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愚者と悪魔の物語  作者: らいった
第1章前編  誰にも負けないダンジョンを
8/50

第2話  ダンジョンヘ…… 修正済

 鬱蒼と繁る木々が立ち並ぶ森。その一角で俺は肩に黒猫を乗せ、足音を消しながらゆっくりとある場所へ忍び寄る。


 視線の先、離れた木の一つに俺の腰までの高さほどの大きさの巨大な蛾が止まっていた。


 パキッと足元の枝が折れ、蛾が俺達の存在に気づき、木を飛び立とうとする。それに対し俺は優に30メートルは離れたところから蛾に向けて両手を延ばす。

 すると、まるで関節など無いかのように俺の腕は伸び、伸びた先にある手のひらは巨大な蛾を丸々包み込めるくらい巨大になった。


「ふんっ!!」


 そのまま気合と共に硬質化した両手で蛾を包むように閉じる。


 ブチッという嫌な音。そうやって閉じた先には圧縮されて原型を留めていない蛾がいた。

 内蔵がはみ出しかけたその状態は見ていて気持ちのいい光景では無く、そのまま〈捕食吸収〉を用いて分解し吸収する。


 そしてもう慣れはじめているものの変わらずやってくる満足感に、俺は身を委ねた。


「さすがに3日もさまようと大分慣れてきましたねぇ~」


 満足感が身を焦がし、なんとも言えぬ快感を感じていると、少しイヤミを含めた言い方で黒猫が呟く。


「恨むなら、ここのダンジョンを紹介した自称お前の親友と俺をスライムにした己の軽薄さを恨むんだな」


 ーー今、俺、ファウストと悪魔メフィストフェレスは魔王アスモデウスに預けられたダンジョンのあるロックケーブ近郊の森に来ている。


 ……そう、来てはいるのだが俺は自分のダンジョンに未だ入ることが出来ず、はやくも3日が立とうとしていた。


 別にダンジョンが見つからなかったわけではない。少しわかりずらくはあったが、2日目には見つけていた。

 だがそこから先に待ち構えていたあることが、今の俺には越えることの出来ない壁として立ち塞がっていたのだ。


「ところで、主様。今のミドルモスで目標に達したようですよ??」


「そうなのか? じゃあ、確認してみるか。〈簡易ステータスオープン〉」


 黒猫の言葉に頷き、俺はこの5日で学んだステータスを簡略化して表す言葉を使用する。



○●○●○●○●


N;ファウスト

R;スライム

C;一般悪魔(見習い)


Lv 60


侵食率12%


new〈特性〉なし


newスキル 体液噴出 固形化


new称号 なし


○●○●○●○●



 簡易的に表されるステータスが現れ、そこに書かれていた新たに手に入れたスキルが求めていたものとわかり、思わずメフィストにガッツポーズをする。


「やっと行くことが出来ますねぇ。いやいや主様がスライムなんかでいらっしゃるから随分と遠回りをさせていただきましたよぉ」


「誰のせいだと思っているんだ??」


「私ごときの悪魔の甘言に引っかかった主様のせいでは?」


 くだらない言葉の応酬。それをしていると前方に木が一つもなく、周りを崖が囲み、孤立するようにできている草原が見えてくる。

 そのさらに前方の方向の再び木々に囲まれているところに巧妙に隠されている洞窟のようなものがあるのが見えた。


「……緊張するな」


 俺は呟き、ダンジョンへと向かう一歩を向ける。


 ーー草原の手前に広がる幅20メートルほどの川へと。




 ……ここで突然だがスライムという種族の説明をしよう。


 スライムは核を中心として混じりっけのない純水によって構成される体液をもつ不定形の魔物である。


 そのため見た目と違って電撃耐性は極めて高いのだが、純水であるため一つ問題が発生する。


 ……そう、身体が水に溶けてしまうのだ。


 例えば、俺が何の対策もせず川に足を突っ込むとする。すると、足の先から溶けていき最後にはメフィストと融合して黒く輝く核を残して身体が消えてしまい再生に多大な時間を有する。


 水に溶けてもある程度集まっているならば構成出来るのだが、如何せんここは川でありみるみる流れていってしまいすぐにコントロールを失ってしまった。


 だから俺は3日間、無事に渡れる所を探しながらレベルを上げることにいそしんだ。


 何故ならメフィストがスライムはマテリアのレベルを上げることで固形化というスキルを手に入れるということを覚えていたからだ。


 奴が言うには固形化は硬化と違い硬質化はしないものの、身体を液体から固体へと変化させ不変を保つというスキルで、奴の幼少期は隷属化したスライムをボールにして蹴り飛ばし、スライムを殺したものが負けとなるスラッカーというものが流行ったらしい。


 ……それを聞いて同胞達に同情をしたのは秘密である。



 まぁ、そういうことがあって今俺はスキルを発動させ川に足を付けている。あぁ、ちゃんと足の感覚のあることのいかに素晴らしいことか。達成感を感じながら俺は川を渡りきり一息つく。


「お疲れ様ですぅ主様。でも主様は向こう岸の木を掴んでロケットォ!!とかで飛び越えれば良かったのでは??」


 水が嫌なのか俺の頭にしがみついて離れずにいた黒猫が俺に問う。


「お前が寝てる時に試したが、自重に耐えきれず腕が途中でとれた」


 そんなんじゃ悪魔王になれませんよぅ~とかなんとか言っているメフィストを無視して俺は洞窟へ向かう。


 そして、洞窟の前に立ち、ぼそりとつぶやく。


「……ここなのか??」


 それに応じて黒猫も、


「ここみたいですねぇ……」


 俺たちの前にあるのはしばらく人の入った痕跡のない洞窟だった。周りの草木は荒れ放題になっている。


 と、その時その光景にあっけにとられている俺達に不意に機械的な声が聞こえてきた。



ーーーダンジョン入り口にてマスターを認識ーーー


ーーーシステム、オールグリーン。ダンジョン機能活性化ーーー


 言葉と共に洞窟が薄く青く光る。


ーーーようこそマスター、私は貴方を歓迎しますーーー


「お前は誰だ??」


ーーー私はダンジョンNo.5121のダンジョンコアの仮想人格であります。詳しい話は中で行いたいと思いますのでひとまず奥の部屋まで来ていただけますか?ーーー


 俺は頷き、洞窟の中へ入っていく。


「これは……!?」


 中に入ると洞窟の中とは思えないくらいしっかりとした部屋があった。


ーーー当ダンジョンは魔王アスモデウス様の命により現在、前マスターのダンジョンを初期化せず残しております。それによりこのダンジョンは1階層3フロア、2階層2フロアとダンジョンコアルームによって構成されています。お手数ですがマスター、このまま道なりにダンジョンコアルームまでおこしくださいーーー


 ダンジョンに響く声を聞きながら俺達は真っ直ぐ進み、階段を降りていく。ちゃんとした作りのくせに罠や迷路の構造はなく、俺達は足を止めることなく、巨大な扉の前にたどり着き扉を開いた。


「ーーー!?」


 目の前にあったのは横の壁と床に輝く光のラインが通り、奥の壁には液晶のようなものが飾ってある不思議な部屋だった。そして部屋の中心部には台座のようなものがあり、その上には俺の核のような球が鎮座していた。


「我がダンジョンコアへようこそ、マスター」


 奥の壁の液晶に光が灯り、声が聞こえてくる。


「ここはダンジョンを造る上でもっとも重要な場所。マスターにはここで作業をしていただきます」


 謎の声はしゃべり続ける。


「なお、魔王アスモデウス様よりマスターにメッセージが届いておりますのでこれより再生致します」


 そう告げた後液晶には相変わらず派手な格好をした魔王が映った。


『テス、テス、え~、只今マイクのテスト中……え、何ですの?? もう始まっている?? はやく言いなさいな。……コホン、ファウちゃんメフィちゃんごきげんよう。どうやら無事にダンジョンにつけたようですわね。まぁファウちゃんはスライムですから多少は苦労したでしょうがついたなら何よりですわ。

 さて、ついたならわかりますでしょうがそこが貴方に与えるダンジョンなのですけど、前のマスターが余りに脳筋でダンジョンにほとんど手をつけずに魔物ばっかり創って外の世界に突撃して暴れ回ったあげく、人間に討伐されましたの。だから何のヒネリもないダンジョンでしょう??でもそのダンジョンのコアに宿った仮想人格ちゃんが有能だったので、初期化するのも勿体ないかなって思い貴方達にそのままあげることにしましたわ。

 まぁ最低限の施ししかしないと言った手前、ダンジョンポイント、通称DPをダンジョン改装の分さっ引いてブータちゃんにお渡ししときましたので、そこらへんはご了承くださいませ。

 ……さて伝えたいことは伝え終わったのでそろそろお暇させていただきます。また落ち着いた時にでも引っ越し祝いをもって伺いますわ。……そうそう、あと追伸なんですけど、ダンジョンの上納金代わりにこんどメフィちゃんを私に貸し――』


「主様、私を奴に差し出したら命奪いますからね?」


 いつになく本気で迫ってくる黒猫に気圧されながらも俺は頷き、そして再生が終わったディスプレイに顔を向けた。



以上必要なのか疑問な伏線回でした。まぁすぐに使いきる程度の伏線です。

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