協力
「作るって言うが、そう簡単なことじゃないだろ」
滝の言葉に、黙って頷く乙晴。それもそうだろう。男子生徒は少ない上に、さらにその中でも、バスケをやってくれる人が集まるかと言われれば難しいだろう。それだけが問題でひないのだが。
「まず、一緒にバスケをしてくれるやつを探さないといけないんだが.....」
「探すんなら、手伝ってもいいぞ」
「っ!本当か!」
「ああ、多少の伝手もあるしな」
なんで手伝ってくるのかは定かではないが、確かに滝の協力はありがたいことだ。滝の周りにはたくさんの女性がいる。それに人懐っこい性格もあるのか、男性の知り合いも多い。つまり彼が一言声かければ、それだけたくさんの情報を手に入れることができるということだ。
「ただし、条件がある」
「.....条件?」
条件か.....。乙晴は滝と出会って数日しか経たないが、それでもその数日、学校でいるときが一番多かったのは彼だ。彼とは、お互いにたわいもない会話をしたり、時には相談し合ったりと、とても会って数日とは思えない程、親睦を深めていると乙晴は思っている。
「条件て何だ?」
意を決して尋ねる乙晴。滝は日頃おちゃらけているが、やるときはやる男である。しかし今までそんなこと言って来たこと無いので、思わず身構えてしまう。
「そんなに身構えんなって!そんな無茶ぶりじゃねえと俺は思うが、そう思うのかはおまえ次第だ、乙晴」
そう一言据えた後、乙晴の顔から視線を反らさず、じっと見つめての条件を話し出した。
「条件ていうのはだな。一度決めたらやり通せってことだ」
「は?」
「だ・か・ら!バスケ部作ると決めたら絶対諦めんなよ!」
滝からの提示内容に意味がわからず、思わず聞き返してしまったが、二度目の返答で、どういうことかを理解して思わず笑ってしまった。つまりは、応援していると言いたいわけだ。
「お、乙晴!笑うなよ!」
「わ、わるい。つ、つい可笑しくてな」
笑いを堪えようとするが、未だに笑いが止まらずに笑い続ける乙晴に、段々不機嫌になっていく滝。滝は女の前ではクサいことを良く口にはするが、男の前ではあまり言った経験がない。そのためか、動揺しているのは目に見えてはっきりとしている。その動揺する姿が笑いが止まらない理由の一つである。
「わかった。やるよ、俺。だから、手伝ってくないか?」
「ああ、まかせろ!」
この日、乙晴と滝二人による協力体制が出来上がったのであった。