滝の魅力
それから数日、乙晴は色んな生徒(男子限定)に訪ね回ったが良い返事を貰えず、誰一人として揃えれずにいた。返事としては、『部活をする気がない』とか『部活を作るなんて不可能』が多かった。何人かは迷ってくれた人はいるが、なんだかんだで返答を先送りにされた感じとなった。
残るは滝の結果を待つしかない。そう思った乙晴は放課後になって人がいなくなった教室で彼を待つ。彼は今、学校内の女性に訪ね回っている。何故女性に聞くのか、それは女性の方が男性より様々な情報を知っているからだ。その情報から一緒にやってくれる人が見つかるかもしれないと考えたわけだ。
しばらく待つと、廊下から走ってくる音が聞こえてきた。その音が段々此方に向かって大きくなってきていき、目的地に着いたのか、音が止み、それから扉の開く音が教室に響き渡った。
「わりぃ!遅れた!」
「別にいい。....それより結果は!」
「.....ああ、そうだったな!」
無意識につばを飲み込んでしまう。それほど、緊張していたし、これ次第ではこの先が絶望的になるだろう。逆に希望を繋ぎ止めるかもしれない。まさに瀬戸際だ。拳を握り締め、滝の言葉を待つ。
「居たぞ!.....しかも三人!!」
「三人も!!.....いや、待てよ。同級生には聞き回ったがそんな奴はいなかった。てことは.....」
「ああ、そうだ。その三人は全員上級生だ」
「そうか。で、その三人の学年は?」
いくらやってくれる可能性があるとしても、学年が三年だったのなら、先がとても短い。つまり、数ヶ月で引退してしまうのだ。そのため、入ってくれる可能性はかなり低くなる。
「一人が三年、もう二人が二年だ」
「わかった。しかしその情報、良く手に入ったな」
「良く手に入ったな、じゃねえよ!たいへんだったんだぞ!60人くらいに聞き回って、ようやく手に入ったんだからな。おまけに情報の代わりにデートする羽目になったし.....」
疲れ果てたような顔をして愚痴を口にする滝に、申し訳ない気持ちを抱く乙晴。これは元々乙晴の我が儘で、彼がそんなに頑張る理由は無いのだ。だから、途中で彼が止めても文句を言うつもりはさらさらない。しかし、こんなになってまで頑張ってくれる彼の姿を見ると、一層途中で止められないな、と乙晴は思う。
「わるいな」
「なあに構わないさ。条件を守ってくれるならな」
こんなところが滝の魅力であり、女性に人気がある理由ではないだろうかと思ってしまう乙晴だった。