氷の魔法
銃声が鳴り響いた。三人はその音に驚くと、レントと少女がうしろへと振り返る。イブキはつられて振り返ると、銃を片手に持った大柄な男が居た。男は大声で言う。
「お前ら!よくも俺の奴隷どもを逃したな‼︎」
イブキは焦り出す。
「あいつがもしかしてボス⁉︎どうするんだよレント。」
そうイブキがレントへと言うと、レントは言う。
「あいつが銃を持っているかぎり、むやみに近づく事はできない。」
すると、男が提案を持ち出す。
「その娘をこちらへ渡せば、見逃してもいいぞ。その娘は特別だからな。」
イブキは少女の前に立つ。イブキは男へと言う。
「この子を渡すわけにはいかない‼︎」
震えなるイブキを心配そうに見る少女。男は銃をイブキへと向け、銃弾を放つ。
イブキは銃声に驚き、目を瞑る。だが、体が痛くない事に気付いたイブキは、そっと目を開けると、体に怪我ひとつ無い。驚くイブキは地面を見てみると、銃弾があった。その光景に驚く少女とレント。イブキはそっと銃弾を持ってみた。
「冷た!てかなんで凍ってるんだ⁉︎」
銃弾が凍っている事に驚くイブキ。すると突然、男が笑い出した。男はイブキの方を見て、イブキへと近寄って行く。イブキは焦り出す。その時、レントが剣を持ち、男へと向かって行った。しかし、男に銃を向けられ、思うように動けない。男はイブキの前まで来ると、イブキの左腕を強く掴んだ。男は言う。
「お前がいれば、俺は大金持ちだ。」
イブキは男の言葉の意味が分からなかったが、腕から男の手を必死に離そうとするが、男はイブキに銃を向ける。その隙をつき、レントが男の持っていた銃を剣で切り落とす。男はおじ気付いた。
そんな所に、ツノが生えた男がイブキ達の目の前に現れた。イブキは慌て出す。
「あ、あいつの頭に、ツノみたいながあるけど⁉︎な、なんで⁉︎」
イブキとは打って変わって冷静なレントに、イブキは聞いた。
「おい!な、なんで、そんなに冷静でいられるんだよ!あいつは何なんだよ⁉︎」
レントはイブキに呆れながら言う。
「あいつは人獣。人間に獣の血が流れている奴らのことだ。」
イブキは理解ができなかった。人獣に気づいた男は、指示を出す。
「おい!お前、帽子を被ってる奴だけを殺せ!」
すると、人獣は片手に剣を持ちながら、イブキ達の元へと向かって来る。
しかし、人獣は男の背後に立つと、男の背中に剣を突き刺した。男は前へと倒れた。人獣は剣を抜くと、男の背中から血が流れ出す。その光景を見ていたイブキは震え上がる。人獣はイブキ達へと向かって言う。
「この男は死んで当然な男だ。ちなみに、お前達に言う事がある。俺はある人の為に生きている。その人にはその娘を見張ってろと、言われている。その娘を渡せば、お前達を見逃してやる。」
イブキは震えながらも、言い返す。
「俺はこの子を渡す訳にはいかないんだ!」
レントは鼻で笑うと、人獣に言う。
「だそうだ。と言う訳で、俺達はお前に従わないし、此処で死ぬつもりもない。」
人獣は、ため息をつくと、いきなりイブキに向かって剣を振るうが、レントが剣で受け止める。イブキは少女の手を握ると、走ってその場から離れた。
レントと人獣は剣をぶつけ合いながら、激しい攻防をしていた。人獣の力は強く、レントは隙をつかれ腹に力強く蹴られてしまう。レントは少し吹っ飛ばされ、倒れこむ。レントの剣は吹っ飛ばされた際に、その反動で地面へと剣を落としてしまった。レントは激痛に耐えながらも、立ち上がろうとする。男はレントへと近づいて行く。
その光景を見ていたイブキは、恐怖を打ち消し、人獣へと向かって行く。人獣はイブキに気が付かない。人獣が気が付いた時には、イブキが人獣の顔へと拳で殴った時だった。人獣はその反動で、気絶した。イブキは自分の力に驚いた。イブキは自分の拳を見てみると、凍りついていた。
「何だコレーーーー‼︎」
驚いていると、凍っていた拳は自然と氷が溶けていった。イブキはレントの事を思い出し、焦りながらレントを抱え込む。少女もやって来て、少女はレントの剣を持っていた。
「急いで、此処から離れましょう。」
少女の言葉に頷くイブキは、レントを抱えながら、少女と共に場所を移動した。
だいぶ離れた所へとやって来た三人は、一安心した。レントは少し回復し、イブキへと礼を言うと、レントは少女の手に鎖が付いているのに気づき、剣で鎖を切ってあげた。少女はレントへと礼を言う。
「ありがとう。」
少女はイブキの方へと向き、言う。
「まだ、私の名前を言ってなかったよね。私はルナ。」
イブキは焦りながら、言う。
「あ、えっと…そこに居るのはレントで、俺は城田イブキ。イブキって呼んでいいからね。」
ルナは笑顔でイブキへと言う。
「助けてくれてありがとう。イブキ。」
イブキはこんなに嬉しそうに礼を言われたのが、初めてだった。イブキは照れながら、笑顔になった。