ルナの秘密
あの後、イブキとレントはルナを迎えにアニュラスアクリプス城へと着く。
その数時間前、ルナは二人と別れた後、美容院でショートヘアに髪を切った。
その後、ルナは城へと着く。城の前の門番へと話をつけ、城の中へと入ると、ルナは迷う事なく王の間へと進んでいき、王の間の大きな両開きの扉の前で深呼吸をした。ルナは気持ちを整え、扉を開く。
中へと入ると、王の玉座には女が座っていた。ルナは女の前まで歩いて行った。女はひじ掛けに、右ひじをつきながら、頬に手をあてる。
「だいぶ久しぶりね…ルナ。」
女がそう言うと、ルナが言う。
「だいぶ女王が板についたみたいね。姉さん…。」
女は女王であって、ルナの姉。サンはルナへと言う。
「あら、髪を短く切ってしまったのね。まあ、そんな事よりも、よくあの場所から此処まで来られたわね。どうやって来たの?教えて欲しいんだけど。」
ルナはサンを真っ直ぐな眼差しで言う。
「それは言えないけど、姉さんとのケジメをつけるために来たのよ。姉さんと話をする為にね。」
サンは上から見下す様にして言う。
「あんた、誰に向かって偉そうな事を言っているのか、分かっているの⁉︎」
すると、サンは指を鳴らすと、ルナの入って来た扉から誰かが入って来た。ルナには足音が聞こえて来ていた。ルナは思わず振り返ると、血の気が引いた。
そこに歩いて来ているのは、あの炭鉱に現れた人獣だった。驚きを隠せないルナ。人獣の男は、ルナの隣へとやって来ると、サンの前で膝をついた。サンはルナの表情を見て、高笑いをした。
「驚いた⁉︎この人獣には、あんたを見張りをさせていたの。それと、今までのあんたの事も知っているわ。」
サンは笑みを浮かべながらそう言うと、ルナは焦り出す。
「待って‼︎姉さんは何処まで知っているの⁉︎」
サンはルナへと言う。
「そんな事は後として、これから本題へと入るわよ。あんたは所詮、私の人形でしかない。そんな人形に、華舞台を作ってあげるわ。あんたには、他国の王子と結婚してもらう。そうすれば、交流も出来て利益が高くなる。もう、他国には話をつけてあるわ。後は結婚式をあげるだけよ。」
ルナは焦りながら怒鳴る。
「勝手に話を進めないで‼︎私はそんな結婚なんかしない。私は姉さんの人形じゃないのよ‼︎」
歯向かうルナに絶えし、サンはルナを睨みつけながら言う。
「黙りな‼︎これは決まった事、あんたは承諾するしかないのよ。でないと、あなたの友達が痛い思いか、亡き者となるわ。私には影の者共がいるの。簡単に人なんて殺せるのよ。」
ルナは冷や汗をかくと、膝まずいた。
「承諾…しまっす…。」
サンは笑顔で言う。
「いい子ね。それと、これからは姉さんじゃなく、姉様とお呼び。」
そう時間が過ぎていくと、いきなり王の間へと一人の門番と一緒にイブキとレントが入って来た。ルナは二人を見て慌てる。
「何でここに来たの‼︎」
ルナは怒鳴るようにそう言うと、イブキは困りながら言う。
「その……待ち合わせをしていなかったから、迎えに行く事になって…。」
ルナは困った顔をした。イブキは密かに思った。
(ルナだいぶ髪を切ったなぁ。すごく似合ってる。)
すると、サンがイブキとレントへと言う。
「ごめんなさいね。私はこの国の女王をしているサンよ。妹がずいぶんと世話になったみたいで。」
イブキはサンに気づくと、サンの言う事に考えてみて、驚いた。
「え!この人が女王で、ルナのお姉さんと言う事は、ルナってこの国の王女様⁉︎」
ルナはのんきなイブキに呆れた。レントはルナの横にいる者が、あの時の人獣だと気づくと、サンの事を怪しみ、サンへと聞いた。
「なぜ、あの時の人獣が此処に居るんだ!あんた、人獣と何にか関係があるんじゃないのか?」
サンは上手い事を言う。
「その人獣は、この国に来て、あなた達をつけていたみたいなのよ。それに、人を殺していたみたいだから、捕まえたって訳。」
ルナはサンの事を見る。サンはニヤけていた。サンは更に、イブキとレントへと話し出す。
「そうだ!二人にはまだ話をしていなかったわね。実はルナは他国の王子と婚約していたの。だけど、さらわれてしまって…。ルナを探していたら、あなた達がルナを此処へと連れて来てくれた。本当に嬉しかったわ。」
イブキはサンの嘘を信じてしまい、ルナへと言う。
「凄いな!ルナは王子と婚約していたなんて…。俺達と出会ってよかったな。じゃあ結婚するのか⁉︎」
サンはルナの代わりに言う。
「そうよ。四日後に王子を呼んで、結婚式をあげるわ。」
イブキはテンションが上がる。一方、レントはルナの様子が変な事に気付く。レントがルナへと話かける。
「大丈夫か?」
ルナは無理やり笑顔を作って言う。
「大丈夫よ。今日から城で暮らすから、二人は宿で泊まっていって。私が宿代を出すから。」
イブキは喜んだ。
その後、二人は城を出た。辺りはもう夜になっていた。二人は宿を探す。その探している最中に、レントはイブキへと言う。
「俺は、本当はこの街で、ルナやお前と別れるつもりだったが、そうもいかなくなった。」
イブキはレントの言葉に疑問になり、聞いた。
「何で別れようとしていたんだよ。それに、そうもいかないって、どう言う事だよ⁉︎」
レントは言う。
「俺はそもそも、お前達となれ合うつもりで一緒にいたわけじゃあなかったんだ。でも…ルナの事が心配になった。あいつ、何か変じゃなかったか?」
イブキはのんきに言う。
「そうだったか?いつものルナだったじゃん。しかも、髪をあんなに短くして、すごく可愛いかったし。レントは考えすぎなんだよ。」
レントは自分の考えすぎだと思った。
その頃、ルナは久しぶりに自分の部屋へと戻り、ベッドへと倒れ込むように飛び込んだ。ルナは今までの事を振り返り、密かに泣いていた。