異世界で新ためて始まる人生
くたびれた服を着ている人々が、イブキの事をじっと見ていた。イブキは混乱して呆然としていた。人々はイブキから目を離し、それぞれ何処かへと行ってしまった。
呆然としているイブキへ、トントンと肩を優しく叩く少女。イブキは一瞬ビクッと驚くと、少女はクスッと少し笑った。イブキは少女の方へと向く。少女は見た目からしてイブキと歳が同じくらいで、髪は長く薄い金色をしていた。しかし、その少女もくたびれた服装をしていた。
「どうしたの?」
少女の言葉が分かる事に、驚くイブキは聞いてみた。
「ここってどこ⁉︎」
少女は答えた。
「君はここが何処だか分からないの?もしかして、迷ってここに来たのなら、今すぐこの場所から離れた方がいいわ。」
イブキは言葉が通じる事に安心はしたが、少女の言葉に疑問を感じた。
すると、少女はうしろを振り返るり突然、慌てだした。イブキは不思議に思い立ち上がると、少女がイブキへと小声で言う。
「その近くの岩に隠れて!」
イブキは少女の言う通りに、近くにあった大岩に隠れた。
イブキはこっそり、少女の様子を物陰から覗いていた。すると、少女の所へとムチを持った男が二人やって来た。男の一人が少女へと聞く。
「ここでなにをしている‼︎お前の仕事場はここではないはずだが、ここで何をしていた⁉︎」
少女は無言だった。そんな少女にもう一人の男が、少女の頬へと平手で殴った。少女はその衝撃で倒れてしまった。男達は少女を無理やり立たせ、その場から連れ去って行った。その光景を見ていたイブキは、怒りが込み上げた。
「そこで何をしている‼︎」
その背後からの声に、イブキはビクッとし、ゆっくりとうしろへと振り向いた。そこには、ムチを持った男が一人いた。焦るイブキに対し、男はイブキの服装を見て、怪しむ。
「お前、何者だ?怪しい服装だな。そんな事よりも、なぜここにいる!」
そう男は言うと、男はイブキの腕を掴んだ。イブキが抵抗すると、男は持っていたムチをイブキに向けて、振り落そうとしてきた。
その時、突然と男は倒れた。イブキは唖然とした。イブキの前に現れたのは、黒いニット帽を被った同じ歳ぐらいの、少年がいた。少年はイブキに向かって言う。
「お前、不思議な服装をしているな。」
イブキは思う。
(助けてくれたんだよな……。にしても、ここは外国ってわけでもなさそうだ。だって、こいつの服装、コスプレみたいだし!て事は…ここは俺の住んでいる世界じゃあ、ないのか⁉︎)
考え込むイブキに少年は、その場から立ち去ろうとする。イブキは焦って、少年の腕を掴んだ。
「ま、待ってくれ!助けてくれてありがとう。実は頼みがあるんだ‼︎」
少年はイブキの方へと振り向と、言う。
「俺はお前を助けたわけじゃない。俺は他にやるべき事がある。」
イブキは言う。
「お前、強いんだろ⁉︎俺を助けてくれた、女の子を助けて欲しいんだ‼︎」
少年は冷たく言う。
「俺にはやるべき事がある。その子を助けたいのなら、お前一人でなんとかするんだな。」
イブキはためらうが、決意した。
「分かった。確かに、俺がなんとかするべき事だ。だけど、俺一人の力じゃ、何もできない…だから、力を貸してくれないか⁉︎」
少年はため息をつくと、呆れた表情で言う。
「確かに、お前一人じゃ何もできなさそうだな。分かった、力を貸してやる。ただし、女の子を助け出すのは、お前だからな!」
イブキは笑顔で言う。
「ありがとう‼︎俺は城田イブキ。」
少年はイブキの名前に戸惑いながら言う。
「俺はレント。お前、面白い名前をしているな。イブキと呼べばいいのか?」
イブキは笑顔のまま、頷いた。すると、レントは前を向くと、歩き出す。イブキは急いで付いて行く。
(ここがどこだか分からないけど、あの女の子を助けるんだ‼︎それが今、俺がやるべき事だ!)
イブキは気持ちを新たに、少女を救うため、レントと協力をした。