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氷結のファンタジア  作者: 夜空あおい
ダブルトーンでの奮闘
10/10

コロシアムまでにやる事

 あれからイブキは、ルナから魔法の扱い方を教わる為に、広場で学ぶ事になった。ルナは右手の人差し指を出すと、指先から電気玉を出した。


「まず、イメージをするの。そうすれば、この様に魔法が使える。イメージが基礎(きそ)だけれど、集中力も必要なの。」


そうルナが説明をした。イブキは集中する為に、目をつぶった。


(イメージだ。氷の城…氷の城……。)


そう思いながら、パッと目を開く。その瞬間、小さな氷の(かたまり)が手のひらの上に出来た。


「あれ⁉︎」


そう驚くイブキに、レントがつっこむ。


「あれ⁉︎じゃあないだろう!何か考え過ぎたんじゃないのか⁉︎」


イブキは首を(かし)げながら言った。


「えっと、氷の城‼︎」


レントとルナは(あき)れた。ルナは指先の電気玉を消した。


「あのねイブキ、直ぐには大きな物を出すのは難しいわ。考えていた物をパッとイメージして出す。地道に小さい物から出せる様に練習ね。」


イブキはやる気を出し、再び目をつぶる。氷の小さな結晶を出す為に、頭にパッとイメージをし、手のひらに力を入れると、小さな氷の結晶が出て来た。


「出来た‼︎」


喜ぶイブキ。ルナは言う。


「直ぐに出来るとは思わなかったけど…これは第一歩ね。」


イブキは更に何を出すかを考えるが、なかなか思い浮かばないイブキは、とりあえず大きな氷の塊を出すため、両手を前へと出しながら集中する。パッとイメージすると、大きな岩ぐらいの氷の塊が出来た。


「凄いわ。上達が速い!」


そうルナが言うと、照れるイブキは言った。


「これでも俺、だいたいの教科の評価が良かったから、こういうのも出来ちゃうんだなぁ〜。」


レントが言う。


「教科⁉︎よく分からないが…調子に乗るなよ。」


イブキはレントの言葉を聞いていなかった。それからイブキは氷の消し方と、何回か氷の塊を出す練習を続けた。



 夕方。ルナは城へと戻り、レントは宿(やど)へと戻ろうとすると、イブキが言う。


「レント!俺、ちょっと一息ついてから宿に戻るから、先に戻っててくれ。」


レントは一人で宿へと戻った。

 イブキは街中を歩くと、街の丘に展望台がある事に気がついた。そこへと向かて歩いていると、一個のりんごが足元に当たって来た。


「す、すみませ〜ん。」


そう言ってやって来たのは、三つ編みのあの少女だった。イブキはりんごを拾うと、少女へと渡した。少女はイブキの顔を見て驚いた。


「あ、あの時の人‼︎あの時は、何も役に立てずに、すみません…。」


イブキはすかさず言う。


「謝る事じゃあないし、逆に俺は助けてもらったしさ。あの時は、あらためてありがとう。」


少女はうつ向いてしまった。そこへ、あの時の白ウサギがやって来ると、少女の事を見たウサギはイブキへと言う。


「お前!アシュリーに何をしたんだ!」


イブキは白ウサギに向かって言う。


「何もしてない。りんごを拾って渡したんだ!」


白ウサギがイブキの事を疑った目で見ていると、少女(アシュリー)が白ウサギへと顔を上げて言う。


「この人は、悪くないの。ただ私、お礼を言ってもらえて恥ずかしくなっちゃって…。」


白ウサギは呆れてしまった。そんな少女(アシュリー)を見て、嬉しくなったイブキは言う。


「喜んでくれたみたいで、嬉しいよ。俺は城田イブキ、イブキって呼んでくれ。」


少女(アシュリー)も言う。


「わ、私はアシュリーです!よろしくです。イブキさん。」


白ウサギが割って入るように言う。


「僕も一応、言っておくけど、僕はホップだよ。」


そう名前を言った後、イブキは展望台へと向かう事を、思い出しすと、二人を(さそ)った。



 三人は展望台へとやって来ると、そこは街を一望できる場所だった。夕日が沈んで行く茜色(あかねいろ)の空を、目を輝かせながら見る三人。すると、アシュリーが言い出す。


「こんな所があったなんて、知りませんでした。こんな景色(けしき)を見ていると、私が小さな者なんだと思い知らされます…。」


そんなアシュリーへとイブキは言う。


「確かに、俺達はちっぽけかもしれないけど、こんな景色を見れるなんて、幸せな事なんじゃないかな。そもそも、アシュリーはマイナス思考なんだよ。もっと自信を持って前向きに生きないと。俺が言えた事じゃないけどな。」


アシュリーは嬉しそうに言う。


「そうですね。幸せな事なのかもしれません。イブキさんに言われた通り、前向きに考えてみようと思います!」


イブキはコロシアムの事や、修行の事を話した。アシュリーは驚いていた。そんな事を少し話した後、イブキ達はそれぞれ帰る事にした。イブキはアシュリーへと言う。


「明日もこの時間あたりに、此処で会わないか?この街で初めて出来た友達だから。いいかな?」


アシュリーは少し笑みを浮かべながら言った。


「もちろんです。」


そう約束をした。一方で、ホップはアシュリーの事を心配そうに見ていた。イブキと二人はそれぞれ別方向へと別れた。



 翌朝。イブキは広場で氷の魔法を自由自在に、使えこなせるようにする為、今度は物体を表して、その物体で戦えるかどうかを試すため、レントに練習相手になってもらった。イブキは剣をイメージし、氷の剣が右手へと現れた。剣を持ったレントがイブキへと言う。


「本気でやるからな。危ないと思ったら自分で何とかしろよ。」


イブキはレントに集中すると、勢いよくレントがイブキの(ふところ)へと入って来た。イブキはとっさにイメージした氷の盾を出し、レントの攻撃を防いだ。今度はイブキがレントへと攻撃をして行くも、レントに避けられてしまう。レントはイブキへと言う。


「いいか、相手を見放すな。相手の動きを見て、考え、とっさに行動しろ。一瞬の出来事に動けないようじゃ殺されるぞ。」


イブキはそう言われイライラしていたが、レントの動きを集中して見る。レントが再びイブキへと攻撃して来ると、レントの剣を剣で受け止めた。


「そこまで‼︎」


見守っていたルナが、イブキとレントを止めた。ルナは笑顔でイブキへと言った。


「うん。その瞬発力が大事だよ。レントの言う通り、一瞬の出来事で命が(あや)うくなる。今のままじゃ正直、まだ危ないけど…イブキが自分を信じて動ければ大丈夫だよ。」


イブキはルナの言葉に喜ぶと、イブキは修行を続けた。



 夕方。修行を終えたイブキは展望台へと行くと、もうアシュリーとホップは来ていた。


「遅いぞ‼︎」


ホップがそう言うと、イブキはヘトヘトになりながらアシュリーの元へと行く。アシュリーはイブキが疲れ果てているのを見て焦る。


「だ、大丈夫ですか⁉︎」


イブキは苦笑いをしながらも、今日の修行について話した。アシュリーは心配そうに言う。


「コロシアムは明日ですけど、大丈夫ですか⁉︎」


イブキは笑顔で言う。


「大丈夫だよ。俺だってその為の準備をして来たつもりだから。」


ホップがイブキへと、蹴りつけた。イブキは倒れると、ホップへと向く。ホップはイブキへと言う。


「そんなんじゃ、やられるな。」


イブキはホップの耳へと掴みががる。ホップが痛がると、その光景を見ていたアシュリーが笑い出した。そうこうしているうちに、日は沈んで行く。イブキが帰ろうとすると、アシュリーが言う。


「明日、私も応援してます。頑張ってください!」


イブキは笑顔でアシュリーへと手を振ると、展望台から去って行った。イブキは帰っている時、明日の事を思いながら、やる気を出していた。

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