コロシアムまでにやる事
あれからイブキは、ルナから魔法の扱い方を教わる為に、広場で学ぶ事になった。ルナは右手の人差し指を出すと、指先から電気玉を出した。
「まず、イメージをするの。そうすれば、この様に魔法が使える。イメージが基礎だけれど、集中力も必要なの。」
そうルナが説明をした。イブキは集中する為に、目をつぶった。
(イメージだ。氷の城…氷の城……。)
そう思いながら、パッと目を開く。その瞬間、小さな氷の塊が手のひらの上に出来た。
「あれ⁉︎」
そう驚くイブキに、レントがつっこむ。
「あれ⁉︎じゃあないだろう!何か考え過ぎたんじゃないのか⁉︎」
イブキは首を傾げながら言った。
「えっと、氷の城‼︎」
レントとルナは呆れた。ルナは指先の電気玉を消した。
「あのねイブキ、直ぐには大きな物を出すのは難しいわ。考えていた物をパッとイメージして出す。地道に小さい物から出せる様に練習ね。」
イブキはやる気を出し、再び目をつぶる。氷の小さな結晶を出す為に、頭にパッとイメージをし、手のひらに力を入れると、小さな氷の結晶が出て来た。
「出来た‼︎」
喜ぶイブキ。ルナは言う。
「直ぐに出来るとは思わなかったけど…これは第一歩ね。」
イブキは更に何を出すかを考えるが、なかなか思い浮かばないイブキは、とりあえず大きな氷の塊を出すため、両手を前へと出しながら集中する。パッとイメージすると、大きな岩ぐらいの氷の塊が出来た。
「凄いわ。上達が速い!」
そうルナが言うと、照れるイブキは言った。
「これでも俺、だいたいの教科の評価が良かったから、こういうのも出来ちゃうんだなぁ〜。」
レントが言う。
「教科⁉︎よく分からないが…調子に乗るなよ。」
イブキはレントの言葉を聞いていなかった。それからイブキは氷の消し方と、何回か氷の塊を出す練習を続けた。
夕方。ルナは城へと戻り、レントは宿へと戻ろうとすると、イブキが言う。
「レント!俺、ちょっと一息ついてから宿に戻るから、先に戻っててくれ。」
レントは一人で宿へと戻った。
イブキは街中を歩くと、街の丘に展望台がある事に気がついた。そこへと向かて歩いていると、一個のりんごが足元に当たって来た。
「す、すみませ〜ん。」
そう言ってやって来たのは、三つ編みのあの少女だった。イブキはりんごを拾うと、少女へと渡した。少女はイブキの顔を見て驚いた。
「あ、あの時の人‼︎あの時は、何も役に立てずに、すみません…。」
イブキはすかさず言う。
「謝る事じゃあないし、逆に俺は助けてもらったしさ。あの時は、あらためてありがとう。」
少女はうつ向いてしまった。そこへ、あの時の白ウサギがやって来ると、少女の事を見たウサギはイブキへと言う。
「お前!アシュリーに何をしたんだ!」
イブキは白ウサギに向かって言う。
「何もしてない。りんごを拾って渡したんだ!」
白ウサギがイブキの事を疑った目で見ていると、少女が白ウサギへと顔を上げて言う。
「この人は、悪くないの。ただ私、お礼を言ってもらえて恥ずかしくなっちゃって…。」
白ウサギは呆れてしまった。そんな少女を見て、嬉しくなったイブキは言う。
「喜んでくれたみたいで、嬉しいよ。俺は城田イブキ、イブキって呼んでくれ。」
少女も言う。
「わ、私はアシュリーです!よろしくです。イブキさん。」
白ウサギが割って入るように言う。
「僕も一応、言っておくけど、僕はホップだよ。」
そう名前を言った後、イブキは展望台へと向かう事を、思い出しすと、二人を誘った。
三人は展望台へとやって来ると、そこは街を一望できる場所だった。夕日が沈んで行く茜色の空を、目を輝かせながら見る三人。すると、アシュリーが言い出す。
「こんな所があったなんて、知りませんでした。こんな景色を見ていると、私が小さな者なんだと思い知らされます…。」
そんなアシュリーへとイブキは言う。
「確かに、俺達はちっぽけかもしれないけど、こんな景色を見れるなんて、幸せな事なんじゃないかな。そもそも、アシュリーはマイナス思考なんだよ。もっと自信を持って前向きに生きないと。俺が言えた事じゃないけどな。」
アシュリーは嬉しそうに言う。
「そうですね。幸せな事なのかもしれません。イブキさんに言われた通り、前向きに考えてみようと思います!」
イブキはコロシアムの事や、修行の事を話した。アシュリーは驚いていた。そんな事を少し話した後、イブキ達はそれぞれ帰る事にした。イブキはアシュリーへと言う。
「明日もこの時間あたりに、此処で会わないか?この街で初めて出来た友達だから。いいかな?」
アシュリーは少し笑みを浮かべながら言った。
「もちろんです。」
そう約束をした。一方で、ホップはアシュリーの事を心配そうに見ていた。イブキと二人はそれぞれ別方向へと別れた。
翌朝。イブキは広場で氷の魔法を自由自在に、使えこなせるようにする為、今度は物体を表して、その物体で戦えるかどうかを試すため、レントに練習相手になってもらった。イブキは剣をイメージし、氷の剣が右手へと現れた。剣を持ったレントがイブキへと言う。
「本気でやるからな。危ないと思ったら自分で何とかしろよ。」
イブキはレントに集中すると、勢いよくレントがイブキの懐へと入って来た。イブキはとっさにイメージした氷の盾を出し、レントの攻撃を防いだ。今度はイブキがレントへと攻撃をして行くも、レントに避けられてしまう。レントはイブキへと言う。
「いいか、相手を見放すな。相手の動きを見て、考え、とっさに行動しろ。一瞬の出来事に動けないようじゃ殺されるぞ。」
イブキはそう言われイライラしていたが、レントの動きを集中して見る。レントが再びイブキへと攻撃して来ると、レントの剣を剣で受け止めた。
「そこまで‼︎」
見守っていたルナが、イブキとレントを止めた。ルナは笑顔でイブキへと言った。
「うん。その瞬発力が大事だよ。レントの言う通り、一瞬の出来事で命が危うくなる。今のままじゃ正直、まだ危ないけど…イブキが自分を信じて動ければ大丈夫だよ。」
イブキはルナの言葉に喜ぶと、イブキは修行を続けた。
夕方。修行を終えたイブキは展望台へと行くと、もうアシュリーとホップは来ていた。
「遅いぞ‼︎」
ホップがそう言うと、イブキはヘトヘトになりながらアシュリーの元へと行く。アシュリーはイブキが疲れ果てているのを見て焦る。
「だ、大丈夫ですか⁉︎」
イブキは苦笑いをしながらも、今日の修行について話した。アシュリーは心配そうに言う。
「コロシアムは明日ですけど、大丈夫ですか⁉︎」
イブキは笑顔で言う。
「大丈夫だよ。俺だってその為の準備をして来たつもりだから。」
ホップがイブキへと、蹴りつけた。イブキは倒れると、ホップへと向く。ホップはイブキへと言う。
「そんなんじゃ、やられるな。」
イブキはホップの耳へと掴みががる。ホップが痛がると、その光景を見ていたアシュリーが笑い出した。そうこうしているうちに、日は沈んで行く。イブキが帰ろうとすると、アシュリーが言う。
「明日、私も応援してます。頑張ってください!」
イブキは笑顔でアシュリーへと手を振ると、展望台から去って行った。イブキは帰っている時、明日の事を思いながら、やる気を出していた。




