追跡
やさぐれブレッドでパンを3つ購入し、自販機でイチゴミルクを買った。
黒髪は口元が緩みまくっており、めちゃ嬉しそうだ。
「はよ食べようや! 自分のこと、見直したで!」
「ははっ、あんま駆けるなよ」
まるで親戚のおじさんになった気分だ。
てか、この程度で高感度がマックスになるとは、攻略しがいのないやろーだ。
路肩に移動し、黒髪がハニートーストを口に運ぶ傍らで、俺は四獣の見分け方の説明をした。
「いいか? 四獣が人間に化けていたら、生活していく上で絶対おかしな点が出てくるハズなんだ。 例えば、自動ドアを見て、物の怪の仕業か! とか叫んだり」
霊獣は元々人間らしいが、500年も昔の人間だ。
現代のテクノロジーは理解できないだろう。
「なるほどな。 でも一番確実なのはポワロの鼻ちゃうか?」
黒髪はハニートーストを食べ終え、焼きそばに取りかかろうとしている。
まあな、と俺が相づちを打つと、その直後に黒髪が叫んだ。
「って、なんやこれ!? 焼きそばパンなのに、焼きうどんやんけ!」
……焼きうどん?
「おいおい、これ、人間のふりした四獣が作ったんちゃうか!? クレーム付けたろ!」
まさか、とは思ったが、一応俺も着いていった。
パン屋の中に入った途端、ポワロが飛び出した。
「ご主人、祠で嗅いだ匂いです! パンの匂いで紛れていますが、僕には分かります」
……マジかよ。
じゃあ、厨房の誰かに取り憑いてるに違いない。
「黒髪、お前の言った通りだ」
「……何やて!」
しかし、今は霊剣と除霊テープがない。
一旦引き返して、もう一度ここに来る必要がある。
「……!」
その時だった。
俺の目は確かに捉えた。
このパン屋は、厨房の様子が丸見えの造りになっているのだが、体のでかい、筋肉質な男がポワロの姿を確認して、逃げ出した。
「ポワロ、黒髪と一緒に、今逃げ出したやつを追ってくれ!」