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俺の死体は俺しか見てない  作者: 夏野断忘
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第1話 事実だったもの

 俺の目の前には俺の死体があった。

「....久々だなこれ......」

 前にもこんなことがあった。たしか前は小学生の頃、小学生連続殺人事件で3人目の被害者になったとき。

 正確には、なっていたはずのあのときだ。結局、そんな事件自体が存在しなかったことになったんだけどな。














 今日は高校の入学式。

 俺、古詩(こし)鳴瀬(なるせ)は2年生となり新1年生を迎え入れた。

 実際在校生からしたらただのめんどくさいイベントだ。

 入学式が終わり俺は疲労感に苛まれながら帰っていた。

「にしてもあっついな......ほんとに4月か?......」 

 なにをいったところで結局は独り言なわけだが無言だとこの暑さにやられてしまいそうな気がした。

 家まではあと少しだが俺はアイスの自動販売機の誘惑に負けてしまっ....

「うわけにはいかねぇ......」

 といいつつ誘惑には勝てずにお金を投入、迷いなくプリンカスタード味を押した。

「うめええええええええええ!つめてえええええ!プリンカスタードうめえええ......」

 アイスのプリンカスタード味のうまさというものは異常だ。火照ったからだが冷めていく。

「あぁ....無駄遣いってのはわかってるんだが買っちまうんだよなぁ....」

 青すぎる空に話し掛けるように呟いた。

 とその時、ふと向かい側の歩道に幼馴染みの村樫(むらかし)がいるのが見えた。俺は急いで向かい側の歩道に渡った。

「おーい村樫!」

「あ、古詩(こし)さん!」

「元気してたか?」

「おかげさまでアイムファインです!」

「そっか、そりゃよかった!てかおまその制服..」

 うちの制服じゃねぇか!

「あ、はい。古詩さんと同じ学校みたいです!よろしくお願いします!」

 村樫は俺より一歳年下で、俺の隣の家に住んでいる。ちなみに顔は上の上、こんなかわいい幼馴染みがいるってだけで俺の人生の運ってのは全部使いきってんだろうな....まして同じ学校ってことはこれから数年間もしかしてもしかするんじゃないのか。

 このフラグ....回収したるぞ!

 そんなクズみたいな事を考えていると村樫が話しかけてきた。

「あの、古詩さん。いや、古詩先輩。」

 慣れない呼ばれかたにドキッとした。

「今後、数週間だけでいいので一緒に登下校してもらえませんか?」

 きたあああああ!まじかああああああ!

「い、いいいいいよ!もちろんだとも!」

「ありがとうございます!よかった~、最近この辺で起きてるっていう連続殺人事件....やっぱり怖いですし..古詩先輩がいてくれるんなら安心です!」

 え?なんだよ。ボディーガードかよ。てか俺みたいな運動音痴役に立たないと思うが......ま、いいや。かわいい幼馴染み、いや、かわいい後輩のためだ!

「おう!任せろ!漢検準2級の俺がお前を絶対に守る!」

「準2級!?それは頼もしいです!って漢検!?」

 俺たちはそのあともくだらない会話をしながら帰った。

「それじゃ、また明日。お前の家に行くから。っていっても隣だけど」

「はい、待ってます!」

 神様ありがとう。最高の幼馴染みをありがとう。

 村樫の家の前で別れようとしたその時、急に胸が苦しくなった。目の前の村樫の顔が青くなっている。

「ん?どうし......」

 後ろから俺はナイフで心臓付近を刺されていた。

「うそだ....ろ........」

 俺は血を吐き地面に倒れた。誰だ、誰が俺を刺した....

 振り返って犯人を見ようとしたが意識がだんだんと遠くなっていってしまっていたためよく見えなかった。

 俺、死ぬんだな。

 一旦は。



 気がつくと俺の目の前には俺の死体があった。

「....久々だなこれ......」

 俺は、[死んだ事実を消す]ことができる。

 自分自身もよくわからないが、何度か俺は死んだことがあった。だが、死んでいないことになっていた。手順はこうだ。

 死んだとき、俺は幽体離脱のような現象を起こし自分の死体を目撃する。

 次に、俺の死体を見つけた瞬間からカウンドダウンは始まる。30秒間だけ俺は幽霊のような誰からも黙視かつ接触することができない状態で動き回ることができる。

 そして、30秒間経ったとき俺が本来死んでいたはずの場所に何事もなかったかのように存在している。しかも毎回、俺が死ぬはずだった原因は必ず消滅しているのだ。

 

 俺は俺の死体を見つけた。ってことはもうカウントダウンは始まってる。

 「なっ....」

 俺を殺した犯人は俺の死体からナイフを抜き取り、村樫をまっすぐと見つめナイフを向けている。

 「まさかこいつ村樫を....」

 だが、この状態で俺はなにもすることはない。

 村樫ごめんな、今の俺には何もできねぇわ。ま、痛いだろうけどすぐになかったことになるだろうから安心しろ。

 強いていうなら犯人の顔を見ておきたかったがどうせこいつはこの世に存在しなかったことになるんだ。俺が死んだ原因なのだから。

「恨むなら俺を殺したことを恨め」

 俺は再び意識を失った。


 気がつくと俺は村樫の家の前にいた。

「はい、待ってます!」

 デジャブ?ちがうそうか、俺が死ぬ数秒前の会話か。

「おうよ!50分前集合してやるよ!」

「はい!50分前集合は基本中の基本....って早すぎます!」

「ははははははは!....な、なぁ、話し変わるけどさ、この辺で連続殺人事件って起こってる?」

「へ?いきなりなんですかその物騒な話....」

「ごめん、なんでもない。じゃあな!」

 そう言って俺は村樫と別れ家へと入った。

 俺が死んだという事実と共に俺が死んだ原因、つまり恐らく連続殺人事件の犯人はこの世界に存在していないことになった。

 にしても俺のこの能力(ちから)ってなんなんだ......

 考え事をしながら気のない帰宅の挨拶をした。

「ただいま」

 ふと、廊下に散らばっている赤い液体が目に入った。

 まさか....血..じゃないよな。俺は急いでリビングへ向かった。しかし予感は悪い方に当たり、リビングには変わり果てた妹の姿があった。

「なんだよこれ........」








  

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