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壱栄高校

天気は大雨。吹き荒れる雨に周囲の人々が気落ちしている中、それに反して熱狂的になっている場所があった。


独特なスキール音。そしてボールをつく音。観客の中心でコートを行き交う10人の姿が互いに負けじと戦っている。


第3Q終了間際時点で点板には96対30。80点取っているのは“海皇かいおう中学”で“北栄ほくえい中学”は30点と負けている。


北栄中学のメンバーは、動きが鈍く、パスはことごとく奪われ、数少ないチャンスを生むも殆どブロックされる。逆に海皇中学のメンバーは息を乱さず、強豪校の実力を見せつけるかように、奪っては取り、奪っては取りを繰り返す。そして、点数110対30となった時点で第3Q終了のホイッスルが鳴り響いた。


作戦会議中、90点差をつけられ、選手はもうダメだ、と絶望的な表情になっており、勝つ気力を全く感じられない。しかし監督だけは、その視線を一人の選手に意味ありげに向けていた。その選手は第1、2Qには出ていたみたいたが、第3Qには出ていなかったようだ。そして監督の視線に気づくと、うなずく素振りをみせ、イスから立ち上がりコートに向かう。


その背中は、まるで強者を漂わせるオーラを纏っているかのようにみえた......。





..............




神奈川県の壱栄高校。その学校は元々、壱栄女学園高校という名前の学校であったが、五年前から人口の減少に伴い、男子の入学募集を行い始めたことにより、学校名が変わった。しかし、未だに女子校というイメージが大きいのか、男と女の比率は全体で2:8と女子生徒が多い。


そんな学校であるが、今その場所にひとりの男が足を踏み入れていた。

その名は春風はるかぜ 乙晴おとはる。身長180センチくらいで、ぼさぼさの長い髪、そしてその長髪の中からみせる鋭い瞳を持つ、ひょろっこい体格の男である。


その男が、なぜこの学校に入っていくのか。それは、彼の着ている制服が表している。その制服はブレザータイプで、黒に近い紺色の上下に、ちょっとした赤色の刺繍、そして青色のネクタイを着用している。


この学校では、男子ならネクタイ、女子ならスカーフの色で学年を判断する。色は学年別に赤・青・緑で別れていて、卒業した三年生の色が新一年生の色になる。今年、一年生が青、二年生が緑、三年生が赤になっているのだが、来年の一年生は今の三年生の赤を引き継ぐこととなる。


乙晴のネクタイを見てみると、青色をしており、この学校の新一年生に在籍していることがわかる。


登校して来た彼は、教室に入って自分の席がある窓際の一番後ろの場所に腰を下ろす。教室中がよく見えるこの場所では、いかに女子生徒が多く、男子生徒が少ないかよくわかる。因みに、一クラスに50人はいるのだが、乙晴のクラスは他のクラスより男子生徒が少なく、乙晴を合わせて8人のみだ。


周囲が幾つかの団体を作り、話したりしている中、窓の外をずっと眺めている乙晴に対して声をかける男がいた。


「乙晴おはよう」

「ん? ああ、滝か」


たき 慎也しんや175センチで、髪は乙晴ほどではないが長髪でところどころウェーブがかかっている。慎也本人は身長が低いと思っており、そのことを気にしているらしい。


「何か用か?」

「いや、部活決めたか聞きたくてな」


今新一年生は部活動を決める時期で、特に強制というわけではないが、大半の生徒はどこかしらの部活に入部していたりする。そして、その部活動のほとんどが女子生徒で構成されており、男子生徒はどこかに所属していることが少ない。


「まだ決めてない。滝は?」

「俺か?俺もまだ決めてないな。....いやな、たくさん誘われすぎてどこに入るか迷ってしまってな」

「あれだけ誘われていると、時間を延ばす度に断るときが大変になるんじゃないか?」

「あ、あはは.....]


乙春の言葉に苦笑する滝。滝の場合、部活動の入部届が配られたその日から多くの女子生徒が彼のもとに集まり、勧誘しているのだ。乙春は自分の前の席が滝であるため、周りに集まる女性に巻き込まれたりする。そのため、早く決めてほしいと思っている。

「バスケ部があればな.....」

「バスケ部は女バスしかないだろ。いっそ女バスに入るか?」

「それも考えた。だけど、それは最後の方法にしようと思っている。だが、他にも方法はあることはあるんだがな」

「それって、もしかして.....」

「ああ...新しく部活を作る方法だ!」






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