第4話 作戦会議
二人はかなり歩いた。
鳴瀬はリリリに案内されるままに山奥の廃墟のような建物に入った。
「はい、座って」
「ほーい、お前こんなとこに住んでんのか」
「住んでるっていうか借りてるっていうか無許可っていうか」
「不法侵入ねぇか!」
「どうせ今は使われてないんだし中にゴキブリがいようが私たちがいようが変わらないでしょ」
「結構違うだろ....」
「はーーーいじゃあ作戦会議を始めまーす」
「無視かよ....」
「ーーーではね、まず質問ターーーイム!なにか私に聞きたいことはない?質問によるけどだいたい答えるよ~」
「なんっでそんなテンション高んだよ!」
「え?それが質問?」
「ちげーよ!」
「テンション高いな~」
「お前がな!」
「で、真面目な方でなにか質問は?」
「急にテンション落ちるんだな....えーじゃあ、お前がさっきいってた100%能力って具体的にはなんなの?物なの?エネルギー的なもんなの?概念なの?」
「全部」
「は?」
「物でありエネルギーであり概念でもある」
「....お前それを盗んだとかなんとか言ってたよな。それはどういうことなんだよ」
「うん、ばっちり。ほら、」
そう言うとリリリは胸元からペンケースぐらいの大きさのアルミケースを取り出して開けた。中にはなにも入っていなかった。
「これがそれよ」
「なんもねぇじゃん」
「そう、」
「はぁ?」
「ないのよ、100%能力なんて」
「意味わかんねぇこというなよ」
「この世界にはね。概念すら」
「じゃあどこにあんだよ」
「死の狭間」
「死の狭間?」
「あなたは特にそこに関係する能力を持ってるじゃない」
「....もしかして死んで生き返るまでのあの30秒間の世界か?」
「ピンポーーン、あたり。で、その30秒間の世界にのみ存在する物でありエネルギーであり概念であるものが100%能力ってこと」
「能力ってのは基本的にあの時間へ行くために起こるものなのか?」
「そうだね、私たちの場合能力自体に魅力を感じるけども本来はあの時間にいること自体に意味がある。そう、実際は逆なのよ」
「俺らにとって意味のある能力ってのはあくまであの時間に行くための副作用ってことか」
「さすが。飲み込み早いね」
「で、その中に死者を蘇生させる能力もあるかもしれないと」
「うん、そういうこと」
「でもなんで俺の妹を殺した。俺の協力がほしかったんならわざわざそんなめんどくさいことしなくたって....、いやまて、お前俺の事全然知らなかったよな。能力はおろか名前だって」
「はぁ....そのこと。覚えてないのよ。無いの。私がさっき能力を使った時よりも前の記憶が所々ね。貴方の妹さんをなぜ殺したのか思い出せないの。どうやらやっぱり私は不完全なのよ。」
「能力を使うと記憶が消えんのか?」
「私の場合不完全だから最近のことですら消えちゃうけど貴方みたいに完全な人間なら恐らく大丈夫だとは思うけど..」
「......」
「どうかした?」
「........俺、逆なんだ」
「どういうこと?」
「能力を使うと記憶が消えるんじゃなくて増えるんだ」
「増える!?」
「あぁ、知らない人間の思い出なんかが流れてくる」
「まって、詳しく聞かせ」
突然玄関のドアが大きな音を立てて開いた。
そこにはサングラスをかけた黒いスーツを着た男が5、6人立っていた。皆、胸元にはグローバルイコールのロゴがあしらわれたピンバッジが付いている。
「あいつら、グローバルイコールの....」
「返してもらおうか100%能力の一部を」
「おい、リリリ。そこにある果物ナイフ貸せっ!」
「こんなもので太刀打ちできるわけ」
「いいから早く!」
鳴瀬はリリリからナイフを受け取り黒いスーツの男のひとりに向かった。
しかし、あっけなく殴られ緩んだ手からナイフは床に落ちた。
「くっ....」
「お前に用はない。消えろ」
「(こいつらもしかして俺が能力を持ってることを知らないのか?)」
そう言い黒いスーツの男は倒れ込んだ鳴瀬の腹を思い切り蹴った。
「がはっ..!......」
リリリは黒いスーツの男に捕まった。
「ちょっと!離しなさいよ!能力使うわよ!」
「お前が持ち出した能力の中に今の我々に害のある能力はないはずだ。今のお前にはなにもできまい」
「....ッ」
リリリは言葉に詰まった。
その時、
「うおおおおおおおおおおおおおお!」
鳴瀬は床に落ちたナイフを拾い刃を手前にして柄を一人の黒いスーツの男に向け、その男に抱きつくような体勢をとり、自らの胸部にナイフを刺させた。
「こいつ何を、、、まさか!」
「鳴瀬くん、ナイス....」
「.......くっそいってぇ......けどこれで....」
(俺を殺させれば俺の勝ちなんだよ!)