条件
乙晴と滝はとある公園に設置されているハーフバスケットコートに向かっていた。何故そんなところに向かっているのか。それは、同じ学校の三人が、そのコートでバスケをしているという情報を滝が手に入れたからだ。
いざ来てみると、コートには三人の姿が見受けられた。その三人の内の一人がパスを出し、パスを受けた者がマークに入っている一人を振り切ってゴールを決めているところだった。
「くそ、また抜かれた」
「朝日のパスが良かっただけ。それが無かったら止められてたよ」
「俺は佐久先輩の動きに合わせただけですよ」
そんな会話をしている中、乙晴と滝は三人が情報の人たちがどうか尋ねるために声をかけた。
「あの、すいませんが壱栄高校の方々であってますか?」
「はい、そうですが」
乙晴が尋ねた質問に佐久と呼ばれた人が答える
。
「俺たちも、壱栄高校の生徒なんですけど、 今回男バスを作ろうかと思いまして。そのメンバーに先輩方を誘いに来ました」
「.....何故、僕たちなのか聞いてもいいかい?」
考え込むようにして尋ねる佐久。恐らく、ある程度想像はついているだろう。しかし、それを尋ねるということは何か確証がほしいのかもしれない。
「色々誘ったんですが、いい返事が貰えず、...でもそんなところにここの情報を得たんです。なので、もしかしたらと」
「なるほど、つまり僕たちがここでバスケをしているから、.....もしかして入ってくれるのではないか、そう思ったわけだね?」
滝の言葉に納得の表情を浮かべながら話す佐久。しかし、そんな話を聞いて黙っていない奴が一人いた。
「おい、テメェ!何調子乗ってんだ?!俺たちを軽く見ているのか?」
「まあまあ、拓真落ち着いて」
「ですが?!」
「佐久先輩の言う通りだ。すぐ熱くなるのはお前の悪いくせだぞ?」
熱くなる拓真を止めたのは、佐久と今まで静観していた朝日だ。二人の言葉で止まった彼は、余程二人を信頼しているのだろう。
「しかし、拓真の言うことにも一理ある。そこで、条件を出そうと思う。その条件によっては入ることを考えてもいい。それでいいかい、二人とも?」
「俺は構いません」
「俺もそれで大丈夫です!」
その言葉を聞き、二人の顔を見ながら頷く佐久。一方、乙晴と滝は、条件とは何か、と少し不安な気持ちを抱いていた。
「.....条件は何ですか?」
「ははっ。そんなに身構えなくても、無理難題は言わないよ。.....それで、条件なんだけど、僕たちとバスケで勝負してほしいんだ」
そう言われて、一瞬何のことかわからなかった。それもそうだろう。条件と言われ、多少無理難題を言われるかと思ったからだ。なので、今でも何か裏があるのではないか、と考えてしまう。
「もちろん、裏なんてないよ。ただ、たまには別の人とバスケするのもいいかなと思ってね。それに君たちの実力も知りたいし」
条件と言うより、誘われた感じとなったが、これを受けないという選択肢は彼等には存在しない。
「乙晴、どうする?」
「やるしかないだろ?滝、バスケの経験は?」
「遊びくらいしかやったことがないが。.....もしかして俺もやるのか?」
「人数的にはこっちが少ない。つまり、自然と滝にも出てもらわくてはならない」
「マジか。はぁ、....まあ、手伝うと言ったからな。やらないわけにはいかないだろ」
その言葉を聞いていたのか、途中で佐久が口を挟んできた。
「決まったようだね」
「はい、その条件受けさせてもらいます」
こうして、バスケでの勝負が決定したのだった。