まったく……カンのイイ女は苦手だ。
右の翼は純白、左の翼は漆黒。
彼女を表すなら、きっとそんな風だろう。
「北川が主将倒したぞ!」
「生徒会長パネェ」
「一面記事差替えろ!」
てんやわんやな新聞部の様子を中庭からチラ見して、渡り廊下を通り、裏庭に抜ける。
「美味しくて活きがイイの、頂戴」
某有名菓子店の品を掌に載せて差し出される。物陰にいても、何度もやり取りして、新聞部に張り付けば相手が判る。
「今は高価なのしか無い」
すかさず別の味が二つ追加された。
無地の紙袋に入れられた菓子と、ノートの切れ端を交換する。
更に見たコト無い菓子が目の前に突き出された。
「コレは試作品だからサービス」
目の端でスカートと長い髪が翻る。
善政を敷く北川生徒会長は不敗の女王。
裏でこうして情報を買っていても、実際バッサリ斬るのは本当に黒い相手だけ。
新作ケーキを見、俺は溜息を吐く。
「じゃ、こっちもサービスするか」
後ろ暗い奴やバッサリやられて怨みを募らせた相手が徒党を組んでるらしい。
情報流したのが俺だと知られるのも面倒だし、キッチリ始末するか。
情報操作はお手のものだしな。
――めっきり平和になった或る日、久し振りに目の前にケーキが差し出された。
「…手持ちが無い」
「サービスよ」