺は動揺した。
「おまっ、俺への好感度はマックスのハズだっただろ!?」
すると、黒髪はフン、と鼻で笑った。
「好感度100がマックスだと思ったか?」
「……どういうことだ?」
「やつはパンを5つ奢るとワイに言ってきた。 現在、やつのワイへの好感度は108や!」




