ぼくの彼女と親友と
視界いっぱいに広がる青い海と、白く光る砂浜。目が覚めるとぼくはそこに佇んでいた。
目の前には一人の男が倒れている。ぼくは助けてあげなくては、そう思った。しかし踏み出すことができなかった。
そうこうしているうちに、二人の男女が倒れている男に近寄った。そしてぼくはその二人に見覚えがある。彼女である美咲と、親友の健太だ。でもどうして二人が。
ぼくはやっとの思いで動いた。異様な倦怠感と浮遊感に苛まれるながら近寄る。
「ねー健太、どうしたらいいと思う?」
「ヤバイな、これ」
二人は男を見下ろしながら話している。
男は頭から血を流し、全身にダメージがあるようだ。
ぼくはこの男を見た瞬間、血の気がひくのがわかった。この男はぼくではないか。
「祐介、このままじゃ死んじゃうよ」
愛は心配そうに呟いた。
「いや、これは好都合だ。ここでこいつがいなければ邪魔者は消える」
「でも、ばれないかしら」
二人はなにを話しているだろうか。こいつらは今、ぼくを見殺しにしようとしているのか。
「大丈夫だ、ばれやしない。元々こいつは事故でこうなったんだ」
「そうよね」
待て、待ってくれ。
いきなり多くの情報が頭に入り、パニックを起こしそうだった。一呼吸を置きよく考える。
ぼくはここで倒れて死にそうになっている。そして彼女と親友がぼくを見殺しにしようとしいている。
ふと、自分の身体を見た。ぼくの目からは、身体が透けていて、足に至っては存在していなかった。踏みだす力がなかったのではなく、踏み出す足がなかったのだ。
「こいつを見殺す、いいな?」
待て、お願いだ待て。ぼくを殺さないでくれ。
「わかったわ」
待て、待てくれ。
ぼくは健太の肩に掴みかかろうとした。しかし触れることすらできなかった。
「よし。じゃあ祐介、殺していいよな」
その時、ぼくと健太の目があっていた。